悪食 70点
今年 21本目
監督 アグニェシュカ・スモチンスカ
主演 マルタ・マズレク
ミハリナ・オルシャンスカ
ヤーコブ・ジェルシャル
肉食の人魚。これだけで観る価値は十分でしょう。
新宿シネマカリテはファーストデーだけあって満員です。
鑑賞結果、悲しいまでの人魚の恋。
これは怖い映画です。
画作りやトーンは嫌いじゃないです。ポーランド映画もやるもんですね。
音楽で気持ちを表現していく手法はあまり好きではないのですが。
ここからはネタバレ満載でいきますからご注意を‼️
海辺で歌っているミュージシャン達にに誘われるように姉妹の人魚が現れます。
ミュージシャン達は人魚を連れ帰り、バックコーラスとして仲間にします。
この展開が笑えるほど凄い。
人魚を見つけたらどうするか?
研究機関に報告するか、見世物にするか、売飛ばして大金を得るか。普通はそう考えるかなぁ。でも、彼等はバンドに引き入れてバックコーラスをさせるんです。
しかも人魚の姿もさらして。
え〜(≧∇≦)そんなんありかぁ〜?
またこれが大受けで一躍人気者に。
ポーランド、侮れません。
人魚姉妹の姉シルバー(マルタ・マズレク)は、バンドのベーシスト、ミーテク(ヤーコブ・ジェルシャル)に恋をする。
姉のシルバーが人間に恋したことによって妹のゴールデン(ミハリナ・オルシャンスカ)は、精神的に不安定になる。
そうして肉食である衝動が抑えられずに人を襲ってしまう。
ここで出てくる人魚は肉食設定。しかも人間を食う。
今までの人魚映画にはないホラー要素満載でゾクゾクします。
シルバー(マルタ・マズレク)に愛されたミーテク(ヤーコブ・ジェルシャル)であったが彼は人魚を魚にしか見れず、シルバーの気持ちを受け入れられない。
シルバーはミーテクの愛情を手に入れたくて人間になる手術を受ける。
またこの手術が凄い⁉️
人間の女性の下半身と自分の魚の下半身をぶった切って付け替えるというそれは無理があるだろうという手術。
一体、下半身を切られた少女はどこから連れてこられたのだろう。
当然、死ぬだろう。
怖いシーンである。
なんと手術は成功するが、人魚じゃなくなったシルバー(マルタ・マズレク)は美しい歌声を失ってしまう。
しかしミーテク(ヤーコブ・ジェルシャル)は、シルバーを受け入れ結ばれるが結局はうまくいかなかった。
美しい歌声を失ったシルバーに興味を失ったミーテクは他の女が好きになり結婚してしまう。
人間と愛を誓った人魚は相手に裏切られた場合には相手を食い殺されなければ泡となって死んでしまう運命だった。
シルバー(マルタ・マズレク)は、ミーテク(ヤーコブ・ジェルシャル)を食い殺すことが出来ず泡となって死んでしまった。
それを見ていた妹のゴールデン(ミハリナ・オルシャンスカ)は、ミーテクに飛びかかり食い殺すのだった。
ゴールデンは海へ帰って行った。
エンド。
哀しい人魚の悲恋話である。
その悲恋話を歌声で船乗りを魅了する人魚伝説を現代風にアレンジしたのは面白い。
しかも肉食で人間を食べてしまうなんていうのも、人魚は魔物なんだという設定も面白い。
甘いだけじゃない悲恋物語にしなかったのは、監督の愛情に対する想いの深さからだろうか。
女性監督ならではの描き方で、ゾクゾクする。
この映画の不思議なところは、街の人間が人魚を拒否するでもなく、訝ることもなく受け入れているところ。
この解釈としては、人魚の魔力で人間が幻想の中に封じ込まれているということか。
そう解釈すれば、所々で出てくる幻想的シーンが自ずと納得できる。
まさに人魚は魔物であるという描き方。
リアルに描かれている人魚の尻尾など、不気味にさへ感じるように作っているのもその狙いだろう。
そして肉食で人を食べるのも。
人魚伝説はもともと船乗りを美しい歌声で魅了して海に引きずり込んで殺してしまうという魔物として描かれていた。
ディズニーに代表されるような心優しい魚の尻尾を持つ美人ではないのだ。
ホラー的要素を伴って人魚を描いているのは、面白い。
美しいバラには棘がある。なんてなま優しくない恐怖が奥底にはある。
そんな恐怖と背中合わせに人間に対する愛情の表現。
自分の命を無くしても愛する人を殺せない人魚もまた存在するという見せ方。
この両面からの描き方が人魚を題材にしているが、女の愛情の奥深さを残酷なまでに表現している。
そんなテーマがこの映画にはあります。
男にとっては怖い映画なのかも。
殺されるほど愛されたいと思うのは甘いのでしょうか?