オットのこと

 

 

今のオットはパートナーであり、入籍はしていない。

 

いわゆるバツイチである私は名前を変えるための諸作業がとにかく煩わしかった。仕事の名前もずっと阿久津で通していたし、パスポートも今更変えられない。住んでいる家も自分の名義だったので段取りがさらに複雑だ。この世の中、別姓は不都合だらけで、姓が違うと入院承諾書や付き添いの権限がなかったりする病院もいまだにある。

 

最初に診断されたクリニックはほかの病院で手術を受けねばならなかったので、

 

『ちょっとやってみます』

 

だったことに驚いた。

やっぱりノーマルではないのか。

 

手術をしたクリニックは名前が違う指摘はされたが、『よくあります』とそのまま受け取ってくれた。

 

救急病院で対応されなかった例を友人から聞いていたのでひとつハードル超えたな、と思ったものだ。突然病になって、いろいろ問題起きるなと思っていたが、姓の問題もか、と悲しくなった。

 

 オット自身と私の関係は適度な距離感、で成り立っている。気は遣ってくれていて、洗濯やゴミ捨てなど率先してやってくれている。具合が悪そうな日は寝かせておいてくれるし、気を張っていない休みの日が一番しんどいことも理解している。

 

家でヒマしているとどんどんネガティブになっている様子に見かねてオットは旅に連れ出してくれる。手術前の一番おかしくなっていたときは大好きな京都だった。

 

ちょうど夏の大祓の時期。『茅野輪くぐり』をやってるところをとことんサーチしてくれ、言われるがままにわっかをくぐりまくった。あとは茅野輪をあしらった食べものとか食べたり、厄除け人形を川に流したり、女性の願いをかなえるだるまを買ったり・・・。

 

神仏に頼るのは好きではないのだが、何かやっているほうが楽だった。でも夜は眠れず、お互いに顔を見合わせる。家族も第2の患者だ。心配かけて申し訳ないなと思うが、もしもオットに何かあったら同じように旅をする気がする。

 

 名前が違っても、関係なく、隣にいてくれてお互い怒ったり、不機嫌になったとしても旅ができたり食卓を囲めること、これが何よりも幸せなことなんだと思う。こんな様子を見守り、気にかけてくれている彼の両親にも感謝だ。