退院を翌日に控えた日、一人の患者さんに話を聞いた。

 

釧路から来ていた恵理さん。お母さんが最初に私たちの輪に入り、恵理さんはいつも携帯で通話していて、最初は乗り気ではなかった。後で聞くとずっと子供たちと通話していたのだという。彼女のサブタイプはトリプルネガティブ。検査をした病院で治験として手術前の抗がん剤治療を勧められたが、一刻も早く取り去りたいと転院してきた。

 

30代のシングルマザーで2人の子供のお母さん。上の子は発達障害を持っている。自分のことも心配だが、子供も常に心配だと。とにかく生きたい、そしてなかなか釧路で見つからない仲間を見つけて患者会を作りたいと話してくれた。たった数日だけれどもいろんな思いを聞き、何か彼女のためにできることはないだろうか、と思った。

 

 退院した日は暑い日だった。朝の回診で先生や看護師さんからおめでとう、と言われた。昼ごはんまでは出そうだったが、絶対に退院したらソバを食べたいと熱望。迎えに来てくれたオットと一緒にお気に入りのそば店へ。人生二回目の"生きてるわ"と実感した瞬間だった。

 

 しかし、自分の体は何か違う。車に乗るときのシートベルトが胸に当たって痛いのだ。しかも両側だし、どうやっても避けようがない。でクッションをびっちり当てて乗ることにした。乳腺を失い、いきなり骨(ちょっと脂肪)で今でも前から人が来たり、人混みとかラッシュアワーは嫌だ。

 

 家に帰ってまず困ったのは(今もだが)下着。クッション性を保つか、快適性を保つか、楽なことを選ぶか。まさかこんな細かいことに悩むとは思わなかった。ワイヤーがついたこれまでの下着は全部、ゴミ袋へ。薄いパッドを重ねたほうが楽か、手作りやシリコンのパッドを入れたほうが楽か。毎日のように実験。

 

北海道キャンサーネットさんのしずくパッドが好みだった。私のキズは脇の下から縦にあるのだが、そうすると普通のカップだとその外周部分が傷に触り痛く、ワイヤーなんて傷口に当たりまくりでつけられない。しずくパッドはしずく型。傷をサポートできるヘリがついているので安心。ただ、両側なので激しく動くと中身がズレるので、どうしてものときだけにしている。

 

一度ずれてウエストの部分にパッドが落ちてきて焦ったから。仕事に復帰してからの普段は、裏に縫い目のない下着にポケットを作り、大きさの違うパッドを2枚重ねて仕込んでいる。寝る時もないと傷に触れるので、下着はつけたままにしている。

 

 術後、手術側で重いものは持たないでね、とアドバイスを受ける。リンパ浮腫というちょっとなおりづらい症状になることもあるから。両側のわたしはじゃあ、どうすればいいんだ!ということになるのだが、両方、あまり持たず、荷物はできるだけ軽くし、ショルダーがけ、にしている。リュックのほうがよさそうなものだが、横の傷に触れるので無理だった。

 

リンパ郭清をしていないのでそんなにリスクは高くないのだが、ちょっと何気なしに重いものを持とうとすると胸の筋肉あたりに違和感が。ちょっと困っているのは左側の指先から腕までのしびれがとれないこと。1か月、2か月、3か月、6か月、、とどんどん身体の調子はよい方に変わっていくが、これだけがあまりよくならない。

 

スマホでSNSサーチしてるとしびれる。

 

あ、しなきゃいいのか・・・。