私は稀有なことに手術の一部始終、そしてオットと主治医の会話も映像がある。

 

見返した映像素材を見ると、より小さい腫瘍だった右から摘出が始まり、縫って閉じる。左はより相当の時間をかけていた。乳腺が電気メスで皮膚からどんどん『はがされて』いた。乳腺が取り除かれたあとは、もともとあった脂肪などがかなりの圧で寄せられていたり、皮膚の表面には後で見たら『あおたん』ができていた。手術ってそういうもんか。

 

 この夜は割と地獄だった。とにかく、麻酔が切れてくると痛い。まだ足の点滴は続いているし、尿管も入ったままなのではっきりいって動けない。『痛いよー』とか『酔っぱらってるよ』ばかりを叫んでいる。

 

 夫が帰ったのは午後9時ごろだったようで、そこから朝7時までは悪夢のような戦い。とにかく、胸が岩盤のように(ような気がする)痛い。麻酔が気持ち悪い。頭がぐるぐるする、めまいみたい。尿管が違和感。寝返りうてないから腰が痛い。

 

こまめにナースのみなさんが見守りに来てくださり、吐いてる私を励まし、そのたびに対処してくれた。「大丈夫、朝が来たら、ケロっと終わるから。」

 

キレて負けそうだったときの言葉。ありがたかった。

 

 夏の暑い朝。日の光で起こされた。

 

起床時刻の朝7時になった瞬間に、管も点滴もパパっとさくっとどんどん抜けていく。で、「朝ごはんです!」の声。

 

  私:え?食べられるの?

ナース:おかゆにはしておいたけど、食べちゃって!食べられるから。

    麻酔も尿からほぼちゃんと抜けてるから大丈夫よお!順調!

  私:でも起きれない・・・。

ナース:片手大丈夫ならつかまりながら起きられるけど両方だからか・・・。

    腹筋でがんばって!

 

 電動ベッドのボタンをよっこらせ、と押しながら少しずつ少しずつ。

 とにかく腕などには頼らず、腹筋で起きるしかない、ということ。

 

 

 正気を取り戻して自分の変化に目をやる。ドレーンと呼ばれる手術後に出る、リンパ液や血液をためる管が2本ずつ両胸についていた。重くないようにベッドの手すりに括りつけられているので無意識に起きるとそれにひっぱられてつっぱる。

 

ベッドから出るときには一時的にその固定を左右一個ずつ外して、ドレーンをたすき掛けにして出歩かねばならない。その動作も超おっくう。面倒。