乃木坂 × BR

乃木坂 × BR

そっくりさんたちの妄想小説です。

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目覚めは最悪だった。
理由は簡単。やかましい放送で叩き起こされたからだ。

「うるっさいなぁ……」

齋藤飛鳥は気だるげに呟きながら体を起こす。
傍らに置いていた地図を取り出して、読み上げられる禁止エリアをメモしていく。
その時ふと手が止まった。

秋元、相楽、佐々木、新内、四人もの変わり果てた姿を見つけた民家が、禁止エリアに入っていた。

日が暮れてから偶然立ち寄った民家。
あまりの惨状に思わず吐き気を催して、そして紛れもない現実を突き付けられた気分だった。
あそこで何が起こったのかは分からない。ただ誰かが誰かを殺した、それが事実だ。

「っ!だれ?」

考え事に耽ってしまい周囲の警戒を怠っていた。
がさっという物音が聞こえて、今いる粗末な小屋の割れた窓からそっと外を覗いた。
誰もいない。もっとよく見ようと窓から身を乗り出した時、視界の端で何かが煌めいた。

鉈の刃。

認識した瞬間、反射的に首を引っ込めた。
振り下ろされた鋭利な刃先が目の前を通過する。前髪が少し切れた気がした。
身体を引いた勢いで床に尻餅をついた。
突然の出来事に茫然と窓を見上げていると、ぬっと顔が出てきて思わず小さな悲鳴をあげた。

「ひっ、……ろってぃ?」
「飛鳥、ごめん」

川村真洋は謝罪の言葉を紡ぎながら、窓枠に手をかける。
乗り越えようとしてきてる、それが意味することが分かって飛鳥は転がっていたバックパックに手を伸ばす。
窓から小屋に入ってきた川村の着地音が聞こえるのと、求めていたものを手に掴んだのはほぼ同時だった。

「一撃で楽にしたるから」
「……この!」

振り下ろされる鉈に合わせてバックパックから取り出したものを掲げる。
カーンという小気味良い音が辺りに響き渡った。
川村は突如現れた黒い丸い物体に一瞬目を丸くする。だがすぐにそれの正体に気付いた。

「フライパン……」
「そ、私の武器。いいでしょ?」
「なんやそれ……」

川村が面食らった一瞬の隙を突いて飛鳥は脱兎のごとく駈け出した。
追いかけてくる川村の足音を聞きながらフライパンの柄を握り締める。

(クソ運営め……!)

こんなハズレ武器をあてがわれて、やり場のない怒りを内心で主催者側にぶつける。
安っぽいフライパンは鉈の一撃を受けて既にひん曲がっており、あと二、三回受け切れるかどうかだろう。
足音がだんだん近づいてきている気がする。足の速さも体力も自分の方が劣っている。

「一か八か……」

このままだといずれ追いつかれる。
飛鳥は意を決してフライパンの柄を握り締めた。
そして足を止めて急転換する。

「え?」
「おりゃああぁぁ!」

突然反転してきた飛鳥に面食らって、川村は一瞬反応が遅れる。
鉈が振り下ろされるのよりも、飛鳥が振るったフライパンが顔面に直撃するのが先だった。
ガンッという鈍い音がして、痛みで声にならない悲鳴をあげた川村が座り込む。

手加減する余裕なんて全く無く、全力で殴りつけてしまった。
鼻か、歯でも、折れちゃったかもしれない。

「ごめん!ろってぃ!」

謝りながらも飛鳥はその場を離れるために駈け出そうとする。
川村に背を向けて数歩進めた瞬間、背後から聞こえてきた銃声に足が止まった。

「……ろってぃ?」

飛鳥が振り返ると、座っていた川村がゆっくりと後ろに倒れていくところだった。
仰向けに倒れたその頭からは止め処なく血が溢れていく。
倒れた先にいる人物の顔を見て、飛鳥は目を見開いた。

「日奈子……!」
「飛鳥……、ふふっ、ばいばい!」

拳銃を構える北野の笑顔が深まった瞬間、銃声が響いて左肩に激痛が走った。
撃たれた。そう自覚して飛鳥は痛む肩に手を当てる、じっとりと血で濡れて、急に力が抜けて膝をついた。

「私の勝ちだね!」
「勝ち……?」
「そう、だってそういうルールでしょ?」
「……はっ、日奈子はバカだね、ほんとに」

北野が爛々と目を輝かせるのに対して、飛鳥は薄ら笑いを浮かべながら吐き捨てた。
すると北野の笑顔は曇り、その瞳には怒りの色が宿る。

「どういう意味?」
「そのまんまの意味だよ」
「私バカじゃない!だって――」
「ああもううるさいな。最後くらい静かにしてよ」

相手にされない怒りに、北野が引き金に掛ける指に力が籠った。
嘲笑を浮かべたまま飛鳥がその様子を見上げていると、視界の端から何かが飛んできて北野の側頭部に直撃する。
ころころと転がるのは野球ボールで、驚いた北野はボールが飛んできた方向に向けて発砲した。
だが今度は逆方向から銃声が聞こえてきて、今度はそちらに銃口を向ける。

「囲まれてる……?」
「次は当てるから、逃げるなら今だよ!」
「……くそっ!」

北野は心底悔しそうに歯を食いしばりながら身を翻して駈け出した。
助けられた?誰に?北野に警告した人物の声はよく聞いたことがある。
すると三人の人物が樹の陰から飛び出してきた。

「ちーちゃん、ナイスピッチング!」
「愛未、いいから早く飛鳥を」
「飛鳥?飛鳥!」

駆け寄ってくる能條、ちはる、高山の姿を見て、飛鳥の気も一気に緩む。

「またうるさそうな三人、だな……」

そう薄く笑いながら呟いて、飛鳥は意識を失った。