子供の頃、家に帰ってテレビをつけると、ほぼ毎日同じ光景が広がっていた。

金屏風の前で芸能人が鼻水を垂らしながら号泣し、フラッシュが焚かれ、リポーターがマイクを突きつける。 


  「恐縮です……」
あの独特の空気。

さらに午後2時台のワイドショーに行くと、今度はインチキ臭全開の占い師や霊能者が登場。「あなたの不幸は悪霊のせいです」「ラッキーカラーはピンクです」と真顔で言い放つ。
当時学生だった私は、心底呆れながら見ていた。「これ、本当にテレビ局がやってるのか?」と。 



【スタジオ見学で見た「本当の姿」】



   ある時、テレビ局のスタジオを見学する機会があった。
そこで見たものは、想像以上に衝撃的だった。

VTRが流れている間、司会者はスタッフと気軽に雑談をしていた。


 「VTRで子供たちの元気な歌声をお聞きください……」


と優しいナレーションを入れた直後、VTRが始まると同時に、 


 「くだらねえな、何なんだよこれは……」 


 と本音をポロリ。


 VTRが終わり、カメラが自分に切り替わる直前になると、急に笑顔になって台本通りの「素晴らしい歌声でしたね~!」に切り替わる。
そのスイッチの速さに、ただただ呆れた。 


 「この人、サイコパスか?」


と思ったのを今でも覚えている。



【オンとオフの差が激しい人たち】



  テレビ局の人たちは、マイクがオンになると完璧に「いい人」を演じる。
特に局アナや情報番組の司会者に多かった「優しい笑顔で世間をまとめようとする人」を見ていると、偽善的に感じて腹が立った。

一方で、オンとオフの差がない人は逆に気持ち良かった。


  立川談志師匠や横山やすしさんのような、どこにいても本音全開の人は分かりやすい。
毒蝮三太夫さんのラジオも、オンエアー中は毒舌全開だが、マイクオフになるとさらに歯止めが外れるらしい(笑)。



 【今だから言える「やらせ」の実態】




  今だからこそ言えるが、あの占いコーナーや感動VTRの多くは「やらせ臭」が強かった。
辛坊治郎さんもラジオで「2時のワイドショー時代は制作費を抑えるために、適当な企画を量産していた」と暴露していた。



  誰も本気で信じていないのに、視聴者の中には本気で「悪霊がついている」と悩み始める人が出て、近所の人から「病院行きなさい」と言われるケースまであった。

私も多少影響を受けた一人だ(笑)。 



  でも一番始末に負えないのは、本気で信じ込んでしまった人たちだと思う。 80年代テレビを振り返って

今思うと、80年代のワイドショーは『見世物小屋』そのものだった。
芸能スキャンダル、号泣会見、インチキ占い、突撃リポーターというハイエナetc…。心霊写真……。
政治や経済より、よっぽど「くだらないもの」が優先され、家族みんなで食卓で見ていた。

でも、それが当時のテレビだった。
今はネット時代で情報が溢れているが、あの頃の強烈な違和感と熱気は、なかなか忘れられない。