新しい世界 ① | KICK OUT!

新しい世界 ①

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 ある年の夏、三角公園バンドの村上さんから電話があった。

「従来の三角公園バンドでは
出来ない音楽をやりたいから
参加しませんか」と言うお誘い。

従来の三角公園バンドの音楽が固まっていたとは思わなかったが
何やら新しい可能性を探りたいのだろう。

 ユニット名は“関西ニューアート”
その道に詳しい方ならお分かりだが
これは大阪のストリップ劇場と同じ名称。
「関西から新しい芸術を」の意だろうか。

 メンバーは三角公園バンドの村上さんと狩野。
そして正しいチューニングをした事がない丹羽さん。

顔ぶれだけ見れば怪しさに溢れている。
そして僕は怪しいユニットが大好きなのである。

 その年の夏祭りには用事で行けなかったが
次の正月の再結成には参加した。

ところが本番直前に
狩野が体調不良でダウン。
ボーカルを欠いた
メンバー3人がステージに上がる。

僕が路上ライブで使用してる唄本をめくり
曲目と誰がボーカル担当かをステージ上で決める。
要するにその場しのぎ。

キーと声域があってるかどうかは
歌い出すまでわからない。

客席にいたしんたろうが
「俺も仲間に入れろ」とステージに割り込むと
これ幸いと即興でブルースを唄わせ時間を繋ぐ。

この行き当たりばったりの緊張感と
時々訪れる達成感が
僕と丹羽さんには心地よかった。

 その日のうちに解散を宣言した関西ニューアートだが
その後、“続・関西ニューアート”
“帰ってきた関西ニューアート”など
結成即解散を繰り返す僕と丹羽さんの
いびつな遊びは釜ヶ崎のイベントのたびに続いてた。

 「関西ニューアートは私の発案
当初の主旨とかけ離れた事をしてる二人に名乗って欲しくない」

ある日、狩野の苦情を人づてに聞いた僕らは
“関西ニューアート”のユニット名を返上する事にした。

‐続く‐