どつぼ男が寄ってきた ⑤ | KICK OUT!

どつぼ男が寄ってきた ⑤

 毛嫌いするあまりずっと距離を置いてたが
いつまでも避けてばかりでは、まつりが守れない。

殴り合いも辞さない気分にまで
僕はたかぶっていた。

 到着すると折りよく自転車で外出しようとするしんたろうがいた。

僕の顔を見るなり気まずそうに「おう、仙石」
僕は挨拶も抜きで「あんたのライブのCD聴いたぞ」

「おおきに。ほんじゃあ」
と出発するのを捕まえて
「あんなまともなライブやれるのに
何でウチのまつりだけ無茶苦茶にする。
あんたのためにいくつバンドが潰れたと思ってる」と詰めると

「あれは俺も反省しとるし色々考えとるんや」
更に「今から認定(日雇い労働者の失業保険金受給)いかなあかんねん」

僕は自転車の荷台をつかみ「まだ終わってない。答えてから行け」
と粘ったが
「今度にしてえなあ、この時間やないと金もらわれへんねん」

夏祭りに続いての空振りである。
完全にはぐらかされた。
収入にかかわると言われて
思わず力が緩んだ僕の手を振りほどき
逃げるようにあいりんセンターに向かうしんたろう。

僕は丹羽さんの部屋に戻って
またしばらくアルコールに浸かってた。

‐続く‐