なぁちゃんがいなくなって3年が経った。

あの日の話では1年前には会えるはずだった。
 

 
「え?、」
 

な「手術のためにアメリカの病院に行くことになりました。」
 

「そんなに酷いの?」
 

な「はい、」
 
 
 
今でも覚えている。
 
あの会社のカフェでなぁちゃんが海外に行って手術をすると知った時の気持ち。
 
怖い。
 
怖すぎた。
 
だって、もし失敗したら、、、

この世から消えちゃうんだ。
 
二度と会えないんだ。 
 
そんなの耐えられない。
 
 
 
な「それで、お願いがあるんです。」
 
 
「、、」
 
 
な「心愛のことお願いしてもいいですか?」

 
「心愛ちゃんを?」

 
な「本当は、一緒がいいです。
 
でも薬でどうなるか分からないし、
 
健康じゃない私を見せるわけにはいかなくて、、

もちろん、ゆうちゃんの負担になるのは分かってます。
 
だから、少し考えて見てくれませんか?」
 
 

そんなの考えなくても、答えは出てた。
 

 
「いいよ。」
 
 
な「ほんとに、、?」
 
 
「いいよ、、預かる。
 
心愛ちゃんのこと預かるよ。」
 

な「お金は、ちゃんと有るので、」
 
 
「そんなの!いらない!」
 
 
な「、、ごめん、」

 
「ちゃんと、、ちゃんと、生きて帰ってきて、」
 

 
なぁちゃんがいなくなる時に私、ずん、心愛に残した言葉は
 
 
 
な「ずんちゃん、心愛をよろしくね?」
 
 
涼「うん!」

 
な「心愛、ちゃんといい子にするんだよ?」
 
 
心愛「やくそく?」
 
 
な「うん。約束。」
 
 
心愛「わかった。」
 

な「ゆうちゃん、心愛をよろしくお願いします。」
 
 
「うん、任せて!」
 
 
な「あと、、大好きです。」
 
 
「ありがとう。」
 
 
な「遅くても2年後には必ず戻って来れます。
 
だから、待っててください。」
 
 
「うん、頑張ってね。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2年後には会えなくて、今3年後。
 
なぁちゃんは現れなかった。
 
毎日スマホを見て、連絡が来てないか確認する。
 
ずんも心愛も年中になって背も伸びた。

双子みたいに同じ服を着て幼稚園に行っている。
 
なぁちゃんに心愛のことを頼まれたからにはしっかり育ててあげたい。
 
なぁちゃんのように愛情を注いで、沢山幸せな気持ちにしてあげたい。
 
心愛だけじゃなくて、ずんも。
 
なぁちゃんがいつでも戻ってこれるように、待ってる。
 
なぁちゃん、ゆう、寂しいよ?
 
子供達の前で泣くことは出来ない、
 
でも気を抜いたら溢れだしちゃいそう。

信じたくないけど、もしこのまま会えなかったら?

そう思うと胸がギューッと締め付けられて苦しい。

なぁちゃん、会いたいよ。
 
 
 
 






 
それから1年がたって年長になった2人。

2人とも小学から大学まで行ける学校を受験する。
 
あまりの忙しさになぁちゃんのことを考えてる暇なんてなかった。

朝の流れは、幼稚園に送って行ってそのままレッスン場に行く。

午前中に振り入れがある子達に教えて、午後からは違う子に教える。

夕方になって迎えに行ったら2人とも塾へ。

塾と言ってももぎおんの家。

おんちゃんに頼んで、2人の先生をやってもらってる。
 
2時間ぐらいしたら2人を連れて家に帰る。
 
それからご飯を用意して食べて、各自自由時間をすごして就寝。
 
毎日毎日この繰り返し。
 
受験することの大変さをとても感じた。
 
なぁちゃんがいない今、2人のメンタル、健康を乱すわけにはいかない。
 
月に1回は必ず何もしない日を作って、ストレスがたまらないようにしている。
 
2人のことだけを考えて仕事をして、日々多忙な生活を送っていた。
 
私ももう若くはなくて、体力も落ちた。

アドレナリンで生活しているような状態が3ヶ月は続いている。

もぎおんもサポートしてくれているが疲労が消えることはなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2人の受験が明日に迫った今日。
 
緊張しているのがこっちにも伝わってくる。
 
お守りを渡して、ギューッと抱きしめて就寝。

とっくに限界を超えてる私の体。
 
次の日会場まで送り届けた私はもぎに帰りの迎えを頼んで
 
そのままベットに向かって倒れるように沈んだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ん、、」
 
 

目を開けたら、体が熱かった。
 
両手に視線を向けるとずんと心愛が手を握って寝ている。
 
2人を起こさないようにリビングへ行くと
 

 
も「ゆうちゃん、大丈夫?」
 
 
お「体どう?」
 
 
もぎおんが心配して家にいてくれていた。
 

 
「ごめんね、迎えに行ってもらって、、」
 
 
も「それはぜんぜん!!」
 
 
お「何か食べれそう?」
 
 
「ううん。今はいらないかな。」

 
も「いつから体調悪いの?」
 
 
「うーん、ずっとかな、」
 

お「今までよく頑張ったね。
 
ゆうちゃん偉いよ。」
 

「ありがとうっ、」

 
も「子供たちが合格したらゆうちゃん1人になるけど心配すぎる、」
 

お「確かに、」
 

「大丈夫だよ、ちょこいるし。」
 
 
 
もう諦めていた。
 
なぁちゃんはこの世にいない。
 
これからは子供たちと生きていく。
 
だから、せめて子供たちを幸せにしてあげたい。
 
そう思って、ついていたテレビに目を向けた。
 
 
 
「なに、これ?英語?」

 
も「なんか海外の音楽特集だって」

 
お「面白そうじゃない?」
 
 

洋楽は好きだけど最近は聞いていなかった。

だから思わず見入る。

数分後には3人とも大号泣するなんてことも知らずに。