【★評価】 (五つ星評価)
【解説・ストーリー】
東京で写真家として成功し、自由奔放に生きる弟・猛(タケル)。母の葬式にも顔を出さなかった彼は、その一周忌に久々に帰郷し、そこで父と共にガソリンスタンドを経営する兄・稔と再会する。猛は頑固な父とは折り合いが悪かったが、温厚な稔がいつも2人の間に入り取りなしていた。翌日、兄弟はガソリンスタンドで働く幼なじみの智恵子と3人で近くの渓谷に足をのばす。ところが、川に架かる細い吊り橋で、智恵子が眼下の渓流へと落下してしまう。そして、橋の上には呆然とする稔の姿が。橋の下にいた猛は惨事に気づき、動揺する稔のもとに駆け寄り落ち着かせる。兄弟の証言から、最初は不幸な転落事故と思われたが、数日後、稔が突然“自分が突き落とした”と自供したことから、事件の真相を巡って裁判へともつれ込む。猛は弁護士である伯父を立て、稔の無実を晴らそうと努めるが…。
【レビュー】
この映画、すごい。
どの人の気持ちもすごく理解できて、
「その気持ち、わかるよ」
と、どの人に対しても思っちゃう。
どうして様々な立場に置かれる人の気持ちがわかるの?
と、監督に聞きたいぐらい。
特に主人公兄弟の立場を怖いぐらいにリアルに描いている。
「自分は兄だから」という責任感で、実家のガソリンスタンドで働き地味に暮らしながらも、その責任感を自分の中で持てあまし自由奔放に生きる弟を密かに恨む兄。
そんな兄の気持ちをつゆ知らず、兄を慕い、東京でカメラマンとして働き異性にモテる弟。
まさに真逆。
一人の女性の死をめぐり、周囲の心の動きを描いている。
兄は彼女を殺害したのか、それとも事故なのか。
当事者ですらもはや何が真実なのかわからない。
でも、何が真実なのか、ではなく、
各人が何を真実としたいのか、に焦点をあてているところが興味深い。
そこに、それぞれの思惑が交錯し、
観ているこちら側も、第三者としてどういう真実が望ましいかを頭に描き始める。
登場してすぐに死んでしまう智恵子役の真木よう子ですが、
大きな存在感を残しています。
以前、真木ようこに似ていると言われたことがあるけれど、(嘘ではない!)
どう考えても彼女のほうが数百倍かわいいわね。
しかし、1番大きな存在感をアピールしているのは兄役の香川照之。
後姿を映しているだけなのに、なんともいえぬ恐ろしさを感じさせるほどのその存在感。
真面目であるがゆえに、狂気的なものをも感じさせる。
最初は弟の猛が異端児で非常識な扱いをされていたのに、
次第に各人の狂気的な部分があらわになり、
「なんだよ、弟が1番まともじゃないか!」
という展開。
キャストもすごく良いですね。
オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、蟹江敬三
適材適所なのか、どんな役でも適材適所に思わせる役者たちなのか。
両方でしょうね。
西川監督は、さすが、是枝監督の秘蔵っ子だけはあります。
彼女は色白ですごくかわいくて、
ビジュアル的にはこんなに深くて鋭い作品を作るようなイメージでは無いんですけれどね。
そのギャップがまた素敵。
実はまだ初監督作品「蛇イチゴ」を観てないんですよね。
宮迫がどうも好きじゃなくて・・・
でも、やっぱりこの作品は押さえておくべきよね。
こんど借りて観よ。
【基本情報】
原題: ゆれる
製作年: 2006年
上映時間: 119分
製作国: 日本
監督: 西川美和
製作: 川城和実 重延浩 八木ケ谷昭次
プロデューサー: 熊谷喜一
企画: 是枝裕和 安田匡裕
原案: 西川美和
脚本: 西川美和
撮影: 高瀬比呂志
美術: 三ツ松けいこ
編集: 宮島竜治
音楽: カリフラワーズ
主題歌: カリフラワーズ 『うちに帰ろう』
照明: 小野晃
録音: 白取貢
助監督: 久万真路
【出演】
オダギリジョー 早川 猛
香川照之 早川 稔
伊武雅刀 早川 勇
新井浩文 岡島洋平
真木よう子 川端智恵子
木村祐一 丸尾明人 検察官
ピエール瀧 船木 警部補
田山涼成
河原さぶ
キタキマユ
田口トモロヲ 裁判官
蟹江敬三 早川 修