極寒 蚤の市
それでも私は、蚤の市へと向かう。
これってかなりの、「ブロカント(古物市)バカ」
骨董品も中毒になるらしく、眺めているだけで、なんとも言えない懐かしい暖かな気持ちが
ハートの奥から込み上げてくる。そして、安心感に満ちたアットホームな錯覚に陥らせてくれるから、
不思議なものだ。
ダウンのベストの上にダウンコートの重ね着で、カシミアのマフラーでぐるぐる巻きになって
出掛けようとした間際に、「私も蚤の市に行きたい」と、冬休みで東京からパリに戻ってきている
娘の彩良が言った。
「本当?遠いよ」
「大丈夫」
「本当?寒いよ」
「平気、平気」
という事で、彼女も蚤の市に一緒に行く事になった。
ところが、
クリニオンクールの市に入り、2、3ブロック歩いたところで、「さ、寒い」と案の定、彩良が言い出した。
もう一歩も歩けないくらいに、寒さで固まってしまったから、この辺でレストランに入って昼食に
しようという事になった。
それもいいね。
極寒メニュー数々
クリニオンクールの古物市地域には数々のフランスレストランがある。
観光客向けの歌声ライブレストランから、ブースの主人達が行く骨董商玄人レストランまで
色々とあるので楽しい。
そこで、今日は、やっぱり極寒メニューを選ぶ。
フレンチオニオンスープ
「グラタンにした玉ねぎのスープ」というこのスープは、肉のスープで煮込んだ玉ねぎがトロトロに
甘く、ひたひたのパンの上にたっぷりかかったチーズがオーブンで焼かれて出てくるから、勿論
熱い。
熱々の極寒メニューの極めつけだ。
ゴーマンディーズ(食いしん坊)の私達は、そのあとでブーフブギニオン(ブルゴーニュ風 牛の赤ワイン煮)と羊のすね肉のローストをたのんだ。
冬は煮込み料理にかぎる。
体の芯まで温まり、シベリアからの寒波に立ち向かう準備ができそうだ。
しかし、現実はこってりリッチな極寒料理のいただき過ぎで、早く家に帰って休もう、という結果になった、年明けそうそうの蚤の市であった。