戦慄の王女/クイーン | Dear, Near Here

Dear, Near Here

いよいよ孫が生まれる!グランマデビュー近し。

本日の議題

QUEEN

 

オリジナル・タイトル 「QUEEN」
収録曲
①Keep Yourself Alive
②Doing All Right
③Great King Rat
④My Fairy King
⑤Liar
⑥The Night Comes Down
⑦Modern Times Rock'n'roll
⑧Son And Daughter
⑨Jesus

⑩Seven Seas Of Rhye

 

1974年発売

 

『炎のロックンロール』クイーンがいよいよ日本でのアルバムデビューです。なんか本国では結構ひどい評価ですよ。『こんなものが売れたら帽子でも何でも食ってやる』なんて言ってる評論家もいるらしいですから」

 

「デビューシングルの①はいいツカミになってる気がするんだがなあ。そもそもイギリスは保守的だから新人には厳しいんじゃないか?レッド・ツェッペリンあたりに照準を当てて、それよりもいいか悪いか、みたいな評価基準なのかもしれん」

 

「ええ~っ!ツェッペリンがものさしになっちゃうんですか?あれはもうてっぺんじゃないですか!」
 

「イギリスの業界人はあんまり新人を持ち上げない傾向があるんだよな。皮肉かましたりイヤミを言ったりするのがスノッブだと思ってる」

 

「確かにそういう傾向はあるようですね。獅子はわが子を谷底に落とす、みたいな親心なんでしょうかねえ。そこから這い上がってくる者だけを評価する、とか」

 

「しかし、『帽子でも何でも食ってやる』ときたか。上等だ。是非やってもらおう。クイーンを日本でブレイクさせてみせようじゃないか!」

 

「おお!やる気ですね。じゃあ気合入れて邦題つけましょう」

 

「とはいえ、原題は…欧米でよくあるパターンか。う~ん、バンド名をバーン!と出すこの手のやり方は日本ではなじまないんだよなあ」

 

「ジャケもシンプルすぎて突っ込みどころがないですもんねえ」

 

「とにかく、何か邦題つけないと仕事してないように思われるし、それはまずいよな。ボーナス査定も近いことだし」

 

「イギリス発で、クイーンですからやっぱり『女王』は入れたほうがいいですよねえ。いや、呼び捨てじゃ恐れ多いから『様』もつけなきゃいけないですね。『女王様』とお呼びしないとシバかれちゃうかもしれませんし」

 

「だがなあ、日本には、奥ゆかしさとか一歩譲った謙遜の心とか、そういう心情を重んじる傾向があるんだよな。新人がいきなり『女王様』なんて触れ込みで乱入してきたら、逆にシバかれそうだ」

 

「なるほど。高飛車に映ってしまったら売れるもんも売れなくなっちゃう可能性がありますね」

 

「その通り!だから、ここは一歩下がって『王女』でいこう!次の王位を継ぐ者、という願いを込めて『戦慄』を頭につける。『戦慄の王女』!これでどうだ」

 

「現在王位についているバンドを脅かす存在、という意味ですか。もしこれで本当に売れて、後世に残るようなバンドに成長したら、この邦題も歴史に残るわけですね。笑われなきゃいいですけど」

 

 

こんないきさつで邦題が決まったはずがありませんが、ご周知の通り、クイーンの高い音楽性を最初に認めたのは日本だった、と言われています。イギリスの評論家が本当に帽子を食ったのかどうかはわかりませんが、映画「ボヘミアン・ラプソディ」をきっかけに新たなファンを生んでいるクイーンは、亡きフレディ・マーキュリーの存在ごと「生きる伝説」として活動を続けています。