温かい手と長い夜
手術当日の朝、シャワーを浴びてからはずっとソワソワが止まりませんでした。
朝6時以降は絶飲食となりましたが、髪の毛を乾かしている間にのどが渇いてしまい、もっと飲んでおけばよかったと後悔しました。
私の手術は8時半からで、13時位には終わる予定と聞かされていました。
朝の先生の回診が終わり、8時15分頃に看護師さんとたまたま病棟にいた先生と一緒に手術室に歩いて向かいました。
その先生は私を診てくださる3人のチームの中で一番お若い先生で、
手術室までに向かう間、
私が地元で開催している「がん患者さんのためのヨガ教室」について色々と質問してくださり私の気を紛らわししてくれました。
金属に囲まれた無機質な手術室につき、ベットには自分で横になりました。
色々な処置がされている間、
主治医も私の気を和ませてくれる温かな言葉をかけてくれました。
痛いわけでも悲しいわけでもなく、
どちらかと言ったら、これまで私に関わってくれた全ての人達への感謝の気持ちに近かったと思いますが、
目をつぶると自然と涙がこぼれてしまい、
主治医がタオルでその涙を拭いてくれました。
その後、私の手を握り、
他の先生たちも私の肩をさすり、足元をさすり、
「起きたら終わっているので安心して寝てください」と声を掛けてくれました。
口元にマスクが当てられ、3回大きく深呼吸をし、
その後、次に目を覚ました時には手術が終わっていました。
壁の時計に目をやると14時を過ぎていました。
予定より長くかかったのかな~とぼんやりと思いながら、
次に気が付いた時には病室にいました。
看護師さんが色々と処置をしてくださっている中、
「よく頑張ったね。頑張ってくれてありがとうね。」と言う兄の声が聞こえてきました。
その数分後、また「よく頑張ったね。頑張ってくれてありがとうね。」と言う母の声が聞こえてきました。
全く同じセリフに心が和み、来なくていいと言ったのに、今日も二人で来たのだなと思いながら、
母の手を強く握ったのを覚えています。
後に聞いたところでは、病院では家族1人と言われたが、2人で来てしまい、看護師さんが苦笑いする中、30分間、15分ずつ私を見舞ってくれたとのことでした。
はっきりと意識が戻ったのは夕方過ぎでした。
右側の痛みが酷く、看護師さんが寝返りを打ってもいいと言ってくれましたがそんな余裕が全くありませんでした。
夜、医師たちによる回診があり、リンパ節に転移がなかったことを知らされました。
看護師さんが検温やその他の処置に来るたびに窓に目をやり、
一体いつになったら夜が明けるのだろうと、長ーーーーい夜を過ごしました。
自分が実際にがんの手術をして、思うことが沢山あります。
両親のこと。
そして、私の「がん患者さんのためのヨガ教室」に足を運んでくれた生徒さんたちのこと。
みんな本当にがんばってきたんだな。
私があの時かけたあの言葉は誰かの励みになったのだろうか。
私は本当に寄り添ったことが出来ていたのだろうか。
私のこの経験とその問いの答えを、
私はこの先ちゃんと活かしていかなくちゃいけない、と思いました。
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