選択できる権利②

病院を転院することに当たっては相当の覚悟がありました。

まずは母の主治医の顔をつぶしてしまう事。
せっかく私の事を考えて一番いいと思える職場にも近く、個人的に親しくしている大学病院の教授に繋げてくれたのに、その医師の診察を断って転院するなんて、なんて恩知らずなんだろうと思いました。
この部分が一番のネックでした。

そして、転院したとて、そこで信頼できる医師に巡り合うとも限らず、
さらにコロナの影響で、今よりももっと手術日が遅くなると言うリスクもありました。

医師の対応なんてどこもそんなもん。
黙ってこの病院で治療を続けるのが一番。

そんな気持ちもありました。

でも、私の知っている乳がん患者さんは、ほぼ全員、医師との関係が良好で強い信頼関係を築けているようでした。
事実、私の母の主治医もとても親身に患者と家族に寄り添った上で治療の選択を提案してくれていました。
だから、「医師の対応なんてどこもそんなもん。」と言うのはいい切れないと思いました。

手術は一日でも早くして欲しいけど、この先長い治療になるなら、多少遅くなっても信頼できる先生にお願いしたいと言う気持ちが強くなりました。

患者は治療を医師に任せるしかありませんが、
その医師を選ぶ権利は患者にあると思いました。

私は正直な気持ちを家族に相談しました。
母も兄も、今は自分のことだけを考えて後悔のないようにすべきで、誰かに悪いとか迷惑かけるとかは元気になってから考えればいいと、私の背中を押してくれました。

そして私は、ここは少々我儘と言われても転院しようと決意しました。


早速、信頼できる友人に相談し、自分に合った病院を探し始めました。


そして実際にそこで手術をした人の話と、手術の待ち時間、自宅と職場からの通いやすさを考慮し、最終的に聖路加国際病院に転院することを決意しました。

それから私は母の主治医にお詫びの手紙を書き、
大学病院に転院することを伝え医療情報を提供して欲しいと電話を入れました。

医療情報を提供してもらえるまでにも時間がかかりそうでしたので、ここは図々しく催促の電話を入れ、何とか1週間ちょっとで医療情報を手に入れることが出来ました。

聖路加国際病院は予約をするのに紹介状が手元にないと出来ないと言う事でしたので、
紹介状を手に入れてから予約をし、実際に受診できたのは転院を決めてから3週間後のことでした。

でもその間の3週間、それまでの時間よりも心が軽く、転院先の診察を受ける前から自分の決断は間違いなかったと根拠もなく安心感がありました。






転院することを悩み母に打ち明けた時、私は思わず母の前で泣きました。
すると今まで私の前で涙を一度も見せなかった母が声を上げて泣き出しました。
その時、私はこの先何があっても絶対に母の前では泣かないことを決めました。


今日もお読みいただきありがとうございますおすましスワン



以前、母と二人でドライブに行った黒山三滝。埼玉のパワースポットです。