政治学から見るAKB総選挙

政治学から見るAKB総選挙

政治学から見るとAKB選抜総選挙は興味深い要素が盛りだくさん。
それらの解説を通して、政治学も学んでもらおうというブログです。

 AKO研究会ではAKB48の選抜総選挙について、政治学の観点から分析しています。このブログはAKO研究会の成果を世に出すために設置しました。


 AKB総選挙の制度などに興味があるファンの方、政治学を習い始めた大学生の方、大学で政治学を教えている教員の方などには興味を持ってもらえると思います。


 毎週1つのテーマを扱っていく予定です。大きなテーマの場合には、何回かに分けて投稿していこうと思っています。

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今回は、前回説明した有効政党数の考え方を使って、過去の総選挙の得票データを基に、有効メンバー数を計算してみましょう。

は、2011AKB総選挙における各メンバーの得票数ならびに得票率を示したものです。





政治学から見るAKB総選挙

この得票率の数値を基に、有効メンバー数を算出してみることにしましょう。ただし、41位以下の表数は公表されていませんから、40位までの得票数を使って計算を行ってみたところ、有効メンバー数は17.7となりました(ちなみに、21位迄の数値を用いて計算すると18.0となりました。)




図は同様の手続きで、2009年、2010年の結果を使ってそれぞれ算出したものです(2009年は30位迄の数値を用いて算出しています)。図を見ると、有効メンバー数がだんだんと減ってきていることが確認できます。選抜メンバーの人数は21人であったことを考えると、その規模は概ね一致しているとも言えますが、逆に言えば、18位~21位は選抜メンバーとはいえ、危ないのかも知れません。





政治学から見るAKB総選挙




 前回は、センター対決における有力な候補者数について触れましたが、今回はもう少し大きな視点で、全体について触れてみたいと思います。



政治学には、有力な政党数を示す有効政党数という指標が存在しています。これは、実際の政党の数ではなく、得票率や議席率に基づいて、政党の規模を考慮に入れた指標で各党の得票率または議席率の2乗の和の逆数で表現されます。




政治学から見るAKB総選挙-式1

これは、各政党の得票の程度が同程度であれば、政党数と有効政党数とが一致するのですが、逆に各政党の得票の程度にばらつきがある場合には、実際の政党数とは異なる値を取ります。




例えばA~Dの4つの政党が存在しているとして、各政党の得票率が同程度であるならば、各政党の得票率はそれぞれ25.0%(100%÷4)となり、


政治学から見るAKB総選挙-式2




その場合の有効政党数は4ですから実際の政党数と一致します。しかし、A党が大きく得票し(仮に60%)その他が小さいような場合(仮にB党20%、C党5%、D党5%)には、 有効政党数はおよそ2.5となります。



政治学から見るAKB総選挙-式3



これは、実際には4つの政党が存在しているけれども、得票率を考慮すると、2.5の政党数が適正であることを示していて、有効政党数は実際の政党数よりも小さくなっています。 尚、一般に日本における実際の有効政党数は、中選挙区制下では3~4、小選挙区下からは2に近づいてきていることが知られています。




少々長くなってしまいましたが、さて、ここで興味が湧くのは、有効政党数ならぬ、有効メンバー数でしょう。次回は、過去の総選挙の得票のデータを使って有効メンバー数を計算してみたいと思います。

政治学では、選挙区レベルにおいて小選挙区制は2大政党制に、比例代表制は多党制に収斂するという、いわゆるデュベルジェの法則というものが知られています。小選挙区制において、2大政党化する理由としては幾つかの理由があるのですが、簡単にいえば、第3党以下の政党の候補者は議席を獲得できないため、次第にその力を失ってしまい、次の選挙における当選可能性も低くなってしまうこと、また、当選可能性の低い第3党以下の候補者に投票することは、自分の1票を無駄にしかねないと有権者が感じれば、やはり第3党以下の政党の候補者の当選の可能性は低くなることが考えられています。


更に、政治学ではこうした議論を発展させて、「定数+1」の政党が生き残るということが実証的に示されています。つまり、小選挙区制に当てはめれば、小選挙区における定数は1ですから、有力な政党の数としては1+12となり2大政党化するといえるのです。


AKB総選挙において小選挙区制的な性格を有するセンター決めでは定数は1ですから、理論から予測される有力な候補者は2人であったといえます。こうして考えると、これまでの総選挙を振り返ったとき、センター対決は前田敦子と大島優子の2人の争いであったと考えられますから、こうした法則と大きく矛盾しないといえるのではないでしょうか。


さて、前回、前田敦子の「卒業」について触れましたが、選挙区における有力候補者が出馬を取りやめて抜けてしまえば、当然その状況は変化します。そう考えると、前回(2011年)までの総選挙と今回(2012年)の総選挙のセンター対決の有力候補者数が同じであるとは限らないといえそうです。そうした意味では、今年の総選挙の結果がどうなるのかは非常に興味深いところではあります。