モアナと伝説の海


「海に選ばれた16才の少女—彼女の名前は、モアナ。」

ロン・クレメンツとジョン・マスカーの共同監督。

本作が公開されたのは2017年。でも制作が開始されたのはなんと2011年!この間に作品の舞台となるフィジー、サモア、タヒチ、ニュージーランドなど南太平洋の国に実際に足を運び、現地の人々やその暮らし、文化、歴史等々を取材したのだそう。


オープニングの音楽はいつもの耳馴染みのあるものではなく、作品に合わせてパシフィックミュージックになっていた。ここの音楽が作品によって変わることがあるのも、ディズニー映画を観る時の楽しみの一つ。ここの音楽の雰囲気によって、これから始まる物語の雰囲気も分かる気がするから。

今作は3000年前(!)のモトゥヌイ島が舞台。「マウイ」というキャラクターはオリジナルではなく、ポリネシアの神話に出てくる半神英雄。今作で唯一原案通りのキャラクターとなっているが、主役ではなく脇役になったそう。この理由をオーディオコメンタリーで話していたのに忘れてしまった、、、

マウイの代わりに今作の主役になったのが、16歳の少女 モアナ。この名前はポリネシア語で「海」を表すのだそう。ポリネシア語って、今回初めて知った言葉だった。まだまだ私の知らない世界が沢山あるんだなぁと痛感した瞬間でした。

どうしても言っておきたいことがある。。。タマトア、巨大なカニって言われてるけど、あれ、ヤドカリじゃないの??????私にはヤドカリにしか見えない、、、

ココナッツで出来たカカモラっていう海賊のシーンはパイレーツオブカリビアンのオマージュですか?そうですよね、きっと。コメンタリーで話してた気もしたけど、聞き逃したかな、、、


モアナを見てまず思ったことは、今までのディズニープリンセスとは少し(いや明らかに?)違う、ということ。

プリンセスの大事な衣装であるドレスを着ていない。お城がなければ王子もいない。そして何より、お決まりの2人が結ばれるラブラブカットで終わる作品ではない。

大きな身体中にタトゥーが入っていて、髪の毛はもじゃもじゃ。いつもだったら悪役のような見た目のマウイが今作ではプリンス役である。

ディズニープリンセス作品をほぼ全て観ている私からすると、「いつもとは少し違う主役の2人」の物語だけれど、それでもしっかりと2人は作品の中でプリンセスとプリンスという役割を果たし、観ている私をドキドキさせ、ワクワクさせ、2人の行く末を応援させてくれた。

この「いつもとは違う」がとても楽しかった。流れが読めなくて、次はどうなる?こういう時はどうするの?と考えながら観ていたり。そうなるの!そういう考え方なの!なんて、時についつい声に出してしまいながら2人に心を通わせつつ、この新しい世界観に浸っていました。


毎回の事ながら、今回も特典映像が最高に充実していて見応えがありました。

舞台となった土地に実際に住んでいる人々の「島と海は1つ」という意見や、その土地の文化を踏まえて、今作では生きた人間のように海を扱い、海を擬人化する事によって「海」を重要な登場人物に仕上げたというお話が1番興味深かった。

現地の取材で見た伝統的な航海の仕方をしている人々をそのままアニメーションに採用した話も。モアナやマウイが航海の際にしていた星の位置を全部覚えて頭に入れておく事や、掌で距離を測る方法は、全部実際に使われている手法なのだそう。

取材をしていて分かった事は、訪れたどの島も歌と踊りに溢れていたという事。今作でもミュージカルのように要所要所で曲が流れているけれど、それは決してディズニー映画だからという理由だけではなく、舞台である土地の特性や文化、雰囲気までをも映像の中に活かした演出であると感じました。

初めて観る作品なのに、目に入るもの耳に入るもののほとんどを、なんか知ってる、どこかで見たことある、などとぼんやり考えてしまうのは、きっと実在する島とその土地の人々の暮らしが忠実に、でもディズニーらしさを忘れずに丁寧に再現されているから。

そして何より驚いたことは、取材に赴き出会った現地の人達も本作の制作に参加したということ。彼らが作品づくりに参加した事によって、取材をしただけでは描ききれない、伝えられないような細部までを詳細に再現する事が出来、映像と物語がよりリアルになったのだそう。

そしてキャラクターの声を担当する役者陣も南太平洋と関係のある人をキャスティングする徹底ぶりで、ほぼ全員がポリネシア人だったのだそう。ポリネシア人っていう括り、初めて聞いた、、、まだまだ勉強しなければいけない事が沢山あります。

キャラクター達が着ている服も、舞台設定である3000年前のモトゥヌイ島にあるもので作れるものを考えて作ったというアニメーターさんの言葉にびっくりした。正直衣装1つにそこまで拘っていたなんて想像もしてなかった。キャラクターとストーリーのイメージだけでアニメーターさんが作って着せているのだとずっと思っていた。

これも実際にポリネシアに住む人々へ、そして彼らの祖先や文化への敬意を払っての事なのだそう。素晴らしいな。


それからメイキング映像で何回か出てきたと思うんだけど、映画を一本作りながら同時に新しいソフトウェアの開発もしてるの、シンプルに凄い。

2人の監督によるオーディオコメンタリーがとにかく面白かった。予算がない予算がないって何回予算の話すんのwwww色々話してくれてたけど結果予算の話しか頭に残らなかったwwディズニー映画名物のここに前作のキャラクターが隠れてるよ!っていう系のやつ、今回多いな〜と思っていたら、予算的に新しいキャラクターを作る余裕がなくてトリビアを結構入れたって話してたのが1番ワロタ

でも1つだけオーディオコメンタリー聞いて良かったと思ったエピソード。何でモアナが海に選ばれたのか?正直よく分からないまま観ていたのだけれど、物語冒頭で赤ちゃんだったモアナがウミガメを助けたことで海に選ばれた、という事を教えてくれた。至ってシンプルな理由だった。あのシーンは海がモアナを選んだシーンだったのか、と納得。


ディズニー見た!って心から思えるようなエンディングシーンがとっても好き。全体的に満足度が高い作品です。

とにかく舞台となっている海が本当に綺麗!これは本当に映像なのか、南の島の本物の海なのではないかと疑ってしまうほど。島の色彩もカラフルで綺麗だし、島の1番高い所から全体を見た時の、島の緑と海の青や水色のコントラストが絶景。色彩の鮮やかさでいったらディズニー作品で1番かもしれない。本当に綺麗で色んなシーンで景色に見惚れてしまう。

それから人の動きが凄くしなやかで本物の人みたい。優しくて柔らかい動き、特にモアナとおばあちゃんが浜辺で踊っている時の腕と足腰は、アニメーションっていうことを忘れそうになる。


同時上映だった「インナーワーキング」も良かった。日系ブラジル人の方が監督された作品。真面目に働きすぎる日本人には分かりやすい内容のような気がした。

自分の欲望を満たしたい心臓と、それを制御しようとする脳みその話。最終的には脳みそが制御をやめて心臓に自由を与えるのだけれど、時に自分を解放してあげることは凄く大事だと思う。何事も真面目すぎは良くない。人生にはリミットがあるのだから、真面目に頑張る部分とはっちゃける瞬間をバランス良く楽しまなきゃ!色んな事を制御して、自分の人生を自らの手でつまらないものにしないで!と言われているようだった。

自分の心や身体が欲していることに正直に生きることって、1番大切で1番難しいこと。



実写版ムーランは劇場公開ではなく配信になってしまったけれど、私が楽しみにしていたわんわん物語の実写版も配信だけなのかな、、、アナ雪2もレンタルしたかったのに、ディズニーの公式アプリかなんかで配信されているから今のところレンタルショップには並ばないそうで、悲しい。という事は今配信が決定している作品もきっと同じパターンだよな?悲しい。

私は作品自体というより特典映像を観たい派の人間なので、本編だけ配信されているものを観たいとは思えないんだよな、、、だからといってBlu-rayを買うまででもない。どれもこれもコロナのせい。コロナお前だけは一生許さん(何億回目)

でも事故物件は無事に劇場公開されて何よりです(色んな意味で)。既に2回観に行きました。興行に貢献したい作品は劇場まで足を運びます。

ONWARDも観たいんだよな〜!それからSoul。ピクサーチームの作品は劇場公開あるんだけどなぁ。良きタイミングで全ての作品を観ることが出来ますように。