昔から農家にとって田んぼへいかに灌漑用水を張り巡らすかは重要な問題だ。しかも全ての農地に均等に水を送る必要がある。ことに山間部ではその方法が難しい。しかし先人は見事なアイデアでそれを解決したのだ。それは円形(円筒)分水工! それを知ったのは最近でまたまたYouTube動画で初めて見た時には感動してしまった。明治後期から造られていたようだが正確な建造年の分からないものも少なくないようだ。そこで我が三重県にもあるのか知らんと検索してみると伊賀市と名張市にあった!!
これが分水工だ。
(WikiPedia)
(日本土木学会HP)
全国にあり規模や構造はそれぞれで最大直径が30m超のものもあるそうだ。その美しさから観光スポットになってる分水工もあるとのこと。
分水工の基本的構造は以下の通り;
(作図:鉄男)
傾斜のある取水口から導水管であるいはサイフォンの原理で水を引き中央の円筒部から水が湧出する。その水は更に外枠の貯水筒へ流れ落ちそこから各用水路へ水が流れる仕組みだ。しかしこれって無動力なのだ!!! 素晴らしい!! 他にも工夫を凝らした構造の分水工があるようだ。
【三重県伊賀市五ヶ字水利管理組合円筒分水(三重県伊賀市千貝)】
6月2日早速バイクで分水工のある伊賀市に行ってみた。尚場所の特定は住所とヤフー地図でおおよの場所の地図を拡大しつつ川沿いにある分水口らしき円形水溜まりを探すのだが意外にはっきりと地図上で確認出来る。
伊賀市阿山支所辺り(画面奥)からゆるい坂を上るとそれがある。水の供給源である河合川支流(→柘植川→木津川)はこの下数mを流れる。自由に見学出来るがこの箇所だけ広くなってる路肩は訪問した時柵が並べられていた。既にこの辺りでザーザーと水が流れる音が聞こえる。
こじんまりした装置で周囲を囲むように手すりが設けられている。
上が導水路。その下に田んぼへ向かう用水路がある。
導水路から引かれた水は真ん中の筒の下へと向かいそこから湧出する。
真ん中の穴から水が絶えず湧き出てる。覗き込むとちと怖いかも。
内筒の内側には多数の小さな水門がありここで水量の微調整が行われるようだ。新しく増設された様な分水門扉だ。
内筒から噴出した水は隔壁で3区画に仕切られた外筒部へと流れ出てそれぞれ3つの用水路に水を供給している。ザーザーと心地よい水音が聞こえて涼しげだけど日光を遮るものは何もない。
右にあるのが一つ目の用水路。
二つ目の用水路。
三つ目の用水路はやや狭い。
コンクリートで蓋されているのが導水路で坂の更に上にある堰(僅かに見える青い構造物)から水が引かれている。その横が一つ目の用水路だ。
緩い坂を上った所に取水用の堰がある。
堰にある銘鈑。
上流側に溜まってる水はかなり濁ってるがいかにも山の出汁が効いてそうな感じ。
この堰の画面手前に分水工への取水口がある。
取水口から分水工へゆっくり流れ下る導水路。堰と分水工の落差は2~3mくらいかな。川は道路や導水路から数m下を流れている。
いやあなかなか感動したなあ。
【滋賀県湖南市朝国親水性円筒分水工】
ネット検索を進めると我が家から下道で2時間ほどの滋賀県湖南市にも良さげな分水工があった。6月7日風が強かったので車で出かけたがやはり駐車場所を探すのに苦労し農道の少し広い所にちょいと車を停め現場まで歩いた。
野洲川の川沿いで国道1号線と県道13号線(旧国道1号線)と市道が三差路を形成する辺りにある親水池を有し展望台とベンチが併設された基本的形状の好感の持てるちっちゃな分水工だ。
左上が国道1号線。奥の青看板が三差路で旧国道1号線は直角に曲がり画面右手で野洲川を渡り市道は国道1号線の高架下を走る。その市道から直接分水工の場所に入れる(車では無理!)のだが前を向いていると通り越してしまう。
伊賀の分水工と同じくらいの規模だが水音が凄い! 手前が親水池かな? 確かに見学台が設けられている。
分水工を上から見学出来るこの台はいいなあ。ベンチもあるし。
これは凄い! こんこんと湧き出る水が内筒の穴を通って凄い水音を立てている。しかしはっきりわかる用水路の出水口は一箇所だけでもう一箇所は親水池に開口してる。説明書きによると「隔壁」で分水される旨書かれているが隔壁ってどこにあるの??
内筒部の出水口。それにしてもなかなかの水量だ!
出水口から親水池へ。
ここではこの親水池から4箇所の出水口がありそれぞれ開閉用のバルブが付いている。
市道に沿って流れるこの用水は親水池から来たものだ。
ここはサイフォンの原理を用いているようだが隣接する野洲川のどこかに取水口があるのかな?
それにしても実にうまく考えられた装置だ。いやあ面白かったなあ。真上に木陰なんかあれば水音を聞きながら昼寝をしたくなるなあ。