手元に昭和18年10月発行の鉄道省時刻表・中部地方版があるんです。ちっちゃな手帳サイズの薄っぺらい冊子で紙質はよろしくありません。表紙だけは黄土色のカラー印刷でC型蒸気機関車に牽引された客車列車が書かれています。

昭和18年って言えばまだ本土に戦禍は及んでなかったものの戦争真っ只中じゃないですか! 裏にこの時刻表の持ち主と思われる方の名前があり「鐵道官補」と記されています。高山線と太多線のページの各所に赤線が引かれています。持ち主は何を目的に何処へ行かれたんでしょうねえ・・。
収載路線は東海道本線(沼津ー米原)・身延線(富士ー甲府)・飯田線(豊橋ー辰野)・武豊線(大府ー武豊)・美濃赤坂線(大垣ー赤坂本町)・二俣線(掛川ー豊橋)・越美南線(美濃太田ー北濃)・高山本線(岐阜ー富山)・太多線(多治見ー美濃太田)・関西本線(名古屋ー柘植)・参宮線(亀山ー鳥羽)・中央西線(名古屋ー鹽尻)・小海線(小淵澤ー小諸)・明智線(大井ー明智)・中央東線(鹽尻ー新宿)・北陸本線(米原ー直江津)・城端線(高岡ー城端)・三國線(金津ー三國港)・七尾線(金澤ー輪島)・氷見線(高岡ー氷見)・富山港線(富山ー岩淵浜)・新湊線(高岡ー新湊)・小濱線(敦賀ー東舞鶴)です。、勿論それぞれ両端駅を超える直通列車や乗り換え列車の発着駅と時刻が書かれています。随分多くの路線を網羅していますがちっちゃな冊子でも七十数ページありそもそも列車本数が少ないから。

この中から特に我が地域の列車ダイヤを見てみました;
1)東海道線豊橋―米原間 (名古屋駅下り)
急行:東京発→大阪・下関・門司・博多・長崎・鹿児島行・・内一本は第一種急行「特急ふじ」博多行・・計14本 (内不定期3本)
普通:鳥羽・尾張一ノ宮・大垣・米原・大阪・京都・岡山・姫路・岩國・廣島・門司・博多・長崎・熊本行・・25本
長距離普通列車が多いですね。ちなみに東京発10:40→普通→熊本着22:06・・所要時間35時間26分!! まあ東京から熊本まで普通列車で通し乗車する人は居なかったでしょうねえ。また東京発博多行普通列車の総所要時間は32時間19分であるところ特急「ふじ」は21時間30分です・・さすがに速い!!??


2)関西・参宮線
名古屋発 亀山行2本 (1本は亀山発鳥羽行に連絡)
湊町行4本 (3本は亀山発鳥羽行に連絡)
鳥羽行6本 (1本は東京発②寝)
四日市行3本
亀山発 湊町行1本
上記直通以外鳥羽行5本
山田行1本
上りはほぼこれらの逆ながら奈良と京都発の列車が設定されています。
言う間でもなく掲載路線のほとんどが非電化路線で貨物列車を含めれば何百両という蒸気機関車が走っていたんですよねえ・・凄いなあ。また時刻表を見ると各地に長距離列車が数多く運転されています。あのアナログな蒸気機関車を操っての長距離定時運行は神業ですね!!
時刻表で見た長距離列車群は以下の通り;
●東京発ー名古屋・鳥羽・大垣・米原・京都・大阪・廣島・岩國・下関・博多・長崎・熊本・鹿児島行
●大阪発ー(北陸回り)上野・青森行
ちなみに東京発11:00→急行→鹿児島着17:50・・なんと30時間50分! 大阪発10:10→急行→青森着17:06・・なんと30時間56分!! また言う間でもなく当時は飛行機や高速道路などはなく移動は全て鉄道ですからどの列車も相当の混雑だったでしょうね。腰とケツが壊れそう!!!

しかし当時の国民は耐えていたんです・・裏表紙:「國民の誓」

みたみわれ ●大君にすべてを捧げまつらん
●すめらみくにを護りぬかん
●力のかぎり働きぬかん
●正しく明るく生きぬかん
●この大みいくさに勝ちぬかん