翌日、調書を取るために呼ばれたユキに付き添ったワタシ。

数ヶ月前に成人してるしね。

親バカ炸裂なのは百も承知なのよ。

ユキが一緒に行く気満々だったこともあるけど、

それよりなにより信用できないの、警察官が!


今回の事故でも、二言目には成人してるから!と言うくせに

扱いはぜーんぜん成人じゃないわけ。


20歳になったばかりの娘なんて、親からしてみればまだ子供だけど、

警察官にしてみれば単なるガキでしかないわけね。



男臭い部屋に通されて、やってきたのは年の頃50代半ばのオッサン。

ワタシの顔を見たとたんに言ったよ。


現場の警察官が失礼なこと言ったみたいですねぇ。

部下なんでよく注意しておきますから。



あっそ、って気分。



事故の様子を一通り聞かれたあと、このオマワリが不思議なことを

言い出したんだよね。

この時点ではワタシは傍観者。


アナタに過失はないんだけどね。

でも、もっと注意していれば事故に遭わずに済んだってことないの?

例えば、もっとスピードを落とすとかさ。

止まってる車なんていつ出てきてもおかしくないわけよ。

それをわかってれば事故に遭わずに済んだんじゃないの?



って、コイツなに言ってんだろうと不思議だったわ。



そりゃね、止まってる車はいつかは動き出すだろーよ。

ウインカーでも出てれば、後続車はスピードを落とすだろうし、

バイクだってアクセルを緩めるはずだよ。


だけど今回の事故は、道路上の駐車帯に止まっていた車が、

後方とサイドの確認をせずに発進させてユキと接触したのよね。

ぶつかったのは車のドアミラーより前なわけ。


なにをどう注意すればよかったのよ。

制限速度をオーバーして、カッ飛んでいればぶつからなかったかもね。

あ、家まで2キロ以上ある距離を、エンジン切って歩道を歩いてれば

事故になんて遭わなかったかもね。



アナタに過失はないんだよと言いながら、どんなところが悪かった?


これっておかしくないの?



ミニカーのような、車とバイクの模型を出してきて、

ここに車があって、これがアナタでetc.


今度はその模型をユキが手に取って、だからこうであーでと。

さらに警察官が模型を取って、だからこーであーで。

またユキが取って、だからこーであーで!!!


って、ハタで見てるワタシには三流ドラマみたいで言葉も出ない。



そのうちに警察官の口調が荒々しくなってきてね。

それにウンザリしたユキが、持っていた模型を投げ出すように

テーブルに転がしたのね。


やめなさいっ!


思わず言っちゃったわよ、ワタシ。


でもさ、ユキの気持ちはよーくわかるんだよね。

ワタシがユキだったら、きっと警察官に向かって投げてるよ。



そしたらね、そのあとの警察官の言動にビックリ!



あーあーー


そうくるわけね。


じゃ、もういいわっ!


終わり終わり終わりっ!


アンタはなんにも悪くない


ってことでいいんだね!


あっそーですかっ!!






調書に殴り書きで「なにもありません」って書いて、

その調書を思い切り閉じてたよ。





確かにユキの態度も悪かったのかもしれない。

でもさ、シツコイんだよ。

そりゃ誰だって怒るよ。

しかもね、アンタの話し方は大の大人に向かって話してるのと違うよ。

なんでそんなに上に立ちたいんだ?




もうね、笑うしかないのよ。

ってか、不謹慎にも吹き出しちゃったのね、ワタシ。

で、口は挟まないって決めてたのに、思わず言っちゃったの。



あの、いつもそんな風に調書取ってるんですか?



なんて答えたと思う?



そんなことありませんよ。

みなさん、素直に言うこと

聞きますから!






あ、なるほどね。

警察官の前では誰でもイエスマンであれということね。


そりゃ失礼しました。





ワタシたちの情報は全てお伝えしてあるのですから、

アナタも名前ぐらいおっしゃったらいかがですか?

名刺ください


って言ったら、名刺を探し出してね。

結局見つからなくて、汚い紙に名前だけ書いて渡されたよ。




最後に言ってきた。



お宅のような立場の方が熱くなってどうするんですか?

もう少し真摯に話を聞いていただけませんか。

これだから若い人たちが、警察官に不信感を抱くんだと思います。







って、コイツらになに言っても無駄なんだな。