遠く山形で、自動車運転免許教習合宿へ行っているユキから、
「毎週録画設定をしてる、秘密の嵐ちゃん・嵐の宿題くん・コードブルーを
解除しておいて!」などという、わけのわからないメールが届いたので、
わけはわからないが、取りあえず「りょーかい!」と返信をした。
おかーさんとしては、そんなことよりも現状を聞き出したいところだ。
順調に進んでいるのかとか、予定通り23日に帰宅できそうなのかとか、
教習内容についてもう少し報告してくれてもよさそうなものだが、
それに関しては今までなにも言ってはこない。
ところで、なにか欲しい物があったら送ってあげるよ。
うん!DSと友だちコレクション送って欲しい。
あとさ、君に届けっていうソフト、どっかに売ってたら買って欲しいなぁ~。
わかったよ。
なにか食べたいものはないの?
それは大丈夫。スーパーもジャスコもあるよ。
お金は足りてるの?
銀行もあるから大丈夫!
早速、ユキのDSを探しに滅多に入ることのないユキの部屋へ向かった。
まさに禁断の扉を開く気分だ。
う・・・あれだけ出かける前に片付けて行けって言ったのに!!
いや、きっとこれでも片付けたんだろうな。
床が見えてるもん。
窓を全開にし、あちこちの引き出しを開け、ようやくDSを見つけることができた。
そして、3個もあるトモコレのソフトからユキ用のを探し出し、君に届けという
ソフトを買いに出かけた。
ついでにチョットしたお菓子でも入れてあげることにしよう。
ってか、なんで楽しんでいるんだ?ワタシ・・・
ワタシも甘いよな、などと思いつつ、某ショッピングセンターへ向かう車中、
大阪に住んでいた時のことを思い出した。
大阪には4年半ほど住んでいたのだが、2週間と空けず実家の母から
宅急便が届いていた。
中味はお菓子だったりお米だったり、その他日用品だったりと、大阪でも充分
手に入るような物ばかりだった。
子供たちにお小遣いが入っていることもよくあった。
母からの荷物は、我が家の救援物資ともなり、ずいぶんと助かったものだ。
いつの日か、3人の子供たちが親元を離れた時、ワタシもきっと母のように
細々とした物を集めては送り届けたりするのかもしれない。
それはそれできっと楽しいんだろうと思う。
ユキに頼まれた物を揃えて箱に詰めたら、少しだけ隙間ができてしまった。
箱に隙間が開くんだけど何か欲しい物はない?
薬とかはいらないの?
うん、薬はいいや。
あ!!ネコ入れといて!
・・・ネコですか (ーー゛)ボソッ
ネコというのは、ユキが2歳になった12月に、ワタシがローソンで買ってきた
お菓子セットの中に入っていたキティちゃんのことだ。
小さなキティちゃんなのだが、なぜかユキはそれをとても気に入って、
四六時中手放すことがなかった。
ユキはキティちゃんを知らなかったわけではない。
↑ これはちゃんとキティちゃんと呼び、認識もしていた。
けれども、そのローソンおまけのキティちゃんに限ってだけ、どういうわけか
キティちゃんとは呼ばず、ネコと呼んで可愛がっていた。
ネコはどんなときにもユキと行動を共にした。
買い物にも、旅行にも、片ときもユキのそばを離れることがなかった。
何度も外出先に置き忘れたことがあるのだが、不思議とネコだけは
ユキの元に戻って来た。
今から思えば、誰もあんな汚いネコ、拾っても持って帰らないよなぁ~。
そんなネコも、ユキが成長するにつれて、お留守番が多くなっていったのだが、
それでもユキのベッドの中には常にネコがいた。
20歳になった今でも、ユキのベッドの中に転がっているネコ。
そのネコを送れという。
だってさ・・・これだよ!
鼻は欠け、キティちゃん自慢の色白のかけらもない。
手足はやせ細り、全体的に3回りぐらい小さくなってしまったネコ。
後ろ姿なんて、哀愁漂うことこの上ない。
明日には我が家のネコも、山形の空気を吸っているはずだ。