コラボ動画だからこそはっきりしたこと 


ひと月ほど前。2025年10月26日に、2本の動画がYouTube上で公開されました。


人気ユーチューバーのフィッシャーズ。そして人気クイズ集団のQuizKnock。

彼らのコラボ動画がそれぞれのチャンネルで公開されました。

どちらもとても面白かったのですが、比較するとなかなか面白い違いが発見でき、それはユーチューバーが改めて考えなくてはならない問題に結びついているような気がしたので、今回の記事にしてみました。









動画時間は長いほど良い? 


その違いというのは、動画時間。


動画内容はどちらも、お互いのメンバー1人ずつとタッグを組んでのクイズ企画だったのですが、その動画の尺が、

  • フィッシャーズ:約1時間
  • QuizKnock:約15分
と、4倍程の差がありました。


一見すると、それだけの動画時間の差があればQuizKnockの動画は物足りなく感じるのだろうな、と思いそうですが、実際は全くそんなことはなく、QuizKnockの動画はとても面白く満足できました。

寧ろ、フィッシャーズ側の動画も面白かったのですが、途中で中弛みしてしまい、後半は所々飛ばして視聴するようになっていました。


つまり、動画時間がそのまま動画視聴の満足度に繋がらなかったということです。


この2つに何の違いがあるのか、比較してみました。




タイムライン比較 


まず私がやったのは、2つの動画の動画構成。特にタイムラインの比較です。

場面を大きく、OPトーク、企画説明、本編、EDトークの4つに分け、それぞれの時間を測ってみました。

その結果が以下の通り。


QuizKnock動画のタイムライン

  • OPトーク:30秒
  • 企画説明:1分30秒
  • 動画本編:12分
  • EDトーク:1分

フィッシャーズ動画のタイムライン

  • OPトーク:1分
  • 企画説明:10分
  • 動画本編:50分
  • EDトーク:3分

並べてはっきりするように、全ての場面でフィッシャーズ側の動画の方が長くなっています。
特に企画説明の場面では大きな差ができています。

なぜこれほどまでの差が付いたのでしょうか?



尺の差が生まれた理由 


2つの動画を視聴して感じたのは、QuizKnockの動画は殆ど脱線がなかったということです。

動画全体の殆どの時間が主題のクイズ企画であり、余分な雑談だったり動画の流れを途切れさせるような脱線が、恐らく編集段階でカットされていたと思われます。

一方、フィッシャーズの動画は雑談や脱線が多く、その掛け合いや流れも面白いのですが、主題の企画と内容が離れているため、それを観たいと思っていた私にはそれが中弛みしているように感じた原因だと思います。

特にそれがはっきりしているのが企画説明の場面で、QuizKnock側は冒頭に企画名が発表され、その後の企画説明がよどみなく進み、そしてチーム決めの場面を早送りで流すと、チーム発表の後はすぐさま本編へと場面が切り替わりました。

フィッシャーズ側では、最初に企画発表のための導入を兼ねた雑談が入った後に企画名が発表され、その後の説明も雑談やガヤが入りながら進み、チーム発表後にも少し雑談が入ってからようやく本編へと入りました。
因みにここまでの動画時間で、QuizKnock側の動画では企画のトップが決まって、2位決定戦がはじまるところでした。



ポイントは『要約力』 



QuizKnockが編集する動画はテンポがよく、しかしそれでいて1本で満足できる内容でした。

それができているのは、動画の編集者に『要約力』があるからだと私は思いました。

要約とは、「文章や話の要点や重要な部分を抜き出し、それらを簡潔にまとめること」ですが、それを行なう能力が非常に高いということ。

上の動画の中でも、収録時間53分の動画を4分の1の長さにすることを目標に、編集で不要な箇所を削っています。(実際に完成した動画の時間は約12分30秒)
その際、削ってはいけない動画の核となる部分は必ず残していますし、動画の流れを途切れさせないような面白い部分は残せるのならしっかり残しています。

QuizKnockの動画の面白さや満足感というのは、編集者の技術、特に必要不必要の見極めがとても上手い、断捨離ができることが要因だと言えるでしょう。



長くする編集=面白くする編集ではない 


フィッシャーズもそうですが、最近のユーチューバーの動画、特に昔からやってきたような老舗ユーチューバーの動画は近年長尺の傾向にあります。

これはユーチューバー心理として、収録した動画の面白い部分を、余すことなくファンにお届けしたいという気持ちがあると思います。
またファンに自分たちが得た体験を共有させたいために、Vlogのような臨場感がある編集にしたかったという気持ちもあるかもしれません。

もちろんこれらはファンにとっては嬉しい配慮だと感じるでしょう。
しかし、それが動画の面白さや満足感に結びつくとは限りません。
寧ろ、本来削るべき不要な部分も使ってしまうことで動画の内容が薄く感じる原因になってしまう恐れもあります。

特に動画の企画で勝負しているようなチャンネルにとっては、雑談や脱線した部分が企画そのものの邪魔になってしまい、面白さを下げる要因になりかねません。

個人的な意見ですが、動画が物足りなって色々足そうと考えるより、案外少し物足りないと思うぐらいの方が丁度いいのかもしれません。
結局のところは、動画全体のバランスなので、部分部分で観たら物足りなく感じても、全体通して観たら十分だったってこともあるでしょうし。



結論:視聴者からの提言 


そこで今のユーチューバーに私から提言したい。

動画を作る時、まずはどこを使うかよりも先に動画の尺から決めていきませんか?

それから収録した動画から必要なところ、厳選した面白いところを抜き出すことを考えると、これまでだったら入れていた場面は不要だったことに気づけるでしょう。

結局のところ視聴者は面白い動画が観て満足したいのであって、面白くない場面を入れてダラダラと長い動画を観たいわけではないんです。





追記1:サブチャンネルの活用 


サブチャンネルというと、多くの場合は本編のおまけや、メイン企画になりにくい雑談やミニ企画、メインチャンネルの色にそぐわない内容など、所謂B面的な扱いにされています。

QuizKnockはそのサブチャンネルの使い方も上手いと感じました。

例えば、編集でこれ以上は内容的に切るのが難しいという状態だけど、まだ少し長いから尺的にもう少し切らないといけないと感じる場合。

QuizKnockの場合、動画の流れ的に重要な部分がない問題をバッサリと切り、その部分をダイジェストにして、サブチャンネルでノーカット動画として載せるということが多いです。

つまり、QuizKnockは本来考えられるサブチャンネルの使い方とは別に、メインチャンネル動画の尺調整としても活用しているというわけです。

そしてサブチャンネルというのは総じてファン向けのコンテンツであり、未収録問題をファンサービスに用いるということを同時に満たしています。



追記2:個人的に考えるベストな動画尺 


ここで挙げるベストな時間というのは、私個人が考えるものであり、人によって当然考えが異なってきます。
あくまで「私はこう考えていますが、あなたはどうお考えですか?」という質問の前提として読んでください。

私が考える理想の動画尺は、15分〜20分。長くても30分。これがベストだと思います。

これはテレビ番組の30分番組が基準で、理想の尺はCMを除いた実質尺ぐらいになります。

これが視聴者がダレることなく観続けることができ、また編集側にとっても、テロップや装飾などを入れることを考えたら、最初から最後まで一定の質が保てる動画編集しやすい尺になるかと思います。

ただし、動画の内容やジャンル、視聴者層によって尺が変化します。
例えば旅動画やVlogなどの場合はできるだけノーカットで編集して長めの尺がベストになるでしょうし、勉強や講座などは雑談や話の脱線は極力削って短めの尺にするのが良いと思います。
他にもドキュメンタリー、ゲーム実況、トーク系、コントなどのお笑い、スポーツ系など、ジャンルによってベストとなる動画時間が変わります。

上で挙げた15分から20分というのは、ユーチューバーらしいバラエティ系の動画としてベストな時間ということにしてください。



追記3:最後に言い訳 



以前にもフィッシャーズに対する批判記事みたいなのを書きましたが、決してアンチではないことをここでもう一度言っておきます。

その記事の中でも言ったように、学生時代に男子達だけで遊んだりバカやっているような空気感が好きで、それがハマるきっかけになった一方、鬼ごっこ企画や貸切企画など一般人から逸脱しだした頃から心が離れだしました。

現在はチャンネル登録こそしていますが、新作の動画を観ることはあまりなくなり、観ても適当にスキップしたり、途中でやめたりする程度になりました。

今回の記事でQuizKnockと比較する相手がフィッシャーズだったのも、たまたまコラボ動画を挙げてて、それらの差異が最近私が感じていたユーチューバーに対する不満点を如実に表していたからであり、決してフィッシャーズを貶める気持ちはありません。同時にQuizKnockを必要以上に持ち上げようとする意図もありません。

元々長尺動画はそのユーチューバーにとって特別な企画で行なう勝負回だったわけで、それがやたらと増えて、まるで特番でもないのに特番のような内容をほぼ毎週放送するバラエティ番組みたいに、それが当たり前になってしまったことに苦言を呈しく思っていました。

そんなタイミングで、 たまたまテーマにしやすく比較しやすい動画がアップされ、それがたまたまQuizKnockとフィッシャーズだっただけです。

つまりフィッシャーズの部分は別にHIKAKINでもSEIKINでもヒカル社長でも、スカイピースでもおるたなチャンネルでも水溜りボンドでも良かったわけです。

最後に。やや厳しい内容になりますが記しておきます。
元々動画投稿を主戦場としてきたユーチューバー達に対し、動画投稿は数あるメディアコンテンツの1つに過ぎなかったQuizKnockの方が、編集能力において優っていると感じさせた点については、彼らにとって反省すべき課題と言えるでしょう。