娘が身請けして工面してくれた
大切な金を見ず知らずの者にくれてやった長兵衛

また何かあっても自殺せず地の果てまで
逃げていく中国人の話


こんな話に反応しちゃったのには
知人の身の上話を聞いてしまったからです。


知人の御主人は文七のように真面目一方で一寸頑張りすぎの人でした。


自分の為にという事ではなく、組織の活動の為
自転車操業でやりくりしている内
使途不明金が生じてそれを指摘されそうな事態になりました。


使途不明金と言っても、手弁当で頑張るボランティアの為
帰りの弁当代分くらいの僅かな金額です。


その金額は数万円くらいだったと知人から聞きました。


その使途不明金が発覚して表ざたになろうとした時
その知人は自分で金銭面を全て管理していたので
誰にも相談も出来ず
追い詰められて自殺をしてしまったのです。


もしご自分でその時抱え込まなかったのなら、
またその組織が縮小したり無くなる事を恐れず
またやり直せばよいと思ったなら、

こんな悲しい事は起こらなかったと思います。


文七は鼈甲問屋「近江屋」の奉公人で孤児でしたので
その世界しか知りません。


そこでしくじったらやり直すにもやり直すという事を考える
余裕すらなかったのです。
だから死ぬことしか浮かばなかった・・・・・


長兵衛や昔の中国人はいわばその日暮らしの人たちです。
文七と違い店という組織に保護されているわけでも
地位や将来の福祉や保証など失う権利など何も無いから
身軽に移動できるのです。


今の日本は人というものに生きているだけで権利が
生じると同時に義務も沢山背負わされています。


だから何かあれば、責任が生じ沢山波及する見えない影響を
考えなくてはならなくなります。


社会保障は病気や怪我の時本当にありがたい命の綱

ですし、年金は老後を支える要です。


逃げてこういう権利を放棄しちゃえば、将来自分を保障する

何ものも存在しなくなり苦しいことになります。

だから現代人はよくよくの事が無ければ逃げるリスクを

犯せません。逃げなければそこに有る問題は居座ったまま

存在します。


生きる為の権利が足かせになり、その状況を打破する為
生き難い状況を作り出しているとはなんとも
皮肉な事です。



長兵衛も言っています。

まず正直に話して見たらと、


道が無いとその時思いつめてしまうことが

一番危険なことなのです。


それでもだめなら逃げるなり自己破産するなり、

組織が解散したってまた作れます。

ねずみ講の奴らなど、

しぶといからそうして生き残っちゃっていますよ。

悪はけしからんけど、そのくらい太くずうずしく

世間を知って立ち回るすべも必要なんですね。