これはQuoraに書いた内容と同じなんですが、備忘録としてまとめました。
設問:レシプロエンジンの回転数の限界は、どのくらいでしょうか?の問に対して。
回答:
レシプロエンジンではピストンスピードの限界値が21m/sec程度とされているので
そこから計算すれば良いと思います。
一例として昔の愛機CBR250R(MC22)の場合で計算してみます。
諸元は45ps/15,000rpm、内径x行程(mm)は48.5x33.8
でレッドゾーンは19,000rpmでした。
21000mm/秒=ストローク(mm)×2×許容回転数(回転/分)÷60から
限界ピストンスピード=21000mm/sec
ストローク=33.8mm
許容回転数=限界ピストンスピード÷(ストローク✕2÷60)
=18639.053rpm
となり略レッドゾーンと符合します。
よって回答はストローク量に依存するだと思います。(バルブやその他機構が十分機能する前提で)
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設問:ロータリーエンジンのアペックスシール摺動速度(周速度)の限界値は何m/sec程度なのでしょうか?
回答:マツダは開発当初NSUから単ローター400ccのKKM400型エンジンを取り寄せて独自にテストエンジンを開発したようです。
試作第1号のシングルローターエンジン
アペックスシールは最大揺動角28°で、軸速度7000rpmの時に、当時のレシプロエンジンのピストン速度の2倍の37m/secだった。速い速度と振動でハウジング内の摩耗痕が問題になったようです。
その後、高強度カーボンで作られたアペックスシールの採用などで耐久性も向上したようですがその時の周速度などは調べても分かりませんでした。
なので今回は13Bロータリーエンジンをモデル化しアペックスシールの周速度を検証してみたいと思います。以下エンジン諸元です
- タイプ 水冷直列2ローター
- 排気量 654cc×2(1,308cc)
- 内径x行程 偏心15mm 創成半径105mm ハウジング幅80mm
- 圧縮比 9.4
- 最高出力 135PS/6,000rpm
- 最大トルク 19kgf·m/4,000rpm
- ハウジング長軸 240mm
- ハウジング短軸 180mm
- インナーギアー歯数 51
- ステーショナリーギア歯数 34
- エキセントリックシャフト偏心量(上図の破線の円の半径) 15mm
- ローター幅 80mm
- ローター1辺排気量 654cc
- ローター中心からローター頂点までの距離(創成半径) 105mm
これを元にハウジングとローターの形状を作成します。{ローターハウジングはエピトロコイド曲線[1](epi trochoid)}と言うようです。
Trochoid Revolutionと言うフリーソフトでDXFファイルとして作成しました。
ローター形状ですが、よくルーローの三角形だと言われていますがコレだとハウジング短軸とローターが干渉します。実際の図面では下記の寸法になっているようです。
ルーローの三角形の場合(ハウジング180mmに対し181mmとなり干渉する)
以上を元にモデリング作成しました。
上記のモデルからハウジング外周を計測しシール周速度を出します。
外周は690.31mmです
周速度計算結果です
- 周長=690.34mm
- 回転数=9000rpm
- 周速度=周長✕9000÷3÷60=34517mm/s
- =34.517m/s
レシプロエンジンのピストンスピード限界値と言われている21m/sと比べると
≒1.64倍のスピードになります。
一般的に、ロータリーエンジンの限界回転数は、ターボ車で9,250rpm、NAで11,000rpm程度といわれているようですが納得のシール速度です。
動画でエキセントリックシャフトとローターの回転数を検証します。
ちょっと判りにくいですが、3:1になっているかと思います。
https://hp.vector.co.jp/authors/VA041064/structure/rotary.html
https://car-me.jp/articles/3937