ベテラン弁護士、西中務さんが書いた

「運の良くなる生き方」という本を読みました。

 

弁護士として50年、延べ一万人の依頼者を見た西中さんが

運の良い人と運の悪い人とはどのような特徴があるのかということを

ご自分の体験から実例を取り上げて分かりやすく書いてあり、

とても参考になりました。

 

離婚、遺産相続、お金に纏わるトラブルなど

弁護士が関わる争い事はたくさんありますが、

「争わないほうが良い」というのが弁護士の基本なのだそうで、

①話し合いで解決

②裁判しても和解で解決

で、一番良いのが裁判を避けることなのだと

弁護士になったときに司法研修所の教官から教わったそうです。

 

西中さんもなるべく裁判にならないように

和解で解決するようにと依頼者に話を勧めるのだそうです。

本当は裁判の訴訟を担当することで多くの報酬が得られるのに、

お金にならない和解の道を提案するというのです。

 

それは依頼者が裁判の訴訟に勝って多額のお金を依頼者が得ても

その後、運が悪くなって不幸になる依頼者をたくさん見てきたそうです。

西中さん曰く、勝っても負けても恨みが残り、

「争うことで運が悪くなる。」

 

この本は第一章「運」第二章「罪」第三章「恩」

第四章「徳」第五章「言葉」第六章「善」に区切ってあり、

それぞれのテーマに纏わる依頼者との体験談で、

運の善し悪しの根本はその人の心のあり方次第だということ。

 

感謝、報恩、利他、慈悲、謙虚、人徳、天命という

7つの心に関することが運と密接に繋がっていると言われます。

 

僕がこの本の中で一番印象に残ったお話は、

第一章の最初に登場する遺産相続の揉め事のお話でした。

 

長男の奥さんが10年以上寝たきりになった高齢のお姑さんの介護を

ひとりでされていたそうです。

お姑さんはとても感謝して遺産の大半をその奥さんにあげるとの

遺言状を作成しましたが、他の実子たちがその遺言状に猛烈に反対した。

よくある話のようですが、実子の話を訊くと長男の奥さんは

事あるごとに実子の人たちに

「あんたらの代わりに私がやってあげてるんや、感謝してとうぜんやろ」

という恩着せがましい態度を長年取り続けていたと言う。

 

そして別の人は長男の奥さんのことを

「あれは嫌な女ですわ。お母さんの面倒を見たのも

財産欲しさだったに違いありません。」と西中さんに話したという。

 

寝たきりの義理の親を10年以上ひとりで

介護するというのは本当に大変なことです。

本来なら感謝されても当然です。

いくらかの報酬を期待するのも無理のないことです。

 

でも露骨に「やってあげている」「あんたたちは何もしていない」

という高慢な態度をとったために

実子達の感情のもつれから遺産相続に反対されることになってしまった。

 

人は「私は立派なことをした。大変に苦労した。」と思うことで

高慢になりやすいと西中さんは言われます。

 

大変なこと、立派なことには、”高慢の罠”がある

せっかくの努力や苦労が不幸につながらないようにしましょう、と書いてあります。

 

そしてここで大切になるのが謙虚な心。

「やっている」ではなく「させて頂いている」という謙虚さ。

 

言葉だけで「させて頂きます。」と言う言葉を使うのと

心が高慢に陥らないようにとの思いから

「させて頂きます。」と言うのでは

どちらが本当の謙虚さかは明らかだと思います。

 

運が良い、悪いも心のあり方次第。

仏教の法話で語り伝えられている因果応報、自業自得が

そのまま当てはまるお話です。

 

僕も高慢の罠に陥らないよう、自戒を新たにしました。