娘あっこから父ひろしへの手紙 12通目
お父さんへ
今日は、お昼に散歩をしたんだって、
暑かったでしょ。27度あったからね。
ガンが重症だと分かって、
40年近くやっていた報道カメラマンをあっけなく退職してしまったから、
会社で以前関わった人たちが、お父さんに会うための会を開こうって
言っているんだって。
お父さんは、そんなのに出たら、
もう死ななきゃいけない気分になるから、ってノリ気ではないのね。
私は、お父さんの立場じゃないから分からないんだけど、
会社の人たちは、会わないままだと後悔するから
お父さんのためじゃなく、自分たちのためにやるんだと思う。
でも、それは、みんな何かできないかって考えてくれた結果だと思うのね。
本当は、何かしたい、でもできない。
だったら集まって、昔の話をするかって。
会社の人の気持ちはよく分かる。
私も今、半分はお父さん、半分は自分のために看病しているから。
だって、後悔したくないんだもん。
「あのとき、もっと優しくしてあげればよかった」なんて。
もちろん、お父さんが負担になるようなことはしないけど、
それは、毎日様子を見ているから出来ることで、
状態を知らない人は、とっても気を使いながら、
でもピントが外れていたり、無理なことを言うのは仕方ないよ。
そうして、気に掛けてくれる人がいて、よかったって思おう。
そして、ちょっとだけでいいから顔を出してあげると喜ぶと思うよ。
今日も話せてよかった。