時をかける少女(1983年 公開)
監督 大林信彦     主演 原田知世



時をかける少女(1997年 公開)
監督 角川春樹    主演  中本奈奈



時をかける少女(2010年 公開)
監督 谷口正晃  主演 仲里依紗


ーあらすじ概要ー
・1983年版
理科室の掃除の途中、和子は実験室で
ラベンダーの香りで気を失い、それ以降、
時間を繰り返す事になってしまう。
同級生の深町に相談するが、子供の頃の
記憶と現実の相違から深町に疑問を
持ち始める。
深町に惹かれる和子だが、実は深町は
絶滅した植物を採取する為に未来から
来た人間だった。しかし、手違いで
帰れなくなった深町はこの時代に滞在する
為人々の記憶を操作し深町として生きていた
のだった。
未来では科学が発達し、時間を越えることや
超能力も使えるようになる。
全てを打ち明けた深町は、和子に帰る際に
記憶を消さなければならないことを告げる。
お互いに想いを寄せるが、深町は和子の
記憶を消す。
11年後、薬学を学ぶ和子の元に深町が
ふと現れるが記憶を消された和子は少し
気にしながらも思い出すことはなかった。

・1997年版はあらすじとしては
    ほぼ1983年版と同じ。
15年前、確かに何かあった。
祭りの中、思い出せない記憶を辿る。
1965年。
理科室でラベンダーの香りに気を失った
和子はタイムリープを繰り返す。
転校生の深町に想いを寄せる和子は
深町にタイムリープしている事を話し
深町が未来から来たことをきかされる。
無許可で過去に来た深町は関わった人間
から記憶を消さなければならない。
お互いに想いを寄せる深町と和子だが
和子は時間警察に記憶を消されてしまう。
15年後。
記憶を辿る和子の前に深町が現れ
二人は再会する。

・2010年版
2010年。和子は吾郎から一枚の写真を
渡される。和子の記憶に土曜日の実験室に
行かなければという記憶が蘇る。
その帰り道。和子は交通事故に会い
意識不明となる。
娘のあかりと吾郎は待合室で和子の意識が 
戻るのを願う中、テレビでは1974年に
起きた秋田行きのバスの転落事故に
ついての報道が流れていた。
乗員乗客が全員亡くなった悲惨な事故の
報道を見ていた吾郎は、本当はそのバスに
吾郎も乗るはずだったがチケットを忘れて
乗らずにずんだと昔を振り替えっていた。
目が覚めた和子は動けない自分の代わりに
娘のあかりに1972年の理科の実験室で
深町一夫に伝えて欲しい事があると頼む。
和子の開発したタイムリープが出来る
薬を使い過去へ飛んだあかりだが、
着いたのは1974年。
タイムリープ直後気を失ったあかりは
溝呂木良太という映画監督を目指す若者
の家に保護されていた。
良太は渋々あかりに付き合って一夫を
探すことに。あかりは過去の母と会うが
一夫については知らないという。
どうしても一夫の手掛かりを掴めない
あかりは、新聞を使って深町一夫を
理科室に呼び出す事に。
理科室に訪れた一夫から一夫は未来から
来た人間であり、あかりの新聞広告で
あかりの存在を知り、あかりとあかりに
関わった人達の記憶を消して、未来に
返す為に来たという。
あかりは母からの伝言「記憶は消えても
約束は覚えている」という言葉を一夫に
伝えた。
良太に会いたいあかりは記憶を消すことを
1日待って欲しいと伝える。
一方、良太は秋田の実家から父の危篤の
知らせが来る。良太はあかりに、帰ったら
完成した映画を一緒に見ることを約束し
実家に帰ることに。
良太が実家から帰ったらあかりは2010年に
戻っていてもう、1974年にはいない。
一夫との約束の為、良太と別れたあかりは
五郎に出くわす。バスのチケットを忘れて
取りに帰るという五郎の言葉で、病院の
待合室での吾郎が事故に会わずにずんだ
話を思い出したあかりは、秋田へと帰る
良太を助ける為に走り出すが、そこに
現れた一夫は、過去を変えてはいけないと
あかりを止める。
過ぎ去っていくバスのテールランプを
見ながらあかりの記憶は消され、
2010年へと戻っていた。
一夫は2010年の和子の元に赴き、
また和子の記憶を消して去っていく。
あかりのポケットには良太と撮った
映画のフィルムが。
記憶を無くしたあかりはその映像が
何なのかはわからないが、
ただ涙が出て止まらなかった。





ー感想ー
私の世代的には「時かけ」と言えば
1983年版が「時をかける少女」です。
当時の大ヒット作で原田知世さん歌う
主題歌もヒットしました。
丁度、中学生だった私には年齢的にも
和子に近い年齢なので憧れたものです。
レコードも買いました。
確か、ジャケットの隅に
「擦るとラベンダーの香りがします。」
と匂い付きのジャケットが珍しく
クンクンしていました。
40年近く前の映画ですので今見ると
特撮部分は荒いですし、古さは感じますが
過去と現在の切り替えも分かりやすく、
見やすい作品でした。
三作品の中で一番原作に近い内容かと
思います。

1997年版はモノクロ作品で
「青い山脈」や「陽のあたる坂道」など
1950年代の日本映画の雰囲気でした。
これをどう受け取るかで評価は別れる
作品かと思います。
現代から見た昭和40年(1965年)を描く
のではなく、1965年のリアルタイムを
描こうとしたように感じます。
まるで当時の映画のデジタルリマスター版
のような作風は角川春樹さんのセンスを
感じました。
SF部分より恋愛ドラマとしての部分に
焦点を当てた内容で「時をかける」感は
あまり無かった気がします。
恋愛部分を重くした結果、吾郎の扱いが
ちょっと可哀想でした。

2010年版はまさかの後日談。
主人公は和子の娘というのが驚きでした。
母親からのミッションは1972年の理科室。
しかし到着は1974年。最初はなんでだろう
と思いましたが、おそらく、ニュースの
影響で72年と74年を間違えたかな。
こうなると、原作の姿はないので原案は
「時かけ」の派生作品といった感じです。
内容的には面白い作品でしたが、
残念なことは原作もしくは過去2作品等の
和子と深町くんの話を知らないと
事故に会った和子が取り乱すほど深町くんに
会いたいと思う気持ちや状況が
わかりにくいのでは?と感じました。
また、ハッピーエンドが好きな私としては
ラストが切な過ぎて残念でした。
和子は結果、深町くんに会うことが
出来ましたが、変わりに、あかりは良太を
助けることが出来ず、ただ失った記憶の
中にある「根拠のない切なさ」に
フィルムを見て涙を流す姿はあまりにも
残酷に思えました。

3作品をまとめて見て
どれもそれぞれの監督の世界観で創作
された部分が面白く、同じ原作を使って
全く違う作風になっているのは流石だと
思います。
モノクロ画面の使い方も大林信彦監督と
角川春樹さんでは全く違う使い方ですし
それぞれヒロインの描きかた、深町くん
の性格も違います。
同じ原作を使っているので比べられがちな
3作品ですが、こうやって見てみると
映画ってそれぞれの個性があって
比べられるものではないなぁと
つくづく思いました。


ただし、個人主観の好き嫌いはまた、
別の話ですが。



〈別記〉
2010年版は比較的新しいですが、
流石に1983年版は皆さん若いですし
体操服が女子はブルマです。
今ではあり得ませんが私もブルマ世代
なので、そういうどうでもいい所を
ついつい見てしまいます。
当たり前ですが、岸部一徳さん、
尾見としのりさんも若い。
1997年版の早見優さんも若いですね。
ちなみに和子役の中本奈奈さんは
篠原佐恵子(アギト)であかつき号事件の
生き残りでした。
少し印象の薄い女優さんですが、
「時かけ」でのモノクロの画像と
彼女の雰囲気はとても合っていました。

古い作品は俳優さんのその時代の
その時にしか出来ない役が見れるのも
面白いですし、リアルで自分の青春の
思い出と共にある作品もあるので
たまに見ると作品の内容に関係なく
ちょっと切ないセンチメンタル気分に
なったりするのがいいなかぁ。