2003年 公開

ーストーリー概要ー
高校生の櫛森秀一は母、妹と三人で
慎ましく暮らしていた。
そこへ10年前に離婚し家を出ていった
はずの養父、曾根が帰って来た。
酒を飲み、傍若無人に振る舞う曾根を
家から追い出す為、弁護士や、母へ
相談するが、妹の親権が曾根にあるため
強く言えない状態。そんな中、曾根は
妹に手をあげ、母にも手を出していた。
我慢出来ない秀一は入念な計画を立て
曾根を殺害。病死として処理される。
しかし、曾根の殺害を知った同級生の
石岡拓也からゆすられ、同級生をも
殺害してしまう。
立て続けに起こった事件を不振に思った
警察官の山本は秀一を追い詰めていく。
山本は、石岡の自宅から回収された、
曾根を殺害した時の証拠を元に秀一に
殺害を認めさせるが、秀一が友人に別れ
を伝えたいという言葉に一旦帰す。
秀一は友人に合い、そのままロードバイク
でトラックの前へと飛び出していった。



ー感想ー
監督は蜷川幸雄さん。
十数年ぶりに見返しました。
当日見た時は中村梅雀さん演じる山本が
なんだか癪に触って、正直
「バレなきゃいいな。」と思って
見ていたのでなんだかなぁ。
と、とても切ない感じになったのを覚えて
います。
久しぶりに見てみると、以前見た時とは
また、違う感覚で見ることが出来ました。
秀一の行き場のない憤りとは別の、どこか
「殺人」に対するサイコな部分も見え隠れ
する絶妙な作品だったと感じました。
妹から曾根が癌で長くないと聞いた時の
秀一の絶望感。
でも、一方、母から妹の遥香が15歳に
なり、養子縁組みが出来るようになれば
曾根に出ていってもらうと言った
期間を待てない秀一が、果たして曾根が
死ぬまで待てたかは微妙です。
何より是非がつけがたいのは、秀一自身
単純に家族を守る為だけに「完全犯罪」を
考えたのか?というところ。
「殺人」に対する恐怖は感じているのに
罪悪感や悲しみを感じているようには
見えませんでした。。
曾根を殺すまでに用意する秀一は、ただ
楽しんでいるようにさえ見え、石岡を
殺した時には、さも当然といった様子
でした。
時間が解決してくれる事を知らない少年の
刹那的な衝動や、複雑な感情がとても
良かったと思います。
ラストは秀一がトラックにロードバイクで
飛び込んで行く描写で終わります。
ラストについては、ちょっとありきたり
ですが秀一として捕まるよりは秀一らしい
終わり方だったのかと思います。


〈別記〉
二宮和也さん。当たり前ですが若いです。


今あらためて見て、そのポテンシャルの
高さを感じます。
秀一の学校での顔、別の顔。
複雑な感情がとても良かったと思います。
前に見たときはそこまで見れていなかった
事が今回よくわかりました。

松浦亜弥さん。引退されたのかな?


出演されてる映画が少ないので
貴重な作品の一つです。

中村梅雀さん。
と、言えば「赤かぶ検事シリーズ」ですが
大好きな俳優さんです。というか、
歌舞伎役者さんなんですけど。
私が初めて中村さんを「いいなぁ」と
思って見た作品が「青の炎」です。
時代劇等にもたくさん出演されてますが
柔和な雰囲気の中にあるどこか一筋縄で
いかない感じが素敵です。
決して男前とは言いませんが、
ご高齢ながら本質的に「カッコいい」が
滲み出ている方かと思います。