2011年公開

ーあらすじー
1970年代。
東大、安田講堂事件を見た沢田は
東都新聞へ就職する。

衰退する全共闘の活動の中、大学生の片桐
は、過激派の活動家、梅山と名乗り
沢田と出会う。沢田は梅山が本物の
活動家なのか真意を計れぬまま梅山に
心酔していく。
一方、梅山(片桐)は沢田を使って、
残り少ない全共闘の大物である前園と
接触する。
梅山(片桐)は4月に決起すると、マスコミ
を使って吹聴するも活動家(過激派)としての
行動を起こすことはなかった。
目標をもたず日々を過ごし、何もして
いない現状を抜け出すため、行動を起こす
ことに焦り始める。
そんな梅山(片桐)の元に清原という男から
朝霞駐屯地を襲撃し武器を奪うという
計画が持ち込まれる。
金を用意出来ない梅山(片桐)は全共闘の
カリスマ的な活動家である前園に相談
するが「自分が何者なのか見せてみろ」と
一蹴される。
梅山(片桐)は沢田を使い、金を巻き上げる
為に清原が梅山を騙していることを知る。
しかし、行動を起こすことに焦る
梅山(片桐)は、清原をも巻き込み、
朝霞駐屯地襲撃を実行。
自衛隊員1人を殺害し、「赤邦軍」の
ビラとメットを残して逃走。
武器を奪取することは出来なかった。
梅山(片桐)と繋がりのある沢田はこの
事件をスクープとして取材するが、
東都新聞は梅山(片桐)を活動家ではなく
自衛官を殺した殺人犯と判断。
梅山(片桐)を思想犯と主張する沢田だが
その一方で、彼の掲げる「思想」とは
「目的」とは何なのかが分からないまま
梅山(片桐)を庇うべきか悩んでいた。
結果、警察の捜査で梅山(片桐)は逮捕。
梅山(片桐)の口から沢田の名前も上がり
沢田も逮捕され執行猶予付きの懲役刑と
なった。
その後、裁判で片桐は懲役の実刑15年と
なり、自衛官殺害については赤邦軍内部
で責任の擦り合いとなった。

ー感想ー
最近お手軽なホラーやアクションばかり
見ていたので、久しぶりに社会派っぽい
作品を見てみました。

見る人がかなり限定される作品かと
思います。
子供ながらにうっすら覚えているのは
あさま山荘事件や、日本赤軍の
ダッカ日航機ハイジャック事件くらい。
三島由紀夫事件や、安田講堂の話しは
母から少し聞いていた程度です。
全共闘の闘争が分かりにくいのは
各大学の目指す所や、要求が少しずつ
違う上に、同じ大学内でもまた、思想や
意見は分かれ、そこに過激派やの
穏便派だの色々あって、まとめて全共闘。
って感じなので、当時の時代背景や
思想について知らないと理解しがたい
退屈な映画かもしれません。

それを踏まえて、内容は良かったと
思います。
時代背景や事件を描いた社会派と
言うよりは、ヒューマンドラマとして
とても良くできていると感じました。
ジャーナリストとして1人の活動家を
追って行きたいと思う沢田。
自称、活動家で活動家に憧れる梅山(片桐)。
YouTubeで当時の三島由紀夫氏の討論会の
映像があるので見るとよくわかるのですが
梅山(片桐)はこういう感じに憧れたのかなぁ。
と思います。
梅山(片桐)自身も自分が本当の意味での
思想家でないことは分かっていたはず。
だからこそ、赤衛軍として報道される
事で、活動家というレーベルと居場所が
欲しかったのかと。
また、憧れるでもある前園に
「何者か見せてみろ」と言われたことは
彼にとっては「しっかりやれよ」
くらいの叱咤激励に聞こえたのかも
しれません。
認められたいという承認欲求が歪んだ
結果のように感じます。
悲劇なのはそれが為に殺された自衛官と
彼の暴走を結果的に支えることになった
沢田だったと思います。
朝霞自衛官殺人事件は1971年に起きた
実際の事件と考えると「若気のいたり」
というには大きな代償だったと思います。
安田講堂事件を見て、ジャーナリストに
なりたいと思った時点から、沢田の中
にも、梅山(片桐)に似た感情があったの
ではないでしょうか。
「自分に出来ること」「何故、自分は
安全な場所にいて静観していたのか」
そいう、着地点の見えない気持ちが
梅山と沢田の共感を生んだのではないかと
思うのです。
沢田にとってこの事件は何だったのか。
ラスト。
たまたま入った赤提灯で昔は楽しかった
と話す旧友は、当時のことは全て
想い出にして、小さいながらも幸せに
前に進んでいる。
一方、沢田は安田講堂事件からまだ、
前に進めていない。
その現状を思った時に沢田の胸に去来
する感情は、沢田の涙が物語っています。

後味のよい作品ではありませんが
心に残る作品だったと思います。

それと、残念なのは最後の梅山(片桐)の
裁判、後日談については全て文字での
説明でした。
ちょっと読みづらい長文だったので
ここは沢田の主観を入れたNAにして
欲しかったかも。

それと、私はあまり察しが良くないので
最後の沢田の状態が、10年後なのか、
何年くらい後なのかわかりませんでした。


〈別記〉
妻夫木聡さん。
妖怪ですね。今「危険なビーナス」を
見ていますが10年近く前の作品なのに
ビジュアルがほぼ変わりません。
どうやって現状維持しているのか
教えて欲しい女性は多いかと思います。
また、泣きなからのラストと言えば
「奥田民生に~」のラストも泣きで
終わりましたが、それとはまた違った感じ
が凄い。
同じ「泣く」でもキャラが違うと
全く違った泣きになるんですね。
妻夫木聡さん、伊達に出演本数多いわけ
ではないことがわかります。
流石です。

松山ケンイチさん。
梅山はある意味、狡猾なぺてん師です。
こういう、どこか病んでる感じの役の
方がハマってる気がします。
DethNoteのエルのイメージが強いの
ですが、GANTZやカムイ外伝のような
二枚目的な感じよりも、癖のある役の
方が好感がもてます。
デトロイトメタルシティのコミカルさ
も結構好きでしたし。

〈追記2〉
昭和感スゲー。
事務所がタバコで煙いのなんて、
昔は当たり前でしたもの。
市役所のデスクでさえ灰皿ありましたから。
テレビも電話もソファーもラジオも
もう、懐かしいてんこ盛り。
映像の荒らさもどこかノスタルジックで
混沌とした雰囲気が出ていて、好きでした。