1999年公開。

先日、衝撃のニュースが。
志村けんさん逝去。
新型コロナウィルスが蔓延する中での
大きなニュースとなりました。
先日、山田洋次監督の『キネマの神様』で
初の主演の話もあり、高齢ながら、まだまだ
活躍出来る方だけに残念でなりません。

そこで旧作のコント作品を見ようかとも
思ったのですが、少ない映像出演作品から
今日は『鉄道員』を見ました。

ストーリーは
廃線前の「ほろまい駅」。
長年、駅長を勤めてきた佐藤乙松。
定年退職を目の前にした正月の駅で雪の積
もるホームに現れた少女は駅に人形を残して
姿を消した。寂れた炭鉱の町で子供はめずら
しい。正月に里帰りした住職の孫らしい。
娘を亡くし妻を亡くし、「鉄道員」として
生きてきた乙松は少女の姿や忘れ物の人形を
見ながら、それまでの人生を振り返る。
その日の夜「妹が人形を無くした」と少女の
姉が駅を訪れるが、少女は取りに来たはず
の人形を忘れて帰ってしまう。
そして翌日。その姉と名乗る高校生らしい
女性が訪れる。その姿に亡くした妻の
面影が重なる。
そこで、少女の忘れた人形が自分がかつて
亡くなった娘に購入した人形であることを
思い出す。
日々訪れていた女の子は亡くなった娘の
成長した姿だった。
翌朝、始発の入ってくる列車のホーム。
雪に埋もれる乙松の姿があった。

もう、さすが「高倉健さん」。
見ごたえのある作品です。降旗康男監督の
力作。降旗監督というと、泥臭い任侠モノ
や、商業的見ごたえのある映像の中に
気持ちをえぐるような人間関係や昭和の男
を描いた作品が多く、これもそういう意味
では「らしい」作品でした。
JRがまだ国鉄時代の話なので、戦後から
バブル前くらいの話。50才前後から、それ
以上の人なら懐かしいような何とも言えない
雰囲気に浸れるかと思います。
映像の暗さや重さが昭和感満載です。

で、ラストはそれぞれ捉え方かもしれません
が、私は泣けませんでした。
冒頭から話にちょくちょく出てくる「雪女」
結局、娘はその雪女だったのかな。
娘に対しても、嫁に対しても「後ろめたい」
「後悔」「贖罪」をずっと持っていたんだ
と思います。
定年を前に鉄道員として生きてきて、彼に
残ったのは何だったのでしょう。
鉄道員のまま亡くなった乙松ですが、娘が
連れていったのでしょうか。それとも、冒頭
からの話自体が、引き際(死に際)に見た
乙松の夢だったのか。
怖くもあり、せつなくもなる不思議な映画
でした。



〈別記〉


志村けんさんは、福岡から来た炭鉱夫の
役でした、20年前の作品ですが、若い
ですね。
コントなどで培ったお芝居は映画の世界でも
しっかり活躍出来るスキルなんですね。
コントのコミカルさを封印した酔っぱらい
は、ちょっと新鮮です。

私の世代は「8時だよ、全員集合!」を見
て毎週土曜日を過ごした世代。
そして、うちの息子も古い映像をCSで見
たり、バカ殿様を見て楽しませてもらって
いました。
いつまでも元気だと、何となく思っていた
だけに今回の急逝のニュースは衝撃でした。
昨今、そこそこ大御所化したお笑いの方が
妙な大御所感で若手をイジッっている中
大御所と言われながらも圧力を感じない
人をバカにしない本当の面白さがとても
優しくて好きでした。
昭和から平成、令和まで「笑い」に生きた、
最高のエンターティナーの死に、お悔やみ
を申し上げます。