☆ 岡山 野田屋町にある Cafe&Bar AVANTY(アヴァンティー)
☆ 常連客のあきやんが、Barを舞台とした人間模様を描きます
☆ フィクション?ノン・フィクション? それはAVANTYで確かめてください
第13夜 フレッシュ・ブランデー・バック(その7)
市街地から外れた国道は、車の通りは多くはないが、その分、結構な勢いで走り抜けていく。
しかも、国道脇の歩道は、夏の日差しを受けてすくすくとのびた草が、おおきくはみ出してきていた。
小さな凸凹もハンドルを取られるのには十分な障害物だった。
昼間なら回避できるこれらの障害物も、街灯のない夜の歩道では突然目の前に現れてきてかわしきれない。
歩道をあきらめて、車道の左端を走ることにした。
路面を照らすのは、LEDの白いライト。
灯りの届く範囲を流れる路面の状態を見つめ続けるのは、神経を使う。
車道の左端は、思いのほか凸凹している。
車の勢いで波打っていることもよくある。
うかつにその波に乗り上げると、ハンドルをとられて、思わぬ方向に飛び出してしまう。
路面の砂も、斜めに力のかかった状態で乗り上げると、簡単に横滑りする。
ほかにも、水たまりや、路上に捨てられたゴミなど、障害物にはいとまない。
それらをかわすのに、路面のわずかな変化を見つけるのには、昼間よりもよほど神経をすり減らすのだった。
あきやんが先行し、みおんが後ろからついてくる。
2台のクロスバイクは真っ暗な国道を走り抜けていく。
(つづく)
第12夜 フレッシュ・ブランデー・バック(その6)
ぱんたん一行は、道の駅を出発して岡山市内に向けて歩き出していた。
出発したときに比べたら、ぼろぼろのよぼよぼだったが、元気はよかった。
それはやはり、仲間がいる強み。
太陽の愚痴をいい、足の痛みをかばい合いながら。
ささいなことで笑い合った。
疲れからテンションが高かった。
太陽が傾いてくると、少しずつ歩きやすくなってきた。
暑いと行っても残暑、日が傾き始めると、夕日は一気に落ちてきた。
たちまち迫る夕闇。
歩行部のメンバーも車もシルエットになっていく。
そこに進行方向から、白いライトが近づいてきた。
自転車で国道53号線を北上してきたあきやんだった。
夕日が山に隠れる直前、自転車部と歩行部はとうとう合流を果たした。
そこから一緒に歩いて、まだまだ遥か彼方の岡山市内を目指す一行。
すっかり日が落ちてしまい、自転車のちいさなLEDライトだけで歩く。
1時間以上歩いて、ようやくコンビニに到着した。
そこで、テーピングを張り直して、栄養補給、飲み物補給。
そこへ掲示板をみていた友人たちが車で応援に駆けつけてくれた。
差し入れをしてくれて、励ましの言葉をかけてくれる。
ぱんたん |
まさか来てくれるとは思わなかったから、嬉しかったな。 |
あきやん |
結局、何人くらいきてくれたんだっけ?
|
ぱんたん |
4人かな。 仲間ってありがたいな。
|
歩行部の一人が、足の痛みがひどくて、サポートの車に乗った。
さらに一人が、翌日の仕事のために離脱していった。
増えるメンバーもあれば、減るメンバーもある。
がっちりテーピングを直して、気合いをいれなおして、ふたたび歩き始めた。
コンビニを出発してしばらく行ったところで、もう一人の自転車部が合流した。
遅れて岡山市内を出発してきたみおんだった。
新しいメンバーを迎えて、みんなのテンションがあがる。
みおんもまた、自転車を押して歩行部に加わった。
みおん |
ふう、やっと追いついたわ。 |
自転車のライトが二つと、コンビニで購入した懐中電灯の灯り。
国道は街灯のないところも多くあり、懐中電灯がないと危なくてしかたない。
足を痛めているメンバーはどうしても速度が上がらない。
それにあわせて一行はゆっくり歩く。
時間が過ぎていき、すでに歩き始めて12時間が経過していた。
2時間歩いて、ようやく次の休憩所に到着。
目の前のラーメン屋の灯りが消えて、空腹に苦しむぱんたん。
もう足も限界を超えていたのに、それでも歩き続けようとするのは、意地だった。
なんとかたどり着く所まで行きたい。
元気な仲間がいるうちは歩き続けたい。
助け合ってきたからこそ、脱落するのは嫌だった。
ぱんたん |
でも、このときは足が痛いことよりも、おなかすいている方がつらかったんだ。 |
ここでいったん自転車部は、次の休憩所まで一気に駆け抜けることにした。
(つづく)
第11夜 フレッシュ・ブランデー・バック(その5)
このとき、あきやんは実際には歩行部がどの位置にいるかは知らなかった。
歩き始めた時間からして、おそらく合流するのは全工程の真ん中あたりだろうとの見積もりはあった。
自転車が遅ければ、もっと南に近づくし、歩行部が遅ければ、ずっと北で遭遇することになる。
あきやん |
でも、思った以上に残暑が厳しかったな。 |
岡山市街を抜けて、津山へ向かう最初の難関は、辛香峠(からこうとうげ)だった。
車で走れば、なんてことはない峠。
だけど、自転車で登るとなると、相当厳しい。
あきやんは、まだ、西に傾ききらない太陽をにらみつけがら、歯を食いしばってペダルを踏み続けた。
自転車はいったん止まってしまうと、ふたたび踏み出すのに勢いがいる。
なんとか足を着かないよう、ふらふらしながらも必死で踏み込む。
汗の道しるべを路上に残して、ようやく峠の頂上にたどり着いた。
峠にある自動販売機で冷たいお茶を買う。
息が整うまでに、ペットボトルを一本飲み干してしまった。
峠の下り坂は快適そのものだった。
一番重いギアにして漕ぎだせば、あっというまに風になる。
調子に乗って、どんどんペダルを漕いでいく。
汗が風で飛んでいって気持ちいい。
ふと、自転車につけているスピードメーターをみると、時速40kmを超えていた。
わずか4cmほどの細いスポーツタイヤは、小石一つで飛び跳ねる。
恐怖を快感に感じながら、峠を一気に駆け下りた。
国道53号線は、北に向かって上りが続いていた。
それでも、峠越えのきつさにくらべたら比べ物にならないほどの楽な傾斜で、自転車は順調に北を目指した。
(つづく)
第10夜 フレッシュ・ブランデー・バック(その4)
そのころあきやんは、ネットに書き込まれる歩行部の動向をリアルタイムで見ていた。
津山市脱出、昼食、ブロイラーと、進行状況がつぎつぎと写真入りで書き込まれていく。
読んでいる友人たちが、次々とコメントを寄せていた。
あきやんも午前中の用事が済んで、コメントを書き込んでいた。
昼下がりの太陽はまだ空高く、まだまだ、気温は高い。
あきやん
ぱんたんのネットへの書き込みが、午後からすっかり少なくなってね。
これは歩行部もずいぶんと苦戦しているなあって思ったんだよ。
それで応援に行くことにしたんだ。
あきやん |
ぱんたんのネットへの書き込みが、午後からすっかり少なくなってね。 |
ぱんたん |
だけど、まさか自転車で来るとは思わなかったよ。 |
ダイスケ |
え? あきやんさんは、自転車で行ったんですか? |
あきやん |
車にしようか自転車にしようか、考えたんだけどね。
|
まだ太陽が高い中、あきやんはキャップとグローブを身につけ、タオル、着替えをバックパックに詰めて、自転車にまたがり国道53号線を北上しはじめた。
歩行部が歩いているのとは逆に、岡山市内から津山を目指して。
(つづく)
第9夜 フレッシュ・ブランデー・バック(その3)
津山から岡山まで「歩いてみよう」とはじめた歩行部。
あわや交通事故という危機を回避し、命がけで自分達の限界に挑む!
----------
かめっち食堂でゆっくりと休憩をとった歩行部一行。
ここで、メンバーが一人合流した。
まだまだ暑い時間、一緒に歩こうという有志があつまるなんて。
卵かけご飯を堪能しておなか一杯になった一行は、再び歩き始めた。
しかし、夏の太陽は確実に一行の体力を奪っていく。
午後の一番暑い時間。
さすがと元気一杯だった面々も、おとなしくなってしまった。
うつむき、もくもくと歩く。
国道沿いのコンビニがあるたびに水と氷の補給。
このときほどコンビニのありがたさを痛感したことはなかった。
それにしても、ほぼ真夏の太陽の下、車の多い国道沿いを歩くのはかなりの苦行だった。
なんでこんなことやってるんだろう?
誰かやめようって言わないかな。
いろんな思いが沸き立ちつつも、次の目標地、中島ブロイラー目指して進んだ。
中島ブロイラーは、その名のとおり鶏肉がとても旨い肉屋だった。
その場で食べられる店も併設されていて、そこで串焼きを食べる計画だった。
だけども、お店についてみると、みんな疲労でそれどころではなかった。
ぱんたん |
もう、疲れすぎてて。 |
一行は串焼きを食べることなく、その場で休憩した。
日差しはピークを過ぎていたが、気温はまだまだ下がる気配はなかった。
昼食の予定外の待ち時間や、休憩の多さで、当初計画していたタイムスケジュールをかなり押していた。
このままでは、ゴールのAVANTYにたどり着かない。
5人は次の目的地、道の駅 久米南を目指す。
道の駅 久米南は、ガンダムを模した大型のロボットの模型が飾られていることで知られている。
もともとは、個人が趣味で自宅近くに作ったものだという。
それが新聞やテレビにも取り上げられ、見物客も出て有名になったものだから、その後、道の駅に移設され、展示されることになった。
今では、この道の駅のシンボルともいえる存在になっていた。
道の駅に向かう途中で、サポートカーを出してくれた友人と合流できた。
夜勤明けにもかかわらず、歩行部をサポートするために車で参加してくれたのだ。
サポートと応援は疲れた身体に、本当に心強い援軍だった。
さっそく、サポートにお使いを頼む。
・テーピング
・はさみ
・コールドスプレー
・酸素スプレー
朝から歩き始めて6時間超。
足の痛みが尋常でなくなってきた。
道の駅には、休憩所があって、その奥に座敷の休憩室があった。
一行は、喜び勇んで駆け上り、ようやく靴から開放された足を伸ばしてくつろいだ。
いったんゆっくり座り込んでしまうと、たちまち根が生えてしまった。
なかなか腰があがらない。
友人に買ってきて貰ったテープで足を固定する。
指、ふくらはぎ、ひざ。
痛む箇所はみなそれぞれ。
メンバーの中にはテーピングに心得のある人もいて、心強かった。
ぱんたん |
俺の脚なんて、テープでがちがちになって。 両脇を抱えてもらって、介護してもらわないと立ち上がれないんだもん。 |
準備を整えた一行が道の駅をようやく出発した。
午後の太陽は、西に傾き始め、少しだけ、その灼熱の手を緩めてくれはじめていた。
物語は、その4へ続く
(つづく)





