僕の近所には、
有名人が住んでいました。
 

僕が、
ちょうど小学4年の頃、
必ず地域の盆踊りに
現れる。
 
 
 

ミスターボン
です。
 
 

ミスター
盆踊りの略称です。
 
 
 
 

当時、
僕が10歳で、
 

ミスターボンは、
当時の見た目から
すると30歳くらい
だったと思います。
 
 
 
 
 
 
僕らの地域の小学生
のあいだでは、

ミスターボンは超有名人で、
 
 
 
 
盆踊りが始まると、
どこからともなく
現れて、
 
キレっキレで、全力で
踊りだすんです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その話だけ聞くと、
ミスターボンは、
明るい陽気な人なんかな。
 

と思う人も多いと
思いますが、
 
 
 
 
 
 
実は、
ミスターボンと、
喋った友人が、
誰もいないんです。
 
 
 

無口に、
何も喋らず、
 

ただ、盆踊りを
キレっキレで、
ただやみくもに
踊り続け、
 
 

盆踊りが終わると、
 

いつのまにか、
闇に消えていくんです。
 
 
 
 
 
 
 

そんなある日、

ある事件が起きました。
 
 
夕方7時前、
暗くなってきた夏の日、
 
 
 
 
 
門限が、
夕方6時半だった、
小学4年の僕は、
 
 
 
 
 
お母さんに、
怒られるのを、
恐れて、速足で
家路を急いでいました。
 
 
 
 

そんなとき、
僕の後ろから、
誰かが僕を
呼ぶ声が聞こえました。
 
「どこ行くん?」
 
僕が、
後ろを振り返ると、
そこに立っていたのは、
 
 

ミスターボン
でした。。
 
 
 
ミスターボンの声を
初めて聞いた驚きと、
門限過ぎてる焦り。。。
 
 
 
 
言葉が出ない僕に、

ミスターボン
「一緒に遊ぼ。」
 
 
 
 

。。。。
 
 

状況が把握できず、
混乱した僕は、
「お母さんに怒られる
から、帰る!」
 
と言って、
 

ミスターボンを背に
全速力で走って家に
帰りました。
 
 
 
 
そして、
ドキドキも
おさまらないまま
 
 
 

次の日、
学校で友達に、

「なあ、昨日、
ミスターボンに
一緒に遊ぼうって
誘われてん。。!」
 
って朝一友達たちに
言うと、
 
 
 
 
 

みんな
「絶対うそや」
 
「ミスターボン
喋ってんの見たこと
ないもん」
 
 
 

「ほんまやって!」
と何回話しても、
誰も信じてくれず、
 
 
 

お母さんにも、
 

「お母さん、
ミスターボン知ってる?」
 
「ミスターボンに一緒に
遊ぼうって言われてん!!」
 
 
 

お母さん
「ミスターボンって
なんやの?はよ宿題しいや」
 
と言って、
聞く耳ももってくれず、
 
 
 
 
誰も信じてくれず、
ずっと、この話を、
いままで、
胸にしまっていました。
 

今考えてみると、、
 
 

もし、あの時、
ミスターボンと
一緒に遊んだら、
 
 
 
僕は、
どうなっていたんだろう?

。。。
 
 
 
もしかしたら、
 
僕自身が、
いま、地域の盆踊りで、
キレっキレで踊っている
可能性だってあったかも
しれません。
 
 
 
 
 
あれ以来、みなくなった
ミスターボンは、
 
 
 
僕に、
 
いったい
何を伝えようと、
してたんだろう。。