ポツンと一軒家に“住む”って、どういうこと?
田舎で空き家を中心とした不動産屋をやっています。今日は、田舎の不動産屋によくある話のひとつ、「ポツンと一軒家」。移住希望の方から空き家の相談をいただくことがあります。なかでもとても人気なのが「ポツンと一軒家」。テレビ番組の影響もあってか、「ああいう暮らし、憧れてて…」という声を本当によく聞きます。「ちっちゃな家でいいんです。ちょっとした家庭菜園くらいのスペースがあって、車が2~3台停められれば。」その前提には 水は蛇口をひねれば出るのが当たり前 トイレの後は流すだけ 敷地まで至る道はもちろん誰かが整備してくれている。草刈りをするのは自分の敷地だけ 畑で作物を育てれば、食べることができるがあるように思います。朝、鳥の鳴き声で目覚めて、絶景の見える縁側で朝ごはん。畑で採れたての野菜を使って、自分で育てた鶏の卵でオムレツを作る。……たしかに、それは素敵なイメージ。でも、現実は?[data-toc]{background:#ffffffd9;border:1px solid var(--color-border-medium-emphasis,#08121a4d);border-radius:8px;display:flex;flex-direction:column;gap:8px;padding:12px 16px}[data-toc] h2,[data-toc] ol,[data-toc] p{margin:0}[data-toc] .toc-header{align-items:center;display:flex;font-weight:700;gap:12px}:is([data-toc] .toc-header) h2{color:var(--color-text-medium-emphasis,#08121abd);font-size:.875em}[data-toc] .toc-empty-message{color:var(--color-text-low-emphasis,#08121a9c);font-weight:400}:is([data-toc] .toc-empty-message) p{font-size:.75em}[data-toc] ol{list-style:none;padding:0}:is([data-toc] ol) .last.collapse a{border:none}:is([data-toc] ol) a{border-bottom:1px solid var(--color-surface-tertiary,#08121a14);display:block;font-size:.75em;padding:6px 0;-webkit-text-decoration:none;text-decoration:none}[data-toc] .h4,[data-toc] a{color:var(--color-text-medium-emphasis,#08121abd)}[data-toc] .h2{font-weight:700}[data-toc] .h3{font-weight:400;margin-left:8px}[data-toc] .h4{font-weight:400;margin-left:16px}[data-toc] [role=button][aria-expanded]{align-items:center;display:flex;font-size:.75em;font-weight:700;gap:4px;justify-content:center;padding:4px 0;text-align:center;-webkit-text-decoration:none;text-decoration:none}[data-toc] [role=button][aria-expanded=true]:after{mask-image:url("data:image/svg+xml;charset=utf-8,%3Csvg xmlns='http://www.w3.org/2000/svg' width='24' height='24' fill='currentColor' viewBox='0 0 24 24'%3E%3Cpath d='M20.97 14.55c0 .26-.1.51-.29.71a.996.996 0 0 1-1.41 0l-7.29-7.29-7.29 7.29a.996.996 0 1 1-1.41-1.41l7.29-7.29c.78-.78 2.05-.78 2.83 0l7.29 7.29c.19.19.28.44.28.7'/%3E%3C/svg%3E")}[data-toc] [role=button][aria-expanded=false]:after,[data-toc] [role=button][aria-expanded=true]:after{background:var(--object-low-emphasis,#08121a9c);content:"";display:block;height:1rem;mask-size:contain;width:1rem}[data-toc] [role=button][aria-expanded=false]:after{mask-image:url("data:image/svg+xml;charset=utf-8,%3Csvg xmlns='http://www.w3.org/2000/svg' width='24' height='24' fill='currentColor' viewBox='0 0 24 24'%3E%3Cpath d='M3.05 9.45c0-.26.1-.51.29-.71a.996.996 0 0 1 1.41 0l7.29 7.29 7.29-7.29a.996.996 0 1 1 1.41 1.41l-7.29 7.29c-.78.78-2.05.78-2.83 0l-7.29-7.29c-.18-.19-.28-.44-.28-.7'/%3E%3C/svg%3E")}[data-toc]:has([role=button][aria-expanded=false]) .last:not(.collapse) a{border:none}[data-toc]:has([role=button][aria-expanded=false]) .collapse{display:none}[data-toc]:not(:has([role=button][aria-expanded])):not(:has(.collapse)) .last a{border:none}:is([contenteditable=true],.no-js,#no-js) [data-toc] .collapse{display:revert!important}目次 今日は、田舎の不動産屋によくある話のひとつ、「ポツンと一軒家」。 野菜は虫に食われ、猿に盗られる 水、出ると思ってたでしょ? トイレの水、流したあとどこ行く? 理想だけで進む前に、“暮らす”ってどういうことか、ちょっとだけ考えてみてほしい 目次を開く野菜は虫に食われ、猿に盗られるまず、野菜を育てるって、簡単じゃない。虫がつきます。いやもう、わんさか来ます。無農薬ならなおさら、虫との闘いです。それでもなんとか実った…!と思ったら、ある朝、猿やイノシシに畑を荒らされていることも。何百年も続く本業の農家さんだって害獣対策していてもやられます。ましてや昨日今日入ってきた新参者なんか…。300円分の収穫に3,000円の害獣対策…。いったい何をやってるんだか、という気持ちにさえなってくる。水、出ると思ってたでしょ?たとえば「水」ひとつとっても、まず、水道はありません。町場ではあたりまえの公営水道は、山奥までは来ていません。じゃあどうするかというと、谷の水や湧き水を引いてくる「自家水道」か、山の上の共同水源を集落みんなで管理するケースがほとんどです。でもこの水、落ち葉で詰まったり、大雨や台風のあとに濁ったりする。だから山間部では、ポリタンクに水をためておくのが習慣だったりします。もちろん、その後も水の出が悪かったりしたら、自分で水源地まで行って掃除です。しかも、その水源にたどり着く道さえも道じゃありません。自分で開拓・管理して道にする必要がある。そして、空き家になっている場合、その道がどこだったのか分からなくなっていることもよくあるんです。山では、水は蛇口をひねれば出てくるものじゃない。トイレの水、流したあとどこ行く?ポツンと一軒家を探している人に空き家を紹介するときに、トイレの話もします。「この家、単独浄化槽ですが、トイレの水流したあと、どこ行ってるか知ってますか?」って聞いたら、大抵の人は「え?」って顔をします。水洗トイレだから、勝手にどこかに流れてると思ってる。下水道、あると思ってる。でも、ポツンとの家には、たいていありません。「ぼっとん? 汲み取り? いやいや、水洗ですよ」って言われるけど、その「水洗トイレ」が、実は汲み取り式の簡易水洗だったりします。簡易水洗? 汲み取り? 合併浄化槽? 単独浄化槽?名前を聞いたことはあっても、仕組みを知っている人はほとんどいない。しかも、仮に浄化槽があるとしても、定期的に点検と清掃が必要で、お金もかかる。下水道と同じようにはいかないんです。理想だけで進む前に、“暮らす”ってどういうことか、ちょっとだけ考えてみてほしい「ポツンと一軒家」って、響きはいいですよね。自由気ままに、自分らしい暮らしを実現できそうで。でも、いざ山奥に住もうとすると、思っていた以上に、「自然やその土地の暮らし」に自分を合わせることが求められます。電気、水道、通信、交通、排水、ごみ処理……どれも、勝手に整ってるわけじゃない。ひとつひとつが、工夫と手間と、地域の知恵で成り立っています。だからこそ、「理想だけで、いきなりポツンと一軒家を買う」のは、ちょっと立ち止まって考えてみてほしい。田舎には、その地域ごとの風習や生活様式があります。近隣の人とのつながりは言わずもがな、少なくとも「住まいの構造」や「生活インフラがどうなっているか」を、ざっくりでも知ってからの方が、きっとスムーズです。まずは、集落に住んでみる。地域に慣れてみる。そんな“入り口”を通ってからでも、ポツンとの暮らしは、遅くないはず。それでも「やってみたい」と思えたなら、それは本物の想いかもしれません。山には、厳しさと同じだけの美しさがあると思います。そして、そこに暮らす人たちは、たくさんの工夫とつながりで日々を守っています。田舎暮らしって、思っているよりずっと、「人と生きること」でもある。特に、山間部のポツンと一軒家は、そういう場所なんじゃないかと思います。