少し歩道を外れて歩いたことに
その
けたたましい音で気づいた。
お客を乗せているタクシー。
急ぐのはわかるけど
ひとをどかすためのクラクションって
ほんとうは法律に違反してるよね。
あまりの音だったので
レストランの店主も店先に顔を出すほど。
心臓がどきどきしている。
あの運転手、コロス!
少し歩道を外れて歩いたことに
その
けたたましい音で気づいた。
お客を乗せているタクシー。
急ぐのはわかるけど
ひとをどかすためのクラクションって
ほんとうは法律に違反してるよね。
あまりの音だったので
レストランの店主も店先に顔を出すほど。
心臓がどきどきしている。
あの運転手、コロス!
商店街のほうへ曲がりこんでくるバス。
永福町。
かどのラーメン屋あたりで
けたたましいクラクション。
思わず
うわぁぁ
声になる。
ふと見上げると
同じように驚いた女の子。
目が合う。
驚きましたね、の目での会話。
叫びだしそうになる。
彼女といるのが自然で、その隣にいるのがあたりまえのように
笑う。
いっしょになって
笑っている。
でも叫びたい。
ほんとうは・・・
そこで目が覚めた。
叫ばないでよかった。
夢の中でも。
携帯がメールの着信を知らせる。
そんな夢をみたときは
予感がある。
夢がそもそも予兆だった。
こんな前触れがあるのは
珍しいことではなかった。
メールはやはり
そのひとだった。
会いたいといわれるときは
たいてい彼女に予定があるときだ。
わたしが会いたいときは
相手の都合がわるい。
会うたびにもう会わないほうがいいと思うのに
また忘れてしまう。
お互いの無邪気さによって。
駅前の自転車置き場を通り過ぎたとき
自転車を出そうとしたおじさんが
自転車を倒してしまった。
思わず
起こすのを手伝った。
ありがとう、といいながらおじさんは去っていった。
ふだんなら見てみぬふりをしてしまうのに
そんな考えごとから
現実に戻されて
自然と手が伸びていた。
電車にのる。
携帯のメールをみつめていると
手にもっていた文庫を落とした。
ビニル傘と、携帯とで
あたふたしていると
となりに腰掛けていた
青年が
長い手で
文庫をとりあげ
無言で差し出した。
「ありがとうございます・・・」
彼はうなずくと
窓の外を見つめていた。
じろじろ見るわけにもいかないが
浅黒い肌、
長い手足、
染めている髪の毛、およそ
上品とはいいがたい風貌のその彼の
とっさにでたやさしさに
ふと
頬が緩んだ。
メールには返事をしない。