前号に引き続き、なぜ平成28年度以降実質単年度収支が大きな赤字になり、財政調整基金等を令和元年度までに約26億円も取崩したのかという点を見ていきます。



財政的に一番苦しい、合併後10年以降のこの時期は、通常であれば大きな事業は控えるべきなのです。

しかし、行政はその時期の課題に対応して動いていきますので、どうしてもやらざるを得ない事業が重なったのです。

代表的な事業を見ていきます。


① 合併後から着手してきた5小学校の統合事業が平成29年度から令和元年度まで続きます。

当然、統合に伴う施設・設備の増築・改修や放課後児童クラブ施設の整備等の費用が集中して必要になります。


② 保育所、小中学校の夏期の暑さ対策が問題になってきます。

このために、全施設の空調化が実施されています。

さらに、小中学校のIT化もさらに整備が進められています。


③ 合併計画にもあった道の駅の整備がこの時期に重なっています。

ただ、この事業には過疎債を利用していますので、一般財源への影響は軽微に済んでいます。

なお、田んぼアート整備事業は、積み立てた基金を活用していますが、後年度の維持費を考えると、着手すべきではなかったと判断されます。


④ そして、なんといっても平成30年7月大水害の復旧事業です。

大きな復旧事業は、補助金や災害復旧債が使えますが、市民の生活に密着した生活道、農地、用水路、農業施設等の小規模復旧事業は、補助金や災害復旧事業債が使えません。

そこで、安芸高田市では、こうした事業に対して一般財源を使った単独事業で対応したのです。

この事業は、施設管理者等への補助金としても支出していますので、貼付した資料の災害復旧費以上の金額が支出されています。

市民の皆さんの日常を一刻も早く取り戻すための特例的な措置だったのです。



こうした3年間の事業費の総額は、約48億円になります。



以上のような事情により基金を大きく取崩したのです。



安芸高田市は、こうした一時的で過大な支出にも耐えうる基金を積み上げてきており、基金の取り崩しや一時的な実質単年度収支の赤字などは、財政運営上は想定の範囲内だということです。



したがって、石丸君に財政運営について揶揄されることなど何もないことがわかります。



むしろ、財政の持続性の検証もせずに、基金を取り崩してやっと予算化した給食費の無償化を「未来への投資」だと言ってはしゃぎ、特段大きな事業もないのに基金を約4億円も取崩す石丸君に、財政を語る資格などあるとは思えません。