今回は、控訴理由書について説明します。



前号で、市長の弁護士は頭を抱えていると書きましたが、控訴理由は、次の事項に該当する必要があるからです。


① 訴訟手続きに重大な法令違反があった場合


② 訴訟手続きに法令違反があり、判決に影響を及ぼすことが明らかであった場合


③ 事実の認定に誤りがあり、判決に影響を及ぼすことが明らかであった場合


④ 証拠が偽造であることが確認されたり、新たな証拠が見つかったりした場合



今回市長が語った控訴理由を聞くと、1月の記者会見で、物知り顔で言った「真実相当性」は消え去り、「恫喝発言はあった」として「原判決を取り消す」ことを求めています。



したがって、控訴理由書では、具体的に「事実の認定に誤り」を指摘する必要があり、もしくは判決をひっくり返すほどの「新たな証拠」を提示する必要があります。



では、市長が1審で唯一提出した証拠(メモ)や主張を判決ではどのように判断したか見ていきます。(判決文P19~P20に記載されています。)


① 本件メモの記載は、単語の羅列したものにとどまり、(中略)被告(市長)独自の解釈や誤った認識が差し込まれている可能性も十分あるところ、(中略)原告(山根議員)が本件発言(恫喝発言)をしたことの裏付けにならない。


② 被告の本件発言に関する認識は、本件メモや10月20日全員協議会において「原告が本件発言をしたことを前提に答弁した」などという当裁判所の認定しない事実に基づくものと解される。


③ 他に原告が本件発言をしたことを裏付ける的確な証拠が見つからないことから、原告が本件発言をしたものと認めることはできない。


④ 被告の行う政策についての賛否を政策の是非ではなく、被告が市議会にとって敵か否かという立場によって決めるという趣旨の発言をしたことまでは認められない。


⑤ したがって、本件議会(10月20日の全員協議会)内発言により適示された事実が真実であるとは認められない。



判決文は、19ページにわたって事実関係をきめ細かに論証された結果として、上記のとおり判断しています。

この判決に対して、市長はどこに「事実の認定に誤り」があるというのでしょうか。

また、市長が証拠として唯一提示したメモが、完璧に証拠能力がないとされたことからも、次にどんな「新たな証拠」を出してくるのでしょうか。



判決文を詳細に読み込んでいくと、市長が提出した証拠や主張はすべて否認されており、「市長が恫喝発言をでっち上げた」ことを「完全に見透かされている」ことがよくわかります。



市長の控訴理由には何ら具体的な根拠はなく、控訴は税金を使った単なる裁判の引き延ばしにすぎないことがわかります。