前回に続いて、扶助費の推計について検討します。



2.2013年度から2022年度までの扶助費の推移を示し、「扶助費は今後20年間で約15億円ほど増加」と予測していますが、この6年間に扶助費に充当された一般財源を含めて見てみましょう。                                  
                                  (単位万円)

年度    2017   2018   2019   2020    2021     2022

扶助費  243,454 245,855 263,138 265,264  331,873   293,536

充当一般財源69,772 70,599  77,294 68,374   68,841   68,374



扶助費は2017年度以降増加傾向にありますが、安芸高田市が負担する一般財源は、扶助費の推移とは異なって(2019年度は水害の影響か例外的な年度)、おおむね70,000万円前後で推移していることがわかります。

つまり、扶助費の変化は高齢化だけを以って計るものではなく、新型コロナ対策に見られるような政府の一時的な政策や子育て支援政策等によって大きく左右されます。

ところが、市の財政に影響する一般財源ベースで見ると、近年は大きな変化を見せていないのです。

したがって、扶助費は政府の政策に大きく左右されることを無視して、高齢化だけを以って20年先まで推計することが、いかに無謀でいい加減なものかがわかります。



3.2020年度から2060年度にかけて、全ての公共施設を更新することを前提にした更新費用と公共施設を削減した後の更新費用を比較した「公共施設の削減で更新費用は3分の1に」という図表は、昨年度に続いて使用しています。


① 2022年度から2031年度にかけて、毎年25億円から40億円の更新費用が掛かると推計し、2022年度は約30億円の更新費用を見込んでいますが、2022年度の「施設更新費用を含めた全ての普通建設事業費は約12億円」でしかありません。

推計当初からこれほど乖離した推計は見たことがありません。

つまり、余りにも機械的でずさんで、実態に合わせて手直しもしないいい加減な推計であることが暴露されています。


② 公共施設は、その目的、利用頻度、施設の老朽化、財政状況等を勘案して、市民の理解を得ながら計画的に統廃合されていきます。

したがって、40年先に現在の公共施設をそのまま更新するなどありえません。

ところが、30年先からは毎年度50億円から60億円の更新費用が掛かるというバカげた推計を何食わぬ顔で市民の前に出しているのです。

起こりえないことを起こりうるように見せ、自分の主張を正当化する完全なトリックだといわざるを得ません。市民を馬鹿にするのも程があります。



結局、今回の財政説明会は、極めてずさんな推計を以って市民の危機感を煽り、廃止施設を羅列しただけのもので、失望こそすれ何ら市民が希望を感じるものではなかったでしょう。



市長は、今年度の経常経費13.8%の削減に引き続き、来年度も経常経費を7.5%削減すると職員に指示しています。

突然大幅な経常経費の削減をすることも大きな問題ですが、議会や市民にその根拠を全く示さずに一方的に行うことはさらに問題です。

経常経費比率という数字だけを見た、貸剥がしも平然と行う銀行的な発想だと言われても仕方がないでしょう。

今回も、市民や関係団体への説明や理解も得ずに、一方的な通告だけで済ますつもりなのでしょうか。