「広報あきたかた 10」に市長の人事評価が載っていました。

これから導入する人事評価制度に先駆け、市長を評価したものだそうです。

市長は議会で議員の一般質問に対してよく失笑していますが、さすがに失笑を禁じえませんでした。



人事の「360度評価」は、民間企業では半数近い企業が行っていると言われていますが、さすがに、会社幹部が、トップである代表取締役社長を評価する話は聞いたことがありません。

代表取締役社長は、「人事権をもつ絶対的権力者」ですから、さすがに幹部と言えども、代表取締役社長の業績やその人の能力まで評価できません。



民間企業では、代表取締役社長は、株主総会において株主に評価されるのであり、不祥事が起これば取締役会で代表取締役を解任されることになっています。



市長は、選挙で市民から信任を受けて業務を執行し、日常的には議会の「監視機能」を受けています。

仮に不祥事が起これば議会から不信任決議を受け、自らの辞任か議会解散かの選択を迫られ、市民からリコール請求を受けることもあります。

市長は、こうした制度によって監視され、最終的には選挙で「市長の評価」を受けるのです。



いくら民主的な職場で市長と職員との信頼関係があっても、基本的には「市長は人事権をもつ絶対的権力者」であることには違いはありません。

つまり、職員が市長を評価することは、制度的にも実態的にも意味のないことなのです。



特に、安芸高田市では、市長に意見した職員が「飛ばされた」事例や、市長が中国新聞の取材に一般的なコメントを出した幹部職員を特定するために調査するような環境の中では、客観的に市長を評価する幹部職員は極めて少数でしょう。

市長を「賞賛した評価」しか出ないのは、分かりきったことです。



では、なぜ市長は「幹部職員による市長の評価」をしようとしているのでしょうか。



以前、「職員への思想チェックが始まる」という表題の通信を出しましたが、その時に、次のように予見していました。



この結果に満足した市長は、市民に意気揚々とその結果を指し示し、「自分の秀でた人間性、卓越した統率能力と執行能力」を誇示するに違いない。



今回の評価制度は、精査されたようには見えませんので、市長の能力として必要な「統率能力と執行能力」や政策形成能力、コミュニケーション能力等の評価項目はありませんが、一般的な能力評価と情意評価では、指摘していたとおり、高い評価が出ています。

一方で、「倫理観」と「向上心」の評価が、3点台で比較的低いのが注目され、気骨ある幹部職員がいることが分かります。

ただ、これから「思想チェック」が始まらないことを祈るばかりです。



市長は、この評価結果を広報誌に掲載し、記者会見でも披露して、「大変高く評価されて幸い。職員にどう捉えられているか認識できた」と自画自賛していますが、本通信が予見したとおりになっています。



通信では、さらに次のように書きました。



しかし、世間ではこれを「茶番」といいます。



「全国で○番目に行う。県内で初めて実施する」等のパフォーマンスはやめて、本当に職員を生かす「人事評価制度」を構築してもらいたいものです。