11月17日
「高市総理の『存立危機事態』発言以降の人民日報・環球時報」
高市総理の「存立危機事態」発言
11月7日(金曜)の衆議院予算委員会、立憲民主党岡田克也議員の質問「中国が台湾を軍艦で海上封鎖したら、それは日本にとって存立危機事態に該当するのか」に対し高市総理は「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得る」と答えた。それ以降、中国と日本で騒ぎとなっている。
まず翌日8日(土曜)に中国の薛剣(セツケン、Xue Jian)在大阪総領事がXに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と投稿。その後、双方が相手国の大使を呼び出して抗議、さらに中国は日本への渡航や留学に対する注意情報を出し、中国公船による尖閣諸島領海侵入もおこなった。
それらの動きにまた呼応して、日本国内では新聞、テレビ、ネットでいろいろな意見が出されている。高市総理への批判に薛剣総領事批判、中国批判や総理に質問した岡田議員を非難したりと。
中国の新聞をみてみると少しおもしろい。人民日報傘下の環球時報でまず11日(火曜)になって、項昊宇という中国国際問題研究院亜太(アジア太平洋)研究所特聘研究員の見解という形で「台湾に関する高市発言は極めて挑発的で高度に危険」という表題の文が出る。これは当然高市発言を強く批判しているが、7日の国会討論や10日の再度の答弁をかなり正確に追っており、また高市発言が日中共同声明などの日中間の原則に反しかつ国際法にもはずれるだけでなく、日本の安保関連法からも抵触するといったり、高市発言に批判的な日本の野党や新聞報道も述べるなど、かなり理性的で抑えた表現をしている。
その後、人民網(人民日報ネット版)の日本語版が「評論」という社説的記事で12日と14日、環球時報も14,15日に「社報」(社説)で高市総理への批判を強めていく。12日以降の各社説は、項昊宇の文とは異なりどれも同様なトーンで、日本は第二次大戦のときも「満蒙は日本の生命線」と「国家存亡」を口実に侵略を仕掛けてきた、今回も同じ口実を使い中国の国内問題(台湾統一)に介入しようとしているが、大戦時と同様に国際社会が許さない、と中国が対日批判時によく使う正義の戦勝国と悪の敗戦国パターンも出して、高市総理発言を強く非難している。
11日に項昊宇が環球時報に解説を載せた時点では、共産党中央ではまだ日本への対応方針が決まっていなかったのだろうか(そういう意味では薛剣コメントは中国総領事としてもフライング発言だったのだろうか)。人民日報も環球時報も中国共産党の一組織であり、他の国にある報道機関とは異なるものだ。中央の方針が決まらないと報道もままならない国よりは、総理大臣の発言にもすぐにだれもが反応できる国に生まれてよかったと改めて思う。
読売新聞 11/3社説
「人口減少 少子化対策を洗い直したい」 って、本当に危機感もってる?
政府が人口減に関する対策本部を年内に設置するとのことで、読売新聞が社説で「少子化対策を洗い直したい」と言っているのだが・・・。
「手をこまねいていたら、社会を支える担い手の不足が一層深刻化し、(略)教育や医療、介護などの行政サービスを維持できなくなってしまう。経済も縮小する」と危機感を示し、「働き方改革を進め、子供を産み育てやすい環境を整備していくことは重要」、外国人労働者について「排外主義に陥ることなく、中長期的な受け入れ政策を検討すべき」、「不本意に非正規を選んでいる人については正規に転換するなど、企業側の努力も求められる」と述べている。
おっしゃるとおりなのだが、
1)書かれている対策は、これまでも省庁や自治体で、不十分だろうが進めている。それをどう「洗い直」すのか、また洗い直した新たな提言は読売新聞でも思い浮かばないということか。
2)読売にかぎらずほとんどのマスコミの報道で感じるのだが、人口減少についてこの社説のようにごく表面だけをなでるだけで、掘り下げて「真実」を語らないように見える。
日本の人口は、このさき100年ほど減り続ける。国連推計では、2100年日本の人口は7300万人、しかもこれは合計特殊出生率が2020年の1.29を底に増加に転じ、2035年で1.40、2070年で1.51になるとしたうえでの数字だ(厚労省『令和6年人口動態統計月報年数の概況』より)。実際の合計特殊出生率は下がり続けて2024年では1.15となっているから、人口は国連予測よりもかなり早く減っていく。
現在の日本の人口ピラミッドは壺形で、60歳以下は年が若いほど数が少ないので、結婚・出産適齢人口は今後年々減少していく。出生率の減少が止まっても、また少しくらい上がっても、出生数は増えない。
したがって社説標題にある「人口減少」を止めるには、出生数が前年より増える(つまり出生率が出産適齢人口の減少を上回るほどに上がる)、そうなったら二十数年後にようやく人口が増える可能性が出てくる、という話だ。それよりもはやく「人口減少」をとめたいなら、「外国人労働者」というより海外から日本に移住する人つまり移民を日本人の減少以上に多く受け入れるしかない。
人口が今後数十年減り続けることや、移民の(数字の上での)必要性といった国にとって大きな問題を、どの政党も正面きって言わないのは、この国の政治レベル、政治家のレベルからして当然かもしれないが、せめて、いやだからこそ、報道機関には明確に警鐘を鳴らしてほしいと思う。
読売さんは、「この社説でも外国人労働者について、ちゃんと書いているでしょ」と言うかもしれないが?
ハンギョレ新聞 10/29社説
「APECを控えての「嫌中デモ隊」慶州集結、国益と品格を損なう」(日本語サイト)って、マジ思ってるの?
韓国のハンギョレ新聞は代表的な左派系新聞で、現大統領の李在明支持かつ親中国。したがって10月31日から韓国慶州で開かれるAPECの成功を願い、さらにAPECで国賓として訪韓する中国習近平主席を歓迎するというのは当然だろう。そのハンギョレ新聞にとって「嫌中デモ」を行なう自国民は当然許せないのだろうが、その理由がおもしろい。「「嫌中デモ隊」が慶州に集まりつつあるという。彼らは、30日に3日間の日程で訪韓する習近平国家主席ら中国代表団の入国と会議日程に合わせた反中集会を予告している。」が、「まっとうな根拠にもとづく反対、批判、主張ではない、特定の国や国民に対する一方的なヘイトや排除扇動は、(略)大韓民国の品格と国益を損なう、恥ずべき危険な行為だ。」という。(太字社説引用)
一見もっともらしくみえる主張だが、
1)これから行なわれるデモが「まっとうな根拠にもとづ」かず「一方的なヘイトや排除扇動」だと、なぜすでに知っているのだろうか? まっとうな根拠にもとづいた情報や判断なのだろうか?
2)ハンギョレは28日には「習主席、「限韓令解除」のプレゼントをもたらすか」という記事も載せている。中国は2017年以降、韓国のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を嫌い、公式には認めずに韓国の文化コンテンツの中国市場へのアクセスを制限していることはハンギョレも認めているのだ。そんな国に対し「嫌中」となり、国家主席の訪韓に合わせ抗議デモをするのは、ある意味当然ではないか。韓国の新聞なら、デモの計画を非難して相手からの「プレゼント」を期待するのではなく、「限韓令」の理不尽さを責め解除するよう主張すべきではないのか。
3)どの国でも国民は多様な意見をもつ。そして民主主義国家なら国民はだれもその主張をデモなど法で認められた行動で示すことは正当な権利であり行為だ。そのなかには、反対派からみれば「一方的なヘイトや排除扇動」とみえるものもあるだろうが、判断するのは一部の政治家や新聞ではなく、その国民自身だろう。国内でさまざまな対立や反発がある国は「品格」が損なわれた「恥ずべき」国なのだろうか。それとも、ういった対立が外部には一切あらわれない国が品格にすぐれた立派な国だとハンギョレ新聞は考えているのだろうか。中国や北朝鮮のような国が。