ラフマニノフ

もう25年以上前になりますが、何気なくテレビを見ていた時に、美しい旋律が。
「N響アワー」のオープニング。

傍のVHSをセットし、録画。
1997年(平成9年)11月22日のことでした。

当時の「N響アワー」は作曲家の池辺晋一郎さんと女優の檀ふみさんの
ダブル司会で、池辺氏の下らない親父ギャグに檀さんが呆れるおきまりの展開が
面白かったものです。

さて、録画したVHSはその後、現在に至るまで大切に保管し、幾度となく
再生して来ました。何故か?
「アンドレ・ワッツの演奏が神懸かってるからだぜ」。

池辺氏曰く、ワッツが世にデビューした時、世界は「ワッつ!」と
驚いたと言います。グレン・グールドの代役だったとか。

この回の演奏はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。
指揮はドミトリ・キタエンコ氏。

「圧巻の数十分」。
ラフマニノフ特有の郷愁を奏でる旋律といい、明朗快活で力強い主題といい、
ピアノはおろか、クラシックに全然興味のない自分でも、十分に感動したものです。

鍵盤を押さえつけるかのような演奏に見えつつ、とてもセンシティブ。
消え入るような繊細なタッチもお手の物。
かと思えば、第3楽章の終盤には、大きな手と指が災いしてか、
どんどん音をはずしまくって、ラストに向けて猛突進して行きます。

そんな彼のことだから、指揮なんか無視しているかと思うと意外にもそうではない。
キタエンコ氏の指揮と妙にシンクロしていて(当たり前ですけれど)、
二人の間に演奏の会話が見えてくるようで面白い。

最後なんかは、猛突進するワッツ氏の方がキタエンコ氏を
担ぎ上げて、もう二人ともやっつけ仕事みたいになっているのがどツボです。

この放送を観て以降、クラシックとは無縁ながら、
ラフマニノフの「ピアノ協奏曲」のCDだけは集めるようになりました。
ラフマニノフ本人の録音から、アシュケナージ、ジルベルシュテインなど。

「でも、やはりワッツが最高だ」。

NHK交響楽団とのコラボは録音されていないようで、CDはありません。

しかし、ワッツ氏とキタエンコ氏との「どうにでもなれ」的で、「ご乱心」な映像は何度見ても笑えます。

さて、ラフマニノフ。
フィギュアスケートなどでしばしば聞くことがあります。
もはや鉄板曲といっても良いかもしれません。
美しい旋律と、スケーターの美しい試技。

「でも、ワッツ氏が目に浮かんで笑えてしまう」のである。

では。