信州・松本

 

2020年12月以来、3年ぶりの松本です。

今回は白骨には行かずに、安曇野の定宿に泊まるので、

松本でゆっくりできます。

 

松本行きが決まってから、妻がお蕎麦屋さんの「三城」を予約することを

提案してきました。

「でも、あそこは子供は入れないでしょ?」

「私が子供を見ておきます。行ってらっしゃい」

良くできた人だ。

 

二日前に電話で予約。

電話を切る際に、女将さんに優しく「待ってます」と言われて

なんだかドッキリしました。俺は書生さんか?

 

さて、当日。

国宝「松本城」は中まで見学しました。

四柱神社にお詣りして、待ちに待った「三城」へ。

 

 

13年前に伺った際には、自分たち以外にお客がおらず、

注文もせずにお酒から始まるスタイルに面くらったものですが、

今回は先客がおり、賑わっているご様子。

聞き耳立てるわけじゃないが声が大きいので先客の会話が聞こえてくる。

ギョーカイ人らしく、やれ芸能人の誰某が借金抱えているとか、

下衆い話ばかり。

「やれやれ」。

 

さて、女将さん。

招かれて着座するや、やはり片口に日本酒が。

軽く一杯やりつつ、あみたけのつまみをいただく。

これで先客がいなければなお良いのだが。大声で、講釈が続く。

 

 

蕎麦が出るまでしばらくかかりそうなので、

ツユを啜ってみる。「ちょうどよい塩梅だなぁ」

浅草あたりの有名店ほど辛くない。

 

さて、蕎麦が出てきた。

軽くツユをつけていただく。

「蕎麦が新鮮だなぁ」

少し、ナッツのようなふくよかな芳香が鼻をくすぐるよ。

蕎麦ってものが美味しいのはやはりこの香りのおかげなのでは?

薬味をつけても、それに負けない蕎麦の香り。

そして、妙なる喉越し。

 

 

先客は蕎麦と女将さん評で下衆い発言を繰り返している。

「長っ尻だねぇ」

 

でも、どうだ。

若干、先客の態度に腹を立てつつ、

蕎麦に満足し、先客への女将さんのあしらいが面白くもある。

「人の集うところにヒューマンコメディありだな」

 

13年前に伺った際、感じた「面妖さ」は薄れたものの、筋のとおった

客対応に変化はない。

 

迫り来るような「異なる世界」との邂逅を期待した自分であったが、

少しだけ、私もこの「世界」に近づいたのかもしれない。

 

「また来ますね」

心の中でそう呟いて店を出た。

 

松本には旨い蕎麦を出す店が「たしかに」存在しているようです。

 

では。