ある日突然、「話があるから時間を作って欲しい」と旦那から打診があった。
また離婚してくれ攻撃か?面倒臭いな。
そんなことを考えながら日程の調整をして返事をした。
細かい内容は端折るが、旦那は戻ってくることになった。
信じられなかった。
「戻ってきていいよ。ここは君の家だから、私はそれを拒否できない。」
そういう返事をすることしかできなかった。
旦那は戻るが、私が出ていくことになるのか?
家が惜しくなった?確かに旦那がローンを払っているし、惜しいよな。私を追い出して不倫女とここに住む?そういう作戦か?
どこまでが本当でどこまでが嘘なのか?
この密室での話は危険だ。
嘘に付き合うか?
色々考えても面倒臭い。
流されろ。
私は流されることにした。
それが決まってからは忙しかった。
その裏で私は「不倫女へ慰謝料請求」のミッションに取り掛かった。
旦那への制裁はいつでもできる。後回しだ。
不倫女への慰謝料請求については一般的に言われている時効は過ぎていた。
しかし、不倫がつい最近まで続いていたという証拠が手に入り、しれっと弁護士に依頼した。
弁護士は淡々と処理をしてくれた。
弁護士が定期的に状況を知らせてくれたので、私も粛々と日々をこなすことができた。
私は不倫女が逃げて払わなくても構わなかった。
どうしても「不倫をした女」というレッテルを貼りたかった。
どうしても「不倫は純粋な恋愛ではなく、訴えられる忌み嫌われるもの」と言いたかった。
あなたは加害者だから慰謝料請求されるんだよ。
私は被害者だから慰謝料請求できるの。
立場をわきまえなさい。
不倫するようなさもしいやつに伝わるとは思えないし、理解する頭も心もないだろうけど。
不倫女は、私の弁護士にも色々言ったらしいが、埒が明かないと思ったのか結局自分も弁護士をつけた。
しかし、法外な額の請求をしなかったためか請求額を支払ってきた。
合意書には何故か私に加害されることを恐れているという内容が記載されていた。
その加害は全て実際に不倫女が私にやってきたことだった。
頭のおかしい奴に構っているほどバカらしいことはない。
全ての証拠を弁護士に渡しているから弁護士も笑っていただろう。
一方、気持ち悪い不倫女の対応や面倒臭い案件を引き受けなければならなかった事を考えると、あちらの弁護士さんに労りの言葉をかけてあげたくなった。
数ヶ月かかったが、不倫女へのミッションは無事終了した。
ちなみに、女に請求した慰謝料は、私が探偵や弁護士に支払った額より100万弱安くしてあげた。
弁護士を雇う金があるならその分上乗せしろよと思ったが、恐らく弁護士を付ければなんとかなると思ったのだろう‥残念だったね‥不倫だからね‥
探偵からの調査報告書は使うこと無く終わったが、今なお金庫に眠っている。