不倫同棲をしているくせに、たまに家に来ると私に普通に話しかけてきた。最初からそうだった。

何故普通に話しかけてくるんだ。何故笑えるんだ。

私は目を合わせられなかった。

それは不倫が終わるまで変わらなかった。

私のほうが悪いことをしているような錯覚に陥るほどの不自然な感じがした。

目は合わせられないが普通に対応してやる。これは仕事だ。どんなに理不尽な事でも普通に。


そのうち、夕飯も家で食べるようになった。

旦那が家を出る時に、子供が旦那の足にしがみつき、行かないでと泣きつくのを見ているのが耐えられず、子供が寝てから出ていくようにお願いをした。私の精神もぶっ壊れそうだった。


恐らく旦那も思うことがあったのだろう。

それをお願いしてからは、寝かしつけをしてから家を出るようになった。


しかし、数回子供が夜中に起きて、泣きながら旦那を探し回るということもあった。その地獄を旦那は未だに知らない。


絶対に不倫者2人を許さない。


しかし、法の範囲内で制裁を与えるのには限界があり、そんな制裁など奴らにとっては何のダメージにならないのも不倫を辞めないこともわかっていた。


無力な私ができることは、「離婚をしない」ということと、「厳しさよりも優しさの方が一層力を発揮することがある」という何かに書いてあった格言の通りにしてみること。


あとは何ができる‥


何もできない。


でも心に決めていた。


「女には慰謝料請求をする。じっくりタイミングを見る。のぼせ上がった恋愛もいつかは冷めていく。普通の恋愛だっていつまでも最高潮のまま続くわけがない。不倫同棲なんてしたら尚更。必ず揉める。冷静に。淡々と。私達は悪い事は一切していない。凛と過ごそう。」


それでも刻々と時間は過ぎていくので、何度か弁護士相談に行って相談をした。


「不倫継続している証拠は取り続けるように。」


ありがたいことに証拠は奴らが残してくれていた。

見るのは腹立たしいが、証拠は取り続けた。


争ったなという事があると「ザマァ」と思ったし、仲直りした様子が伺えると「しつこいな‥」と思った。


そんな時間がしばらく続いた。1年、2年と‥


子供達は成長し、私は年を取った。