精神科の闇|中村 篤史/ナカムラクリニック
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精神科の闇
中村 篤史/ナカムラクリニック
2024年5月20日 17:40

患者の『お薬手帳』を見て、抗うつ薬や抗不安薬が処方されていれば、「これ、できればやめたいね」と水を向けてみる。反応は、「そう、私もやめたいと思っています」から「いや、デパスは私の命綱です。これだけはどうしても」まで、様々だ。

最初に結論からいうと、精神科の処方薬は、総じてろくでもない。あるいは少なくとも、長期間飲み続けてはいけない。急激に発症した精神症状で、自傷他害の恐れがある。そういう場合なら投薬もやむを得ない。しかし漫然と飲み続けるべきではない。
これは僕の意見ではなく、エビデンスがそう示している。

【統合失調症】
・統合失調症の予後は、インドやナイジェリアといった貧困国のほうがアメリカなどの富裕国よりもはるかに良好である。貧困国では抗精神病薬を定期的に服用するのは16%に過ぎないのに対し、富裕国では抗精神病薬の服用が標準治療である(WHO 1992)
・抗精神病薬により脳の形態的変化が引き起こされ、これが統合失調症の症状の悪化と関連している(ペンシルベニア大学 1998)
・統合失調症患者を15年間追跡した研究によると、抗精神病薬をやめた群の40%が寛解した一方、投薬群で寛解に至ったのは5%だった(イリノイ大学 2007)
・エンジェルダスト、アンフェタミンなど、精神症状を惹起する薬物はすべて、脳内でのD2受容体の発現を増加させる。抗精神病薬も脳内で同様の変化を引き起こす(トロント大学 2005)
【うつ病】
・うつ病の大規模スタディーによると、初発から18ヶ月後に調子の良さを自覚している人の割合は、精神療法群で最も高く(30%)、抗うつ薬治療群で最も低かった(19%)(NIMH 1990)
・547人のうつ病患者を6年間追跡した研究によると、投薬治療を受けた人はそうでない人に比べて予後不良である確率が7倍以上高く、仕事、家事など「主要な社会的役割」を果たせなくなる可能性が3倍高かった(NIMH 1995)
・うつ病の診断を受け投薬治療を受けている人は、非投薬群に比べて、1年後のうつ症状および全般的な健康状態のスコアが悪化していた(WHO 1998)
・短期間のうつ症状を生じているカナダ人1281人を対象とした研究によると、抗うつ薬を服用した人ではそのうちの19%が長期的なうつ状態に移行したのに対し、投薬治療を受けなかった群で長期的なうつ状態に移行したのは9%だった(カナダの疫学研究 2001)
・9508人のうつ病患者を5年間追跡した研究によると、うつ症状の見られた期間は、抗うつ薬服用者では年に平均19週であったのに対し、未投薬群では年に平均11週だった(カルガリー大学 2005)
【双極性障害】
・今日の双極性障害の患者の長期的な予後は、投薬治療が導入される時代以前と比べると格段に悪化しているというのが疫学研究の示すところである。この悪化は抗うつ薬や抗精神病薬の有害な作用の影響と思われる(イーライ・リリー; ハーバード医学校 2000)
・薬による治療が導入される以前には、長期的な経過のなかで双極性障害患者が認知能力の低下をきたすことはなかったが、今日、彼らは統合失調症患者と同程度の認知能力低下が見られる(バルティモアのシェパード・プラット・ヘルスシステム 2001)
・双極性障害の追跡研究によると、予後不良の主要な予測因子は、抗うつ薬を服用しているかどうかだった。抗うつ薬服用者では、そうでない人と比べて、「ラピッドサイクラー」型双極性障害になる可能性が4倍近く高かった。「ラピッドサイクラー」型双極性障害の長期的な予後は不良である(NIMH 2008)
【不安症/パニック障害】
・長期のベンゾジアゼピン系薬物の服用者では「中程度から高度」の認知能力低下が見られる(オーストラリア 2004)
・長期間のベンゾジアゼピン系薬物の使用者が薬の離脱に成功すると、「機敏になり、かつ、より深くリラックスし、不安も少なくなる」(ペンシルバニア大学 1999)
・ベンゾジアゼピン系薬物の服用者の長期的な予後は、「顕著に不良」から「極度に不良」であり、常にうつ症状や不安症状が見られた(フランス 2007)【ADHD】
・ADHDの診断を受けた子供たちを追跡した大規模研究によると、診断から3年目までに「投薬治療を受けているかどうかは、良好な予後の指標ではなく、悪化の指標であった」。投薬を受けた群では、非行に走る傾向も高く、また、背や体格も小柄になる傾向が見られた(NIMH 2007)

上記の記述は、『Anatomy of an epidemic』(Robert Whitaker著)からの引用(p307-309)で、僕がテキトーに訳したものです。
この本は文句なしの傑作です。
精神科がいかに終わっているかがよく分かる。現代の精神科医療は、とても「医療」なんて呼べるシロモノじゃない。単なる製薬会社の金儲けの手段に成り下がっている。
著者の筆致は淡々としている。「製薬会社の不正を糾弾する!」とか「患者よ、今すぐ薬を捨てよ!」みたいに肩肘張ってるわけではない。
筆者の目線は一ジャーナリストとして常に中立で、ただ、読者に次々と事実を提供する。「精神科の薬にはこういうメリットがあります。でも、こういうデメリットもあります。さて、皆さんはどうしますか」といった感じで、解釈は読者に委ねる。
現代の精神科医療がどのようにして成立してきたのか、抗精神病薬や抗うつ薬の開発の歴史や、製薬会社が大学や精神科学会などで影響力のある人物にどのように取り入ってきたか、そういったことが淡々と語られる。

かつて精神科医は、内科医や外科医など他の医者から常に一段下に見られていた。『精神医学?あんなものは科学じゃない。フロイトの精神分析療法とか正気の沙汰じゃない。まじないの世界だよ』と。
ところが抗精神病薬の登場により、事情は一変した。不治と思われていた統合失調症患者が、次々と改善し始めたのだ。精神科医の復権だ。内科の診療風景が抗生物質の登場で一変したように、精神医学もついに『魔法の弾丸』を手に入れたのだ。精神科医たちは大いに喜んだ。もっとも、抗精神病薬の長期予後がよくないことがまもなく明らかになり、この喜びは失望に取って代わられたのだけれど。

精神科医を目指す人には必読の一冊です。
というかこの本を読了してなお、「精神科医になりたい」って言える人がいたら、かなりの変人です(笑)

【注意】
精神科的投薬治療をすでに始めてしまった人は、薬を急に抜くのは危険だよ。ベンゾは特にね。
食事や生活習慣を改善しつつ、ちょっとずつ減薬し、断薬に至るのが本筋ですよ。


以下、オラのコメント

実母の認知症が進んで要介護は1から3そして5に急速に変わり、入院先は生協病院から温泉病院そして精神科専門病院に変わり、主治医である精神科専門病院の院長は東大医学部卒の精神科医で県医師会長で、意外と物腰が柔らかい穏和な人物で、実母の病室の隣の個室には院長の実父である元院長が認知症で入院しているとか。
オラの実母も元院長も、そこで既に他界したけどね。

そこの病室は常に満杯で患者専用の食堂も常に満杯で、1階の外来も患者が溢れていたけどね。