彼岸花と消えた親友4
文章量短くしようとするんですけどつい書いちゃうんですよね。 読んでくれてる方。申し訳ないです
鈴本「……どうしよっかな」
平手が失踪してから七日目。なんの手がかりもなく、平手の家に行ってから三日が経過した。
四日目に理佐から渡された封筒から出てきた一軒家が描かれた絵。
それは平手の実家という可能性が1番高いものの、場所を知らない以上たどり着くのは不可能だ。
鈴本は学校の庭でため息をこぼしていた。
「こんな良い天気なのにため息? 美愉は疲れてるね」
鈴本「あ、虹花」
鈴本が抱えてる問題に四苦八苦していると、かつてのクラスメイト。今平手のクラスメイトである石森虹花が話しかけてきた。
鈴本「いや疲れてはないよ。元気だよ」
石森「美愉は嘘が下手だね。疲れたって顔に出てるよ」
鈴本「……ならそうかも」
石森「そういえば平手ちゃんどうだった?」
鈴本「……え?」
石森「平手ちゃんだよ。家に行ったんでしょ? 元気だった?」
鈴本「……いなかったよ」
石森「え?」
鈴本「風邪がひどいから実家に帰ってるんだってさ。治ったらまた戻ってくるらしい」
石森「あーーそうなんだ。そうなんだったら平手ちゃん返信くらいくれればよかったのに」
平手が失踪したことを3人に話せば必ず心配する。
だが、これはそこまで大事にするべきではない。今回の件は恐らく理佐さんが言った通り自分への挑戦状だ。
なら自分が平手を見つけ出し、何事もなく元の日常に戻るのが1番良い。
そう考えた鈴本は石森虹花やその友達である織田奈那や齋藤冬優花には平手のことを黙っておくことにしていたのだ。
石森「まぁ平手ちゃんがそう言ってたんなら大丈夫だね」
鈴本「ねぇ虹花。平手って前はどこに住んでたの?」
石森「んーわたしも分からないや。元々そんなこと語らないからさ。ただ。小中はこの辺じゃないみたい」
鈴本「じゃあ結構離れた場所に住んでたんだね」
石森「そうみたいだよ。……あ、ふーちゃん達のジュース持ってかないと」
鈴本「……パシリ?」
石森「違うよ! ジャンケンに負けただけ」
鈴本「そうなんだ。そりゃ災難だ」
石森「感情がこもってない気遣いの言葉はやめてね」
鈴本「はーい」
石森「全く……それじゃあねー」
鈴本「……私もそろそろ行こうかな」
鈴本は石森が去っていく姿を見送り一度青空を眺めた後、帰ろうと立ち上がってその場を後にした
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鈴本「はぁ」
鈴本は教室へ戻る途中も考えていた。
彼岸花の封筒にあったこの一軒家の絵。
これが平手の家である可能性が高いとするなら、この辺りにない。この街ではない別なところ。
先ほどの虹花の話から整理するとそう結論が出た。
現状、この場所にたどり着くには平手友梨奈のことを知る人物。中学時代の同級生に会う必要がある
鈴本「と言っても平手の同級生なんてこの学校にいるわけなくない?」
鈴本「わざわざ一人暮らしするってことは結構離れてるってことでしょ…」
鈴本「あーーどうしよう!」
完全に行き詰まり、頭を抱える鈴本。
前を見ずに歩いていたため、誰かにぶつかってしまった。
鈴本「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「いえ、こちらこそ。私もよそ見してましたので」
(……あれ?この人……)
「………あの、なにか?」
鈴本「えと………あ、あの!」
「はい?」
鈴本「……もしかして平手友梨奈の中学時代の同級生……だったりしません?」
「……はい。そうですけど……」
「……あなたはてちの友達ですか?」
鈴本「てち?」
「あぁ。平手友梨奈の中学時代のあだ名です」
鈴本「そうなんだ。てちって呼ばれてたんだ…」
「……それであなたは?」
鈴本「あ、私鈴本美愉っていいます!」
「あなたが……てちから時たま話を聞いてますよ」
鈴本「本当ですか? 平手はなんて言ってました?」
「栗が好きな友達ができたと……」
"……理佐さん。そして今回はこの子。私のことを話してるのはいいんだけど栗をメインで話すのやめてくんないかな?"
鈴本「……それだけですか?」
「他にもあったような気もするけど、思いついたのはそれだけです」
鈴本「そ、そうですか。」
小林「あ、私は小林由依っていいます。てちとは中学1年の頃からの友達です」
鈴本「小林さん。ごめんなさい。ぶつかった上に呼び止めてしまって……」
小林「いえ。わざわざ私を呼び止めたってことは何かお話があるんですよね?」
鈴本「はい。平手についてです。平手からこの絵をもらったんですけどこれに見覚えがありますか?」
鈴本がそう言って例の絵をみせた。小林はそれを受け取って1.2秒眺めていた。
小林「ありますよ。てちの家ですからね」
鈴本「本当ですか?なら、あいつの実家ってどこにあるかわかりますか?」
小林「……それを知ってどうするんですか?」
鈴本「えーと、それは……」
小林「いきなり呼び止めて、てちの家がどこかなんて聞くのはおかしいと思いませんか?」
鈴本「……おかしいって事はわかってます。でも教えて欲しいんです」
小林「……なら鈴本さんも隠してることを教えてください」
鈴本「隠してる事?」
小林「てちのことで」
鈴本「何も隠してないですよ……」
小林「一つ。わざわざ初対面の私にてちの同級生か確認してくるのが変です」
小林「私に見覚えがあるようでしたけど」
鈴本「それは…」
小林「二つ。てちが最近学校にきてないですよね?それと関係しているんじゃないですか?」
小林「てちは常識に欠ける所もあって変なところがたくさんありますが無意味に人を心配させる事はしません」
小林「そのてちが姿を消して、鈴本さんにそんな絵を残すには何か意味があると思いました」
鈴本「てちが休んでるのは風邪で「三つ」
小林「てちがいなくなる前。てちから預かり物をしてるんです。鈴本さん宛に」
鈴本「……私に?」
小林「彼岸花が描いてある封筒です。表には三という数字が書いてありました」
小林「『鈴本にゲームを仕掛けるための準備。手伝って』そう言われて開けずに預かってました」
小林「けど、その本人は行方知れずになった。だから私もどうにかして探そうと思ってたところに鈴本さんが現れたんです」
鈴本は小林の言葉に動揺した。まさか小林にも封筒が渡っているとは思わなかった。
封筒が渡されてる以上、平手友梨奈について聞く必要がある。なら隠し通すことはできないと鈴本は小林に真実を語ることにした。
鈴本「……ごめんなさい。本当のことを話します」
鈴本「私は昨日、平手の家に行きました。本人には会えずに帰ろうとして、偶然隣人の方に会って平手のことを尋ねたら小林さんと同じ封筒を預かっていたんです。」
鈴本「その封筒には五と書いてありました」
鈴本「平手は自分がいなくなったあと、私が最初にあいつの家に行くことを分かっていました。だから五の封筒を隣人の方に渡していたんだと思います」
小林「最初の封筒が五。私のが三だった。ならどこかに四の封筒がどこかにあると……」
鈴本「最初の封筒にその絵が入っていてあとは小林さんに三の封筒を持っているということで確信しました。多分平手は五封自分の親しい人間に封筒を配ってるんだと思います。」
小林「なら四の封筒はてちの家にあると考えるのが普通ですね。恐らくその絵は道標ですもん。全部で五封……誰に渡したんですかね」
鈴本「私にはこの絵の場所が平手の家とわかっても場所が分からなくて……」
小林「……なるほど。それでてちと同じ中学の生徒なら何かわかるかもと私に聞いてきたんですか」
小林「私がてちの同級生だと思ったのは?」
鈴本「鍵が開いていたので、平手が家にいるかもと思って部屋に入ったんです。それで寝室に入った時に中学時代の時の写真があって……」
鈴本「その子と小林さんが似ていたので。もしかしたらと思って……」
小林「そういうことだったんですね」
鈴本「この他にも一つ聞きたいことがあるんです。小林さんから見た平手友梨奈はどんな子だったか 教えてくれませんか?」
そう鈴本が聞くと眉をひそめ小林は少し考え始めた。
しばし下を見て考えていると、鈴本の方に再び目を向けた。
小林「鈴本さんに確認しておくことがあります」
鈴本「なんですか?」
小林「てちのことを知ろうと思ったのは興味本位ですか?」
鈴本「違います! 私は友達として平手のことを知って、あいつと向き合いたいんです!」
小林「てちと向き合うというのは簡単なことではないですよ」
鈴本の言葉に強い口調で間髪いれずに小林は返答した。それを聞いて鈴本は少したじろぐ。
小林「てちは辛い思いをして過ごしてきました。 あの子の心にできた傷は深いものです」
小林「あなたはもしかしたらてちに嫌悪感を抱くことになるかもしれません。てちのことを見捨てるかもしれません」
小林「貴方には平手友梨奈の過去を知った後、それでも彼女と向き合う覚悟はありますか?」
鈴本「……」
小林「人間不信気味だったてちがあなたのことを信頼しているようでした。だけど私はあなたをそう簡単には信じられません」
小林「私はもう、てちが苦しむ姿を見たくないんです」
小林は鈴本にそう言い放った。その目、声からはなんとしてでも己の親友を守るという覚悟を鈴本に伝えようとするかのようだった。
鈴本「………正直 平手の過去を知らない私が簡単に覚悟があるなんて言えません」
鈴本「だけど私は平手友梨奈の友達です」
鈴本「大事な人が苦しんでるのに見捨てるなんてことは私にはできません」
鈴本がそういうと小林は面食らったように目を見開いた。そしてどこか安心したような顔になった。
小林「……次の土曜日。駅に来てください」
鈴本「え?」
小林「てちの家まで案内します。そこに行けばてちのことはわかると思いますよ」
鈴本「……私のこと信じてくれるんですか?」
小林「てちがどうして鈴本さんのことを信頼していたかなんとなく分かったので私も少し信じることにしました」
小林「てちの家に行った後に鈴本さんの気持ちが変わってなければ。私の口からてちのことを話します」
鈴本「……ありがとう小林さん」
小林「……由依でいいよ」
鈴本「え?」
小林「私の名前。あと同じ学年なら敬語もやめよ」
鈴本「……うんわかった。由依。ありがとね」
小林「うん。じゃあ駅前に午前10時集合で」
そういうと小林は去っていった。
鈴本「良い友達。ちゃんといるじゃん。平手」
人付き合いが苦手そうな平手。だけども隣人には理佐。中学時代から親友である小林。クラスにだって虹花や冬優花、織田奈那という友達がいる。
鈴本は平手のニヤッとした顔を思い浮かべ
これだけの人に心配かけるカワウソにどう説教してやろうか。そんなことを考えながら教室に戻っていった。
そのあと普通に授業に遅刻してその時間の担当である守屋茜に怒られた。