『日本歯技』2010年11月号 巻頭言

 今夏(2010年6~8月)、日本の平均気温は気象庁が統計を開始した1898年以降で最も高く、連日の猛暑日が続いた。特に一人暮らしの方が家の中に居ながら熱中症となり、発見が遅れたために亡くなられた話は残念である。
 また、高齢者の所在不明事例が多く報道された。その背景として「孤独」「孤立」「家族分散」等が社会問題として取り上げられた。生活様式の多様化により近隣の人と顔を合わせる機会が少なくなり、地域の回覧板は郵便受けで回覧される。本年は国勢調査実施年でもある。「向う三軒両隣」と言われた地域コミュニティシステムや個人情報保護に関する法制の運用についての対応が待たれる。

 政府は「新しい公共」、すなわち、人を支える役割を「官」だけが担うのではなく、教育や子育て、街づくり、防犯や防災、医療や福祉などに地域で関わっている一人ひとりが参加し、それを社会全体で応援しようという価値観を提示した(第173回国会における内閣総理大臣所信表明演説より)。人々の支え合いと活気のある社会。それをつくることに向けた様々な当事者の自発的な協働の場が「新しい公共」であるとして、法人格の有無を問わず、地域住民が社会の多様な要請に応える役割に共助の精神で参加する、公共的な活動を期待している。

 日技は9月、「歯科技工士法制定ならびに日本歯科技工士会創立55周年記念大会」において、各顕彰受賞者に対してその功績を称えた。受賞は様々な公共活動を献身的に継続された実績の証であり、各受賞者には心から感謝の意を表すとともに、今後益々のご尽力を期待したい。
 人は、社会に貢献したいという想い、人や社会から期待されることの歓びを励みに、社会貢献活動を実行する力を生み出す。特に国内人口減少傾向が顕在する今、一人ひとりが「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」から構成される「社会人基礎力」を高めることが求められている。
 日技ではこれからも引き続き、生涯研修活動等により将来を担う若年層を支援し「価値創造人材」を育成するとともに、地域組織との連携・協力を推進していく。