舛添要一厚生労働大臣への歯科技工に係る保健懸案のご説明
歯科技工に係る著しい保健懸案
- 教育分野 -
1. 大臣免許を「統一試験」へ 速やかに移行を
2. 養成教育における 科目と時間の不足改善を
- 社会保険報酬と法令分野 -
3. 社会保険における「入れ歯や差し歯の製作料」は製作に充てる
4. 遵守できる法令の整備を
平成19年10月5日
日本歯科技工士会
会長 中西 茂昭
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舛添要一厚生労働大臣への歯科技工に係る保健懸案のご説明
日本歯科技工士会
会長 中西 茂昭
歯科技工に係る著しい保健懸案
一 教育分野(技術伝承の危機を回避するために)
■ 歯科技工士教育制度の更新放置は行政不作為に近い
1. 大臣免許を「統一試験」へ 速やかに移行を
昭和56(1981)年、歯科技工士免許は、知事免許から大臣免許に移行した。
本来、免許試験は、この折に全国試験へ移行するべきであったが、以来四半世紀に亘り『県別問題・県別判定』は改めされず放置されている。この間、行政監察局の改善指摘*1は無視され、所轄行政は何一つ障害の無い「学説問題の統一」をも目指していない。
免許保有者の約3割のみが就労するという環境にあって、統一試験への取り組みを遅滞させる隠された理由は、一部の低レベル養成機関の存続意図にあると指摘せざるを得ない。
少なくとも、平成17年度から国立大学法人広島大学開講した四年制の修了者の免許試験には全国統一試験とされるべきである。厚生労働大臣による具体的指示を願う。
2. 養成教育における 科目と時間の不足改善を
歯科医学は、医療材料の開発や新知見の普及により進歩・多様化してきた。これに添う歯科医学教育の内容の更新に伴い、歯科技工教育も更新される。歯科技工教育にあっては昭和41(1966)年の改正時から二年制を続け、この枠を前提としたため“実技修練時間の 削減(・ ・) ”により押し込めてい
る。
教育制度の改正に係る公式検討は重ねられ成案は出ている*2が、行政により実行されていない。
こうした更新不作為により、新卒歯科技工士の技能不足は著しい。このことによって臨床現場では初期訓練の再教育投資を抑制し、就職ができても新卒者においては何もできない自分への無力感に満ちるなど、若年層の離業は著しい。就労年代の断絶は危険領域にある。
入学志願者は定員をも下回るほど減少しており、適材の供給不安は明らかである。法整備の道筋はすでに見えている。一部養成機関の延命優先志向を廃し、教育科目と授業時間不足の解消を厚生労働大臣の具体的指示によって実現されたい。
* 1 ; 平成12年 行政監察局「規制行政に関する調査-資格制度等-結果に基づく勧告」
* 2 ; 平成13年 厚生労働省「歯科技工士の養成の在り方等に関する検討会」意見書
一 社会保険報酬と法令分野(低質蔓延の危機を回避するために)
■ 国民は同じ負担をしながら、差益の存在ため、知らぬ間に“安普請”を受けている
3. 社会保険における「入れ歯や差し歯の製作料」は製作に充てるべき
歯科医師自身が技工を担っていた昭和36(1961)年、皆保険の開始期にあたり「歯冠修復及び欠損補綴」はその一部が保険現物給付された。この保険適用範囲は漸次拡大され、昭和終期には(アメニティーを除く以外)大方は保険対象に含まれた。
このため歯科技工市場は占有的影響を受け、社会保険と委託歯科技工料との関係を調整する必要が生じた。そこで、『関係者間の利害を調節して国民の歯科保健を推進させる』との目的のもと、昭和63(1988)年に厚生省告示(いわゆる『歯科技工料七:三(ななさん) 大臣告示』)が発せられた。しかし告示直後から現在に至るまで経済関係に実効性をもっていない。国会などで答弁されてきた統計値には虚構*3がある。
歯科技工の質の優劣を診療終了段階で消費者はほとんど判別できない。加工過程如何による物性は歯科医師にも判らない。消費者による歯科技工委託先の選択はなされず、歯科医師によって診療の場で物性強化はできない。「入れ歯や差し歯の製作料」は定額で支払われながら、“安普請”が横行し反
復されている。消費者は、価格差を知らされず、差益を手にしていない。
保険における「入れ歯や差し歯の製作料」は製作に充てられるべきである。外部委託により製作せしめる場合には、『入れ歯差益』の大小に歯科医師を惑わさず、歯科技工の委託先は「質や付加価値」「継続性・安定性」などの医療価値で選択され、妥当な委託費幅の中で評価されるべきである。
入れ歯や差し歯の製作は汎用大量製品の買付けでの安価選択ではなく、これから取り組もうという個別行為の安価委託であり、この差異について高察願いたい。
厚生労働大臣におかれては、歯科技工委託の事実・実態の確認と改善をお願いする。
4. 遵守できる法令の整備を
法治国家の国民としてまた医療専門職として、歯科技工士は法令を遵守したい。
歯科技工に係る法令では、歯科医師側からの委託と歯科技工士側の受託についてバランスが取れていない*4。定められる指示書の内容を現実に沿い改めるとともに、委託行為を法令に定め、受託事業者に保健基準を設けるべきである。
また昨今、とかく誤用・悪用される歯科医師の裁量を本来の価値に戻すべきである。
厚生労働大臣による法整備への指示を希望する。
* 3 ; 著しく低価格が進行し総額占有も高い特定項目(硬質レジン前装鋳造冠)を平均値への算入項目に加えていない。
* 4 ; 歯科技工士による歯科技工行為には「歯科医師が発行した指示書が前提」であり、歯科技工士にその保存義務もあるが、歯科医師による「指示書の発行」に関する法令記述は皆無であり、差益追求事業者の介在を許している。
以上
