綾瀬はるか、10代で訪れた転機「この仕事、面白い」 | Ao gasto muito bem puro em....         秋篠宮 佳子

 “かっこよさとかわいさを併せ持つニューヒロイン”。女優・綾瀬はるか(32)が主演する日本テレビ系連続ドラマ『奥様は、取り扱い注意』(毎週水曜後10:00)で、元特殊工作員ながら現在はセレブ妻という一風変わった主人公・伊佐山菜美を好演している。劇中では周囲の主婦たちが抱える問題にキレッキレのアクションを駆使して立ち向かいながら、大好きな旦那さんのために料理や夜の営み(!)を盛り上げようと真剣に努力する姿が愛らしい。ORICON NEWSではそんな綾瀬にインタビューを行い、撮影現場の雰囲気やみどころ、また役柄にちなみ、“第二の人生”についても聞いてみた。

兄弟役だった西島秀俊と夫婦に…「え、旦那さん?」という恥ずかしさも

 人気ドラマ『SP』シリーズ、『BORDER』などを手掛けた金城一紀氏による原案・脚本の同ドラマ。現在は平穏な生活を送る専業主婦の菜美だが、元特殊工作員というだけに武術に長けており、実際にクランクインから3ヶ月前より“カリシラト”というアクションのトレーニングを積んだ。ほんわかイメージが浸透している綾瀬だが「初めて習う武術だったので覚える前までは難しさもあったけど割と楽しかったです。覚えは早い方らしいです」と持ち前の運動神経の良さが発揮されている。

 金城氏の前作『CRISIS』にも出演した夫・勇輝役の西島秀俊とは「別の撮影のときに、トレーニングで習った手首のスナップとか避け技を一緒に練習したりしていました」と、大河ドラマ『八重の桜』で兄妹を演じたこともありその関係性は継続。「カメラが回っていないところでも、お兄ちゃんのような感じだったので『え、旦那さん?』みたいな恥ずかしい気持ちもありました。でも逆に、仲が良いからこそ、やりやすくてよかったと思ってます。一話のラストでは、西島さんのスーツをクルッと回して脱がせるという動きがあるのですが、その場面も話し合ったりして、いろいろスムーズにできました」と“夫婦仲”はバッチリだ。

 

 第1話では同じ料理教室で友達になった主婦仲間が夫からDVを受けていることにいち早く気付き、終盤ではそのDV夫と対峙。その際に凛々しい顔つきが美しくカッコよく印象的だった。「戦闘モードや、『あの人、おかしい』と洞察力を働かせている時は目線を鋭く“本来の菜美”で演じていて、広末涼子さんや本田翼さんら奥様同士でいるとことは、まだ慣れていない、2人の会話についていけない様子をコミカルな感じで」と意識しているという。バラエティー番組や会見の場では天然な素顔がいつもチャーミングな綾瀬だけに、その二面性あるキャラクターに話題が集まりそうだ。

19歳の時に感じた仕事の面白さ、「ここが第二のスタートなのかな」

 一方で、壮絶な過去を捨て、ゼロから人生を歩み始めた菜美にちなんで「もし第二の人生のスタートが切れるなら?」と聞くと、「私はドラマや映画に影響されやすくて、すぐ『こういう世界に行ってみたい』と思うんです。例えば英語を猛特訓して映画『プラダを着た悪魔』のようなアメリカのオフィスに忍び込んでみたい。クロワッサンとかかじってカフェラテ持って『オーマイガー!』みたいな感じで!(笑)」と楽しそうに妄想をふくらませる姿に和ませられた。

 15歳で芸能界デビューを果たし、現在では女優として確固たるポジションを築いているが「東京に来て、一生懸命やってきたつもりだけど『この仕事面白い』ってやる気になったときにある意味、『ここが第二のスタートなのかな』と思いました。19歳くらいの時ですね。『セカチュー』(『世界の中心で、愛をさけぶ』では、なんか、演技って面白いのかも、と思いました」と10代で迎えた転機についても語った。

 今後のドラマの展開としては「毎度毎度みるほどに面白くなります」と自信をのぞかせる。「菜美の生い立ちや、なぜそういう強い女性になったのか、過去の秘密もちょっとずつ明らかになったり、広末さんや本田さんの家庭の問題も見えてきます。観ている人が共感できるメッセージが必ずあります」。まだまだドラマは始まったばかりだが、これが「女優・綾瀬はるかの第二章」と呼べる代表作に育っていくのか、カッコよくてかわいい菜美にワクワクしながら期待したい。

 

爽快アクションドラマ『奥様は、取扱い注意』プロデューサー、テーマは“欲望の解放”

 

 

『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』などの脚本家・金城一紀氏が、綾瀬はるかの主演で初の女性主人公ドラマに挑む『奥様は、取り扱い注意』。日テレ看板ドラマ枠の1つ“水10”での枝見洋子プロデューサーの挑戦とは?

普遍的なテーマを描く爽快アクションドラマ

 綾瀬はるか演じる主婦・伊佐山菜美は、天涯孤独で愛情を知らず、タフに生きてきた女性。スリルあふれる生活に自ら首を突っ込むような性格だったが、運命の人・勇輝(西島秀俊)に出逢ったことで穏やかな生活を手に入れた。しかし、幸せに見える主婦たちが抱えるさまざまなトラブルに気付いてしまい、ルール無視の問題解決に挑んでいく。そんな同作の金城氏のテーマは“抑圧からの欲望の解放”という。

「主婦は常に家庭に閉じ込められた感覚になっており、社会から隔離されて存在意義=自信を失っているのではないか。いつの時代も不満や満たされない思いを抱えている。そんな人々の心を解放したいという想いから、ヒロインが主婦に設定されました。ハードボイルドが得意な金城さんの作品らしく、扱う問題もDVやストーカーなどハードですが、本格的なアクションもあり、爽快感を味わえます。内容としては、人間の根本的な部分が描かれています。時代や状況が変化しても変わらない、どの世代の人にも観やすいテーマを扱う普遍的なドラマになっています」(枝見洋子プロデューサー/以下同)

普遍的なテーマに視聴者の関心が向いてきている

 同作を制作するうちに「これこそがエンタテインメントだ!」と感じたという枝見氏。実は映画畑出身で、過去に携わった作品は『桐島、部活やめるってよ』(12年)『アズミ・ハルコは行方不明』(16年)など、そのエッジの利かせ方や芸術性が、業界内外から高評価を得ている。そんな枝見氏は「水曜ドラマというテレビの枠をやるに当たって、良い意味で私のなかの“文化性”は消したいと思った」と話す。

「水曜ドラマは、観る人が何を求めているのかがハッキリした枠。週の真ん中に放送され、あの時間にドラマを観るという習慣が、ほんの一時、現実から目を逸らすことに繋がる、女性が次の日も明るく生きていくために必要なもの。そんなハッキリとしたイメージの枠で、期待されているものに応えたい、今までに見たことがないものをやってみたい、という想いのバランスを取っていくことにやり甲斐を感じています」

 枝見氏が“エンタメ”を意識して制作する同作には、社会問題を取り上げながら、勧善懲悪という物語のわかりやすさもある。振り返れば昨今、高視聴率を取る人気シリーズには、『ドクターX』(テレビ朝日系)のように視聴者の溜飲を下げてスッキリさせる勧善懲悪ドラマや、『コード・ブルー』(フジテレビ系)のような登場人物の成長物語の人間ドラマなど、わかりやすいエンタメ作品が多い。果たして、テレビに求められるものが、多様性から普遍性に立ち返っているのだろうか。

「テレビは多様化に向かい、手の届きそうな親近感のある人や、素人さんが出演する流れもありました。ですが、スポーツもそうですが、自分たちには到底できないことをしている人を観るのはおもしろい。それは、私が子どもの頃に観ていたテレビだった気がします。昨今、確かにそこに回帰したような流れも見えますが、これは同じ流れを繰り返すというより、螺旋階段のように進化していっているのではないでしょうか。また、視聴者の好みが多様化したと言われていますが、いろいろな価値観が出てきたところで、改めて普遍的なものにも関心が向いてきているという気もします」

テレビという環境のなかで新しいものを作り出す意義

  • 日テレ アックスオン 枝見洋子プロデューサー

    日テレ アックスオン 枝見洋子プロデューサー

 そんな枝見氏が今気になっているドラマ枠はTBSの火曜10時という。

「クリエイターを含め、いろいろなスターと最先端の知識が集まっている感じがします。新しいことをやろうとする気概が感じられて、ここ最近、枠の色づきがノッてきている。ただ、日テレの水曜ドラマも、恒常的にノッている枠。これを続けていくのは難しい挑戦でもあるので、自分がやるのは怖さもありますけど(笑)」と心境を明かしてくれた。

「テレビはある意味、とても不自由な環境にあります。枠が決まっていて、ずっと変わらない作り方をしている。ですが、今は低予算でも作れる技術が揃っている。そこで新しいものを作り出す意義を感じますし、この多様化した世の中で、皆のブーム=共通言語になるようなものを制作していきたいと考えています」

 

水曜ドラマ『奥様は、取り扱い注意』

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