今回もおじさん目線です。

おじさん目線もどうぞよろしくお願いします。






注意:櫻葉小説です。



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― 緑山怜真 side ―



その公園へ行くことが
いつの間にか習慣になっていた。



水曜日と日曜日。
休みの日になると、なんとなく足が向く。

たまに朋恵が仕事で遅くなる夜もふらっと行ったり。

別に、何かをしに行くわけじゃない。
ただ、あの空気の中にいると少し落ち着いた。
懐かしい公園に似てるここが好きだった。




それに……
あの兄妹にも、また会える気がして
特に、あの『翔にい』と呼ばれていた男の子。




最初に会った時の印象がすごく残っていた。



小学生なのにずっと動いている。

弟を止めて
妹を安心させて
周りを見て

なのに
全部を『当たり前』みたいな顔でやっている。

なんなら周りのことが360度見えてるんじゃないかと疑うレベルだった。






無理しているようにも見えない。
でも、自然にできる年齢でもない。
だからこそ
最大限のパワーを使ってあの子はやっているのだろうと予想された。





その日も、公園のベンチに座っていた。
買ってきたお茶を飲もうとして
ーーー普通に失敗した。

キャップが妙に固かった。
変な角度で力を入れたせいで、開いた瞬間に少しこぼれる。


「……あ」



足元が濡れた。



その瞬間
ふっと、視線を感じた。

見ると少し離れた場所からあの子がこっちを見ていた。




一瞬で『また見られた』と思った。




しかもちょっと笑いを堪えてる?



……恥ずかしっ!!!



『この前は……』

とりあえず礼を言おうとした。
でも、 その瞬間
『ちょ、待てって!』
男の子が走り出し
『翔にい見てー!』
今度は女の子。




ああ、やっぱり今日も大変そうだ。
そう思って見ていたら
その子は、当たり前みたいに全部へ反応していた。



弟を追いかけながら。
妹にも返事をして
それなのに、自分(俺)にもちゃんと
『ちょっと待ってて!』
と言っていく。




……すごいな。
思わずそんな感想が浮かぶ。

あんな年頃なんて、普通はもっと自分のことばかりでもいいはずなのに。
友だちと遊んだり、家でずっとゲームしたり……そんなふうに自分のやりたいことをやりまくっていいはずなのに。




そして戻ってきた時
女の子が、こちらを指差した。
『翔にいあのひとこぼれてる』
するとその子は、すぐポケットからティッシュを出して
『これ使っていいよ』
『いやもうちょいちゃんと拭いたほうがいいよ』

そうやって俺のことも世話してくれた。








『この前はありがとう』

そう言うと、その子は
『あー、いいよ別に』
と軽く返した。



本当に
大したことだと思っていない顔だった。



でも
あの時
もしあの子が来ていなかったら、たぶん荷物も自転車も全部倒していた。




だから

『助かったから』




そう言うと、その子は少しだけ困ったみたいな顔をした。




感謝されるのが、あまり得意じゃないのかもしれない。



その後もずっと
3人は動き回り……



ずっと騒がしかった。
だけど
不思議と嫌な感じがしない。



それは
ちゃんと
あの子が全部を受け止めているからだろう。




そう思った。







それからまた別の日もそうだった。
今日も変わらない。
思わず少し笑った。




その日も俺は袋の結び目に苦戦していた。

いや
本当にどうしてああいうのは絡まるんだろう?

困っていると
『なにやってんの?』
また、あの子が来た。




そして、あっさり開けられた。



『ほら』




そう返されて苦笑するしかない。
なんだか、本当に世話されている。




『よく来るの?』
『うん、だいたい毎日』




やっぱりそうか、と思った。




『あの子たち、弟と妹?』

『うん』



その返事は自然だった。




だから余計に思う。
この子は、ずっとこうやって生きているんだろうな、と。




『えらいね』



そう言うと
その子は、少し不思議そうな顔をした。



『まあ普通だよ』



普通。
たぶん、本気でそう思っている。

だから
自然と口にしていた。



『普通じゃないよ』



その瞬間だけ
その子は、少し黙った。

ほんの少しだけ
何かを飲み込むみたいに。



その顔が、妙に印象に残った。