注意:櫻葉小説です。
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side 雅紀
仕事の日。
俺はゴミ袋を片手に、 家の前の小道を歩いてた。
その少し先。
俺よりも先に家を出た
翔ちゃんが、いた。
……そして。
「ねぇねぇ、アラシ!!」
この声とほぼ同時に
近所の大型犬アラシが玄関の柵越しに翔ちゃんに嬉しそうに近づいて
尻尾をプロペラみたいにぶんぶん振ってる。
アラシはもう今となっては翔ちゃんの事が大好きで
俺はたまに嫉妬するレベルまで来てる。
翔ちゃんはそんな大喜びなアラシを柵越しに両手で受け止めながら、 顔がもう完全に幸せそうだった。
「おはよ〜〜!三日前も会ったのにさぁ、そんな嬉しいの?」
アラシは「当然です」みたいな顔で、 翔ちゃんの手をべろべろ舐める。
翔ちゃんは笑いながら、 こっちに気づかないまま独り言みたいに話し始める。
「一昨日の夜さぁ……雅紀がさ」
……出た。
俺は思わず足を止めて、 物陰からこっそり見守る。
翔ちゃんまたアラシに話すつもりなんだろ
「ほんっとずるかったんだよ」
アラシは「うんうん」って顔で聞いてる。
「俺、完全に負けた」
負けたって何によ。
翔ちゃんは頬を赤くして、 アラシの首の毛に顔を埋めた。
「アラシの尻尾みたいにさ?
俺の上に乗ってもうブンブンなんてもんじゃないほど踊り狂うからさ♡」
おいおいおいおいーーーーーーっ
それ以上言うな/////
てか
そうするよう仕向けたの翔ちゃんだろーーーっ
俺がヤりだしたみたいに言うなっつーの/////
アラシはまだ聞き出そうに大人しくしてる。
「で、雅紀が妖艶すぎて……俺ももうもうだめだったわ。アイツには敵わねぇ。」
いやいやいやいや
それはこっちのセリフだから!!!
俺はゴミ袋を持ったまま、 顔を覆いたくなる。
「ほんっと綺麗でさ?
飛び散る汗とか、眉間のシワとか、
ほんとぉーーーーに綺麗で……
切り取ってリビングに飾りたいほど綺麗だった。」
『綺麗』って次の日も言ってくれたけど…
アラシにまで……/////
マジでそう思ってくれてるんだ……
/////恥ずい………けど……(嬉しい)
だけどだからって
リビングに飾りたいってバカヤロウ!
エッチ最中の顔とか飾ってるリビングなんてどうかしてるにも程があるっつーの!
でも。
「ふふふ」
なんて笑いながら
その声が嬉しそうで、 柔らかくて。
「困ったもんだよなぁー」
「雅紀綺麗だしかわいすぎなんだよなぁー」
「あれは天性の色気の持ち主かなぁー」
なんて
何度も呟いてる。
アラシも
「うんうん」って言うみたいに翔ちゃんの呟きを受け止めてる。
俺は物陰で、こっそり笑ってしまった。
アラシは相変わらず尻尾を振りながら、 翔ちゃんの話を真剣に聞いてた。
「ほんと、幸せだったなぁ」
ぽつり。
朝の光の中で、 翔ちゃんの横顔がやけに優しい。
俺の胸がじんわりする。
……見てるこっちがほっこりする。
いや……
見てるこっちが幸せになる。
そのまま少しだけ沈黙。
アラシの息遣いと、 遠くの車の音。
翔ちゃんが、ふっと息を吐いた。
いつもだったら
その後もう少し詳しくアラシに
アンナことやコンナことをベラベラ話す翔ちゃん。
でも今日は
そうじゃなかった。
「……竜也さ」
急に名前が変わって、 空気が少しだけ静かになる。
翔ちゃんはアラシの背中を撫でながら続ける。
「一昨日、アメリカ帰っちゃったじゃん」
アラシも動きを止めたみたいに、 じっと翔ちゃんを見る。
「向こうで元気に過ごすかな……」
その声が、 さっきよりずっと小さい。
「家の中、竜也いないから……ちょっとね」
翔ちゃんは笑おうとして、 でも笑いきれなくて。
「寂しいってゆーか……」
俺はもう隠れていられなくなって、 そのまま歩き出した。
足音に気づいて、 翔ちゃんがぱっと顔を上げる。
「あ、雅紀!」
アラシも「雅紀!!」って勢いでこっちを見る。(笑)
「なにしてんの、翔ちゃん」
「仕事行く前にアラシに挨拶…というか、アラシ捕まえてた」
捕まってるのは翔ちゃんのほうだよ。www
俺は翔ちゃんの隣に立って、 そっと肩を寄せた。
翔ちゃんが小さく笑う。
「……竜也のこと、ちょっと寂しくなっただけ」
「うん」
それだけでいい。
俺は翔ちゃんの手を握った。
アラシが「俺もいるけど?」みたいに鼻を鳴らす。
翔ちゃんがくすっと笑って、 少しだけ元の顔に戻る。
朝の外の空気の中で
寂しさも、 幸せも、
全部一緒にここにある。
一緒に。
ここに。
俺はそれを静かに抱きしめるみたいに、 翔ちゃんの手を握り直した。

