既にいろんなとこで記事になって
ますが、「ムビッチ」さんという
サイトの「舞台挨拶レポート」で
手紙全文が文字起こししてあった
ので自分用の記録として。
太鳳へ。今でもよく覚えています。『るろうに剣心』で共演したときに、僕から刀を盗んで「うっしっし」と笑い、陸上選手ばりのダッシュで走り去っていくあなたの背中を見ながら、「やばい子が現れたな…」と思いました。当時“土屋太鳳”で検索してみたりすると、直筆アンケートに書かれた文章の長さ、信じられないほど几帳面に並ぶ文字の列に衝撃を受けたり、何時間かけて書いたんだ?というブログの長さに衝撃を受けたり、その当時あなたは、いわゆる単館系といわれる映画の主演を多くやっていたのですが、それらの作品を片っ端から観たりしていくうちに、その時ビビッと感じたあの思いは確信に変わっていきました。そんなあなたと4年越しですか、夫婦役としてこんなにも素敵な作品で共に人生を歩めたことを心から嬉しく思います。しかし、一つだけ心残りがあります。それは主に宣伝のときのことなのですが、君は事あるごとにずっと、「背中を追いかけてきた」「本当に尊敬している方だ」「健先輩には本当に感謝している」などと何度も言ってくれて、その度にどうしても上手にリアクションが取れずごめんなさい。もちろん嬉しいのですが、何といいますか…というのも本当に感謝したいのは僕のほうなんです。君が僕にそう言ってくれるのは今に始まったことじゃなくて、出会ってから今まで、もちろん今回の撮影中も何度も「健先輩は本当にすごいです」「健先輩は唯一無二の役者さんです」とか何とか言ってくれて、でも本当は全然そういうことはなくて、むしろ君がそんなことを言ってくれた数だけ僕は強くなれました。土屋さんにそんなことをいってもらえる自分に自信が持てました。尊敬してもらえる先輩でい続けられるように、自分を奮い立たせることもできました。そして現場であなたが僕に向けてくれたそのエネルギーが、僕のガソリンであり、もはや役作りの全てでした。あなたはこうも言ってくれました、「健先輩の尚志さん、素敵です」。もし“健先輩の尚志さんが素敵”なのだったとしたら、それは麻衣が太鳳だったからです。麻衣さんが太鳳だったから、僕は尚志として、麻衣へのこの思いは本物なのだと自信を持てました。本物の気持ちを胸に、あとは立っていただけです。麻衣へのその思いを胸に持ってさえいれば、あとは立っているだけで、たとえ本番中どうなろうとも、その芝居は真実なのだと、間違いじゃないのだと本気で思っていました。何も怖いものはありませんでした。こんな僕に全力でぶつかってきてくれて、こんな僕を信じてくれてありがとう。だから、僕にかけてくれた言葉の分だけ、自分を褒めてあげてください。本当に難しい役だったと思います。心から、お疲れ様。“命というものに本当の意味で向き合うことができる唯一無二の女優さん”。この作品を終えた今、僕があなたに抱く印象です。共に生きたあの時間、その記録、この作品『8年越しの花嫁』、僕の宝物です。たくさんの方に愛していただくことを祈って。2017年12月16日。佐藤健。