風野 真知雄 著
新人物文庫 刊
時は明治5年。
地面に濃い影が刻まれ
ている夏の昼下がり。
青山久保町のとある
茶店で休んでいた
老人が渋谷方面から
歩いてきた老いた武士の
姿を認めてその品のいい
顔に奇妙にゆがんだ
表情を浮かべ、やがて
脅えたように視線を
そらせた。
そんな老人のことなど
素知らぬ顔で老武士は
連れの婦人とともに
ゆっくり通り過ぎていく。
二人の姿が完全に
後ろ姿になると今度は
老人は睨み付けるような
目つきで長いこと見送っ
ている。
そこでようやく老人の
様子に気付いた茶店の
主人に「顔色が悪いが
大丈夫か」と尋ねられ
老人は答えた。
「いま、ここを妖怪が
通ったんだ」
「へっ、妖怪が……!」
「ああ、とっくに死んだ
と思ってたのに、まだ
生きていたんだなあ」
・・・・・・・・・
「妖怪」と呼ばれたのは
元南町奉行鳥居甲斐守
耀蔵。天保の改革の
中心人物でその苛烈な
弾圧政策で名前の
「耀」と「甲斐」を
もじって江戸の人々から
「妖怪」と呼ばれた
人物で、作者の風野
さんの「妻はくノ一」
シリーズには敵方の
お偉いさんとして出て
きます。結構作者さん
お気に入りのキャラ
なのかも。
この他に、勝海舟や
その父・勝小吉、
織田信長の宿老・
平手政秀など、歴史上の
人物が出てくる短編集で
ございました。
ブログネタ:旅行に必ず持っていくものは?
参加中
本文はここから
お財布と携帯と携帯の
充電器。
これはもう、絶対に
持っていかないとアウト
ですよねぇ。
次にチェックするのは
航空券とかJRの券。
これ、忘れると被害が
甚大。
化粧品・靴・服は
いざとなれば買えばいい
かな、くらいの重要度。
それよりはむしろ
「未読の本」を忘れたく
ないです。
本も買えばいいんです
けど、移動時間が厳し
くてしっかり好みの本を
選ぶ時間がなかったり
そもそも本屋さんに寄る
時間が取れなかったり
することもあるので、
事前に購入した文庫本を
旅行バッグじゃなくて
手持ちのバッグの方に
何か1冊。
本があれば移動中や
待ち時間、
道中の「一人ご飯」も
怖くない。
たぶん必ず旅行に持って
行ってます。
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